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閉ざされた道

 キーオーとシュライダ小隊は地底湖を離れ、地下空間を奥へと進んでいた。


「このまま東に進むと地上に出られる裂け目があるはずだ。みんなあと少し、頑張ろう」


 先頭を行くリータが地図を片手にみんなを励ました。今朝からずっと歩き詰めである。口には出さないが、シオンやリオン、リト婆さんには相当きつい道のりだろう。

 キーオーはシュライダの後ろを、ザックを背負いながら歩いていた。ゼ・ロマロを出てから今日で一週間。叔父さんはもうスライノア監獄まで護送されてしまったかもしれない。キーオーは歩き続ける中で、そんなやりきれない不安を抱えていた。ザックの中の青い結晶が、これまでよりも重く感じる。

 一行が先に進むにつれて、洞窟は暗さを増していった。そんなはずはない。リータは先頭を進みながらそう思った。出口に向かっているのだから、次第に明るくならなければおかしい。やがて道が途切れ、先は岩と土の山で塞がっていた。


「嘘だろ、落盤だ……」


 リータが足を止めると、みな呆然とした。チェクが腰に手を当てて言う。


「道を間違えたんじゃない?」

「いや、そんなはずはない。コンパスさえ狂ってなければ、東に進めば必ず外へ出られるはずだ」


 困惑するリータに、シュライダが岩山を見渡して言った。


「まだ新しいな。それに自然に起きたものじゃない」

「まさか、そんな……」

「大きな岩が不自然に砕けている。おそらく火薬を使ったのだろう。ムバイル領民にしてやられたな」

「くそっ。俺たちは閉じ込められたってことか」


 リータは悔しそうに石を蹴った。ムバイルの人たちはジークの異分子たちが二度と外に出られないように地下空間の入り口をすべて塞いだのだろう。絶望的な状況にキーオーは肩を落とした。このまま外に出られなければ、飢え死にするしかない。


「東に出られないとなるとどうなる?」


 シュライダがリータに尋ねた。


「南へ進むしかありません」

「でもそれって……」


 チェクがすかさず口を挟む。


「ああ、スライノア監獄の近くを通らなければならない」


 スライノア監獄。キーオーは再び出たその言葉に口を開いた。


「この近くにスライノア監獄があるんですか?」


 キーオーの疑問にチェクが答える。


「ええ、そうよ。地図には載っていないんだけど、ちょうどこの洞窟の南側、開けた森林の中にスライノア監獄はある。私、昔は連邦の特捜部にいて、何度もスライノア監獄に行ったこともあるから間違いないわ」


 そうだったのか。キーオーは驚いた。それにこんな優しいチェクが、あの怖い特捜部の一員だったなんて。


「困ったのう……」


 八方ふさがりとなった状況にリト婆さんはそう言った。シュライダは隊長としての決断を迫られる。シオンたちも顔に疲れが出ていた。


「南へ行こう。何もしないまま、ここで飢え死にするよりはましだ」

「そうですね。ここにいても仕方ありません」


 ユーアもシュライダの決断に賛同した。他のメンバーもうなずく。


「その前に食事にしよう。みんな疲れただろう。しっかり食べるんだ」


 小隊は開けた場所に移動し、荷物を下ろして輪になった。


「やった! ごはんだ!」


 リオンが久々に嬉しそうな声をあげる。キーオーにとっても、束の間の平穏だった。


「チェク、来てくれ」


 リータは食事をとりながら、地図を取り出しチェクを呼んだ。隣にはシュライダもいる。


「この中で最もスライノアから離れている洞窟の出口は?」

「たぶん、一番西側ね。でも私が行ったことあるのは監獄の入り口だけで、全図がどうなっているかは分からないの。それに噂では、この地下洞窟と監獄が繋がっているって聞いたわ」


 チェクの話を聞いて、シュライダは言った。


「……とにかく行ってみるしかないな」


 食事を終えると、一行は南を目指した。途中、リオンが困った声で言う。


「リータの兄貴。オレ、ちょっとトイレいきたい」

「わかった。向こうの物陰ですませてこい」

「すぐもどる!」


 全員が足をとめたので、リオンは岩陰に向かった。鍾乳石の合間を抜け、できるだけ遠くへと進む。


「ふぅ……」


 用を足したリータは、目の前の岩場に切れ目があるのを見つけた。その切れ目から、微かな明かりが漏れている。出口はまだ遠いはずなのに、どうしてだろう?

 気になって切れ目から中を覗くと、眩しい明かりが目に飛び込んできた。岩の向こうには巨大な地下空間が広がっている。しかもそれは自然にできたものではなく、人が作り上げた炭鉱のようだった。しかも今でも使っているらしく、ランタンが天井から吊るされ、真ん中にはレールが敷かれている。


「なんだ、ここは……」


 リオンが驚いていると、線路をトロッコが通った。二台連なった木造のトロッコに山のようにオレンジ色の石が積まれている。トロッコを押しているのは裸の男たちだ。頭髪を含めた全身の毛は剃られ、白い裸体を晒している。ここが普通の炭鉱ではないのは明らかだった。


「リータ兄ちゃんたちに知らせなきゃ!」


 リオンはすぐに今来た道を引き返し、リータたちの元へ走った。


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