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重要な積み荷

 このとき2人が出会ったラッセルは、連邦を形成する国家の一つ「イャス共和国」の首都トリラルで働いている、30代で筋肉質の汗臭い男だった。ブレースとバスケスは彼の部下で、3人で王都へ商談に向かう途中だという。

 離陸まであと10分ほどになった時、キーオーたちの客室に巨大な麻袋を担いだ男が入って来た。


「若旦那。これ、どうしましょう?」

「ゲル、ご苦労。邪魔にならないところに置いておいてくれ」

「承知しました」


 男はそう言うと手に持った大きな袋を床に置いた。するとその瞬間、袋からゴロ、ゴロロと音が鳴る。まるで川原で石を積み上げたかのような音だ。いや、「ようだ」ではない、中には大きめの石たちそのものが入っているのだろう。


「おい、気をつけろ!」


 その音を聞いてラッセルの目つきが変わった。


「すみません!」


 ゲルという男は音がでないように慌てて袋を両手で押さえた。


「その石は危険なんだ。慎重に頼む」

「はい、失礼しました。では若旦那。また来月、お願いします」

「ああ。気をつけてな」


 客室に石を運び込んできた男は一礼をすると、船から降りて行った。ラッセルは袋の中の積み荷が無事であることを確認すると、安堵のため息をついた。


「はあ……、肝が冷えたな」

「ゲルのやつはそれが砂利石かなんかだと思っているんです。次からは別の歩荷ぼっかを雇ったほうがいいですよ」


 ラッセルの部下の一人、髭面のバスケスが言った。キーオーとミュートは状況がわからないまま二人のやりとりをみていた。そんな2人にラッセルは自分たちの仕事の話をしてくれた。


「俺たちは鉱山で働いている。まあ、正確には『働いている』じゃなくて『経営している』。俺はイャス共和国の『ベンラトリクス』って会社の取締役。バスケスは掘削チーフ、ブレースは経理担当だ。お前たちにわかりやすく言うなら、会社の偉い人たちってことだ」

「じゃあビジネスマンってことですか?」


 キーオーは驚いた。叔父さんから聞いていたビジネスマンのイメージと随分違う。


「広い意味ではビジネスマンってことになるのかな。俺たちの会社は石を発掘してクリーニングし、連邦軍や政府のエネルギー省に売っている」


 そこでラッセルは一瞬、話に詰まった。


「国防に関する話なのであまり話せないが、今や石は燃料ではなく兵器として使う時代になったんだ。だから割と需要があって、ありがたいことにそこそこ儲かっている」


 石が兵器。キーオーはその言葉を聞いてザックのなかにある青い宝石を思い出した。たしかゼ・ロマロで読んだ新聞にも、この石が兵器遺構の一部であると書かれていた。なにか関係があるのだろうか。

 キーオーがラッセルにそのことを聞こうとした時、離陸のアナウンスが流れ始めた。


『まもなく離陸いたします。お見送りの方は船から降りてください』

「さあ飛ぶぞ。楽しい空の旅のはじまりだ」


 ラッセルは興奮した笑顔でそう言った。



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