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玻璃色の世界のアリスベル  作者: 作務衣大虎
第一章 フラジオレットな少女と巡る旅の栞
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第10話 猫妖精と赴く鎮守の森

 アリスの実家は町の中でも一際大きい木の中に建てられていた。


「たっだいまぁ!」


「あら、お帰りなさい。アリス、今日学校はどうしたの?」


 軽快に扉を開けて入っていったアリスを出迎えたのは、アリスと瓜二つの女性で、表情が明るくて、親しみやすさは血縁を感じる。


「お母さんっ! 地球の学校は今日から夏休み。私達の世界にもあったでしょ?」


 お母さん……だって?


 本気でお姉さんか何かだと勘違いしていた僕は酷い衝撃を受けた。


「そういえばそうだったわね。あら? そちらの男の子はお友達?」


 物腰の柔らかさはファイユさんと少し似ているかもしれない。ファイユさんと同じようなやり取りを繰り返す。


「アリスが男の子を連れてくるなんて、幼馴染のシグルちゃん以来じゃないかしら? 嬉しいわねぇ~」


「そんなことのないよ。フレイディースさんちのビャルキちゃんとかソルビョルグさんちのグンナルちゃんとか」


「みんな年下の男の子じゃない」


「ソラトも年下だよ? 16歳から17歳くらいじゃない? だよね?」


「一応17歳だけど」


 年下年下と言っているけど、アリスだって数ヶ月しか変わらないんじゃないかなぁ?


 誕生日によってはアリスの方が年下だという可能性もあるんじゃないか、と反論しようと思った矢先、誰かが階段から下りてきた。


「地球人の平均寿命は72.4歳だ。それに対して私たちの平均寿命は201.2歳。そこから逆算すると、アリスと彼はそう変わらない年齢になるね」


「あっ! お父さんっ! ただいまっ!」


 またしてもアリスの言葉に僕は唖然とする。


 階段から下りてきたが僕とそう変わらないような青年だったからだ。


 お父さんという敬称よりお兄さんという方がしっくりするぐらい本当に若々しく、中性的な顔立ちですらりとした細身の男性だった。


 ん? ちょっと待って?


 さっきアリスのお父さん、なにか気になる事を言っていたような……


「初めまして、僕はこの家の家長、ヨウンだ。こちらは家内のフレイヤ。よろしくソラト君。娘が世話になっているね」


「こちらこそ、お世話になっております。ソラトと言います。よろしくお願いいします」


「しっかりしたお子さんだ。立ち話もなんだ、どうぞ上がってくれ。歓迎するよ」


 しっかりしたお子さんなんて始めて言われた。


 肩を寄せ合っているご両親、まるで絵にかいたような明るい家庭。


 アリスの人柄の良さはこういったところから生まれたのかもしれない。


「ただその前に君にはワクチン接種が必要だね。まずは私の診療所に案内しよう」


「え?」



 僕は衝撃的な事実を知ってしまった。スペクリム。彼らは自分達の住む惑星をユルデと呼んでいる。彼らの言葉で「地球」という意味になるそうだ――


――というのはこの際どうでもいい話で、彼らの成人年齢は55歳、そして寿命は200年近いという。


 即ち僕が何を言いたいかというと、つまりアリスの年齢が――


「47歳……だって?」


「地球人の成長が速いだけなんだからね。私の方が年を取っているみたいな言い方はやめてね」


「あらあら、うふふ」


 ちょっと不満げな表情をしたアリスの操る手漕ぎ舟(スケーレン)は大樹の林を悠然と遡っていく。


 川の流れに逆らっているのにも掛からず、滑るように風を切って進むアリスの手漕ぎ舟(スケーレン)に、まるで憑き物が洗い流されていくような感じさえしてくる。


 樹上の町で医者をしているアリスのお父さんから、ユルデの人達には何でもない感染症であっても、地球人には大病になる可能性があるといいってワクチンを接種された。


 気分が悪くなったらすぐに戻ってきなさいと言われたけど、今のところ異常はなさそうだ。


 波立つ水が差し込む日差しで球のように煌き、水の中は目が覚めるほど透明で、滑らかに泳ぐ尻尾が帯のように揺らめく銀色の魚や、川底の石がはっきりと見える。


「綺麗でしょ? まるで川全体が一つの水晶の宝石で出来ているみたいだよね?」


「何だろう。尻がこそばゆい」


「ふぇ~なんで~」


 またまた赤面しそうな台詞が臆面も無くすらすらと出てくるアリスの感受性は、素直に感心する。


「それにしても流れに逆らっているのに、まるで滑るように進むんだね」


「それは、手漕ぎ舟(スケーレン)の船体にはスキーズと呼ばれる、地球で言うところの流体素子が付いているからだよ。要はウォータージェットみたいに、実は水を吐き出して進んでいるからなんだ」


「へぇ~」


 次第に町の賑わいの声は薄れ、変わりに澄み透ったせせらぎの音と鳥の囀りしか聞こえなくなっていた。


 不意に視界の隅をよぎったのは木々の合間から覗かせるのは白い馬の親子。


 地球の馬とは違って、馬の額には鋭い角を生やしている。


「あれは一角馬ユニコーン?」


一角馬ユニコーン? 初めて聞く言葉ね? それは地球のヘーセァトのことを言うのかしら?」


「違うんです。フェイさん。地球のヘーセァトには角が生えていないんです」


「あら、そうなのね? 実はね。あのヘーセァトの乳を発酵させて作ったお酒、馬乳酒ヴニースが、この町の名産なの。ね? アリスちゃん?」


「そうですけど、フェイさん。私達未成年ですよ? ソラトに飲ませたら駄目ですからね?」


「あらあら、ごめんなさい。とても大人びた子だったから、つい勘違いをしてしまったわ」

読んでくださって誠にありがとうございます(人''▽`)


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