君は二人称異世界に転生した! どうする?
ボケ「あなたは死にました」
ツッコミ「はあ。本当にこんなベタな空間に呼ばれるんですね」
ボケ「わたしは女神です」
ツッコミ「でしょうね。しかしまさか自分にこんな機会があるとは」
ボケ「いやそんなことありません。今私たちの中で流行ってるので、異世界転生。平成三十年における日本国内の死者数は約百三十四万人、日本の神の数は八百万。やっとの取り合いで」
ツッコミ「あっもういいですだいたいわかりました」
ボケ「あまりにみんな異世界転生させちゃうもんだから、誰にも気付かれず盛り上がれないまま終わってしまう底辺異世界がたくさん生まれちゃってるんですよねえ」
ツッコミ「なにその笑えない現状」
ボケ「なので私はものすごい異世界を考えちゃったのです! その名も、二人称異世界!」
ツッコミ「二人称?」
ボケ「異世界はほとんど一人称か三人称で構成されています。しかし二人称は検索する限り、百六十しかないんです! これは狙い目です!」
ツッコミ「なにそのリアルな数字」
ボケ「君はそう目の前の女神に問うた」
ツッコミ「ゲームブックかよ」
ボケ「しかし問答する余地もなく、君は異世界へと転生した」
ツッコミ「余地ないのかよ!……うわぁあああ」
ボケ「気を失っていたらしい君は、草の上で目を開く。そこは見知らぬ草原だった」
ツッコミ「ここは……?」
ボケ「君は起き上がり周囲を見渡す。幸い危険な生物はいないようだ。君は腰に目をやる。そこには輝く剣があった」
ツッコミ「これで戦えって言うのか? いやちょっと待って。これ、転生じゃなくて転移じゃない? 俺生まれ変わってないよ!?」
ボケ「……君は疑問を感じ、叫んだ。しかし周辺には誰もいない」
ツッコミ「何言い淀んでるんだよ。あんたさっきの女神だろ?」
ボケ「しかし、地の文がそれに答えることはない」
ツッコミ「答えてるじゃねえか。転生と転移の違いも知らないで異世界作ってんじゃねえよ」
ボケ「うるさいですね。…………という声がどこかからか聞こえてくる」
ツッコミ「素に戻んなよ」
ボケ「ああもう。じゃあ、突然君の前にスライムが現れた! どうする?」
ツッコミ「じゃあってなんだよじゃあって。逃げる」
ボケ「なんで逃げるの!」
ツッコミ「選ばせろや!!」
ボケ「……君は、スライムから逃げ出した。逃げ足レベル1のスキルを得た」
ツッコミ「おお、スキルゲットか。いい感じだな」
ボケ「攻撃力が255上がった。防御力が255上がった。素早さが255上がった」
ツッコミ「8ビットなの!? この世界ファミコンレベルなの!?」
ボケ「君は、これだけ強くなったのなら魔王すらもきっと倒せると思った」
ツッコミ「思ってないよ! もしかしてもう飽きたの!? もうちょっと頑張ろうよ!!」
ボケ「そして君は魔王城の前にいる」
ツッコミ「早すぎて突っ込めねえよ」
ボケ「君の前に魔王が立ちはだかった! ふははは、よくぞ来た勇者よ」
ツッコミ「勇者ってワード今初めて聞いた」
ボケ「どうする?」
ツッコミ「帰りたい」
ボケ「剣で攻撃する。100ページへ。魔法で攻撃する。110ページへ」
ツッコミ「ああもう自由選択ですらなくなった」
ボケ「どうする?」
ツッコミ「……剣で攻撃する」
ボケ「クリティカルヒット! 君の一撃で魔王は倒れた!」
ツッコミ「よわ!!」
ボケ「正直無理があるのがわかったから、次は一人称異世界と三人称異世界と選ばせてあげるけど…………どうする?」
ツッコミ「どうもしねえよ!!」