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日ノ御子戦記〜うさうた〜  作者: おはよう太郎
PR19 二條いちみ
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PR19


「そんなことが可能なの?」

 二條いちみは、紫兎の考えを聞いて、そう問わずにはいられない。


「できます。というより、今のところこの方法しかないと思います…」


 いちみも、ジッ…と考えてみた。

 確かにその通りかもしれない。

 でも…


 鬼魔ノ衆(キマノス)の出現ポイントと時刻を全て予測する、だなんて…


 紫兎が続ける。

「ただ…今はまだ序盤のおおよその位置しか分かりませんし時刻も大雑把です」


「それはどこなの?」


「明日の夕刻。ほぼ同時に3()。佐賀、石川、三重。最初はかなりおぼろげでした。けど、今はある程度の場所まで絞られてきてます」


「紫兎ちゃん、すごいです…」

 デザートのアイスを頬張りながら瑠璃は目を見張った。


「どうして分かると?」と煉花(れんか)


「んーと、それが……自分でもよく分からないの。ただ、あの場所から戻ってきて、急にそんなイメージがどっと流れ込んできて…」


「ほんであの時、急に倒れちゃったとか?」と彗月(はづき)が。


「うん、そうみたい」


 大量のデータが脳に一気に流れ込んできて処理能力が追いつかずにリミッターが作動した。

 ダウンしたコンピューターサーバーのようなもの。


 二條いちみは、御子時代にそれと似たような(スキル)を持っていたのでその感覚は理解できた。

 そのスキルの場合、強制的に増幅させた視覚や聴覚の情報を相手側に押し付け、過負荷をかけて混乱させるというものだった。

 紫兎の場合はそれと同じかそれ以上、強制的な多過な情報の流入が脳へかける負担は相当なものになるはずだ。


「今は大丈夫なの?」


「はい。休んで起きたら、自分でそれを何となく調節することができるようになってたの…水道の蛇口?そんな感じで…」


 覚醒…?

 いいえ、紫兎ちゃんの場合それは当てはまらない。


 いちみは、この時点ですでに、紫兎が御子であると確信めいたものを持っていた。

 イレギュラーな御子。いえ、違う…特別な御子。


 紫兎の危険感知能力が特筆すべきものだと知っているのは、いちみだけじゃない。

 つまりこの予知スキルは紫兎が御子として元々備えていた能力からの次のレベルへの解放。

 あるいは、進化…


「紫兎ちゃん、それはどのぐらい先まで分かるの?」


「んーー…今はまだ何とも言えないです。ただ、その次のポイントや時刻もだんだんとイメージがハッキリとしてきてるのは分かります。この感覚は口で説明するのがとても難しいのですけど…ぼやけている映像の焦点がだんだん鮮明になっていく…そんな感じ…」


「わたしの結界解除スキルと似てますね…口で説明が難しいところとか」

 瑠璃が口を挟む。


「そう…似てるかも、ふふっ」

 奈須ノ城瑠璃のアレは、ソレを見たものでなければ分からない。


 いちみは、考える。

 ゲートが開く場所が事前に特定できるのであれば…


「ねえ、紫兎ちゃん。例えば、その予知したゲートに飛び込んで、その…大空洞?…鬼魔ノ衆の溜り場に乗り込んでまとめて浄化してしまう、っていうのはどうなの?」


「それも考えました。けど、危険すぎます。潜ってみて分かったのですけど、あのゲートは存在自体が不安定過ぎます。いつ閉じるのか、まったく分かりませんし、分かった時には、時すでに遅し、です。あっという間に閉じ込められて永遠に抜け出すことができなくなります」


 そうそう、と相槌を打つ調査隊の御子たち。


「わたしも同じ意見です。あの時は、あそこに紫兎ちゃんがいてくれたから助かったのですけど、もし、いなかったらと思うとゾッとします」

 瑠璃は身震いする。


 そうそう、と釣られて身震いする調査隊の御子たち。


「そうなのね…残念…」


「色々考えたのですけど、やっぱり、あずきちゃんが言うようにモグラ叩きをするしか方法がないと思うのです……でも、これなら迎え討てます」


「そうね、その通りだわ」

 後手で守るより先手を打てる御子は強い。


 東京、仙台では後手に回るのを余儀なくされた。しかも守りながらの戦いは困難を極める。

 が…富士川では、先手を打って待ち伏せることができた。

 あのイメージだ。

 ゲートを上がってくる鬼魔ノ衆はそこしか通ることができない。いくら速くても新幹線の線路上を進むことしかできなかった、あの能面のように。

 それに…

 前もって出現地点と時刻が分かれば住民の避難もできる。

 これはかなりのアドバンテージだ。


 いちみの頭の中で、どんどん作戦のイメージが膨らんでいく。


 その範囲は日本全域…

 そのための機動力として各都道府県に配備のSMT914戦略ヘリがこちらにはある。

 そうして次々と出現する巨大鬼魔ノ衆を、待ち伏せた御子の神のが起具(かむのき)で叩く。

 まさにモグラ叩き。

 それで果たして勝ち目はあるのだろうか?

 相手(てき)は1000()

 こちらは、たったの50。

 魔力にも限りがある。


 50の御子が必要なほどの危機なんて起こり得るのかと(いぶか)しんでいた自分が愚かだったことに気づかされる。


 しかし…これしかない…

 その運命の鍵を握るのは、特別な御子、引波紫兎の危険予知スキル。


 いちみは専用回線携帯を取り出し、司令本部の五郎につなぐ。

「司令、二條です。これからすぐに紫兎ちゃんと司令本部に戻ります。松本国務次官に各機関の代表との緊急招集を要請して下さい。…はい、そうです。ASAP(ただちに)です」


「いったい何事だ?」

 と返す五郎に、いちみはこう告げた。


「明日、この国が滅ぶかどうかの危機とでも言えば、お分かりどすか?」


読んで頂きましてありがとうございます。

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