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夜更かしはお肌の天敵です

ザ・セバスチャンの後について部屋を出、そのまま廊下をまた歩いていく。

王様怒ったよねえ…と考えてみるも、考えは進まないまま、前を行くセバスチャンを見る。

結構な年の人みたいだけど、姿勢よくスマートに歩く姿はやっぱりセバスチャンだよね。


と思っていたら


「名乗っておりませんが、なぜわたくしめの名前をご存じなのでしょうか?」


といきなり振り返って話しかけられた。


「何も言ってないんですけど」

「いえ、先程から”セバスチャン、セバスチャン”と聞こえてくるので、ヒスイ様がお話しされているのかと思ったのですが、違うのですか」


もしや思考駄々洩れ!?

あうあうしていると、わたしの耳にも”セバスチャン”と聞こえてきた。


「「誰か呼んでる!」」


二人同時に小さく叫んだ。


セバスチャンは少し立ち止まって耳をそばだてると、さらに歩く速さをはやめ(でもスマートに歩く姿は変わらない)、とあるドアの前に立ち止まった。


「ヒスイ様、本来ならお部屋へご案内することが最優先でございますが、ただ事ならぬことが起きている様子です。しばしこちらでお待ちいただくことをお願いしてもよろしいでしょうか。もちろん、ご案内をということであればそういたします」


まあ、わたしもそこまでひどいことは言わないよ。

だから、ドアの前で待つことにした。

セバスチャンはかすかにノックしたと思うと、半身分ドアを開けるとするっと中に入って、きっちり音もたてずにドアを閉めてしまった。


誰の部屋?

あんなにこっそり入るなんて、あんまり知られたくないんだろう。

長く待つのかなあ、わたしが一人で廊下にいることがばれても大変だよね、なんて思っていると、ドアが開き、セバスチャンが出てきた。


「大変お待たせいたしました。それではまいりましょう」


冷静だったセバスチャンの額に汗が浮かび、隠しているけれど明らかに焦りの表情が浮かんでいる。



「あの」

「はい、なんでございましょう」

「今の部屋の方は大丈夫なの?」

「…今のところは、そうですね」

「えっと」

「ヒスイ様」

振り返ったセバスチャンが小さく口に人差し指を当てた。

わたしはかすかにうなづく。


よくあるよね。

表面上は何ともなくても、水面下でいろいろ、いろいろ、いろいろいろいろ渦巻いていることって。

焦ることはない、後で聞くだけだ。


そのあとは二人で黙って歩き、わたしが今夜泊まる部屋へ着いた。


うひゃ、やっぱり広い!

ベッドとローチェストらしきもの、それと暖炉(!)と小さなテーブルセットだけだけど、普通じゃないなって感じがする。


ベッドは残念ながら天蓋付きではなかったけれど。


わたしたちが部屋について少しすると、メイドさんがお茶を淹れてくれた。

お茶を淹れると、メイドさんは出て行ってしまったので、セバスチャンをさっそく尋問することにする。


「えへん、ここならいいですかね?さっきは廊下だったから、誰かに聞かれたりしても困ったよね?さて、さっきのことだけど」

「ヒスイ様」

「はい?」

「どうしてもですか」

「どうしてもです」


セバスチャンは眉間にしわを寄せていたけれど、ふうっと息をつくと話してくれた。


「あの部屋は雪白さま、薔薇紅さまの御従兄弟さまに当たる方のお部屋でございます。先月より遊びに来られておりまして、あの部屋で過ごされていらっしゃるのです」

「で?」

「『で?』とはどういうことでしょう?」

「ごまかしても駄目よ。それだけならあんなに切羽詰まって呼んだりしない。何があったの?」

「ヒスイ様はご存じなくてもよろしいかと思われますが」

「わたしはね、雪白さんの依頼を受け、そのことで薔薇紅さんとも話をして、それだけじゃ足りなくて王様からも呼び出し食らっているのよ?しかも夜ご飯食べようというときに。で、わたしの受け答えがまずかったのは認めるけれど、話途中で王様から退室させられたでしょう?宿にも帰れず、ご飯も食べられず、何も知らされないまま、王命だけ聞けと言われているんですよ?この国の民ならいざ知らず、私はこの国の人ですらないのに、王命だけ聞けと言われてもねえ…自分に降りかかりそうなことは、情報としてとりあえず集めておかないと、いざというとき困るのはわたしなんだよね?ってわかってます?」


セバスチャンの眉間のしわがどんどん深くなる。

とうとう目をつぶって、眉間に手まで添えてしまった。


「ヒスイ様、では夕食にいたしましょう」

「話を逸らすの?」

「いえ、長くなりそうなので、先に召し上がっていただく方がよろしいかと。すでにメイドが用意に行っているはずですので、そろそろ何かを持ってくるころです」


そういうとドアにノックがあり、先程のメイドがワゴンを押して入ってきた。

部屋の小さなテーブルに細長いパンと肉入りのスープと果汁のコップ、わたしの世界の葡萄っぽい果物が載った皿が載せられ、茶器が片付けられた。


促されるままテーブルに着き、目の前の夕食を食べることにした。

食べ始めてから「毒」と思い至ったけれど、何事もない感じなので完食しちゃった。


またもやメイドさんがきてくれて食器を片付けてくれ、お茶を出してくれた。


「じゃ、あの部屋の事を話してくれますね?」

一口お茶を飲んでわたしがいうと、あきらめた顔でセバスチャンが話し始めた。




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