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新たな登場人物

「‼︎‼︎」


恐る恐る振り返ってみると、見たことない女の人がいた。

褐色の肌に深紅の髪、切れ長の目はまっすぐにわたしを貫いている。

ビッグシルエットのポンチョに隠れて体格はわからなけど、何か筋肉質な感じがする。


「あなた、さっきギルドから出てきた人ですよね?」


相手の目的がわからないので、とりあえず黙っておく。


「何か依頼を受けたと思われますが…」


雪白関係かっ!

言えない言えない!

頑張って平静を装い、


「急いでいますのでごめんなさいね」


と無理やり笑顔を貼り付けて逃げようとしたら


「あ、いや違うんです。もしあなたがわたしの思う依頼を受けていたなら、わたしもご一緒させていただこうと思いまして」


と、声が追いかけてきた。


なんですと?

協力者?


思わず足を止めてしまった。


「やっぱり」


赤髪は満足そうに笑顔を浮かべてわたしを見た。


あっ、まずい。

非常にまずい。


わたしの選択肢は3つ。


1.ダッシュでとりあえず逃げる

2.ダッシュでとりあえずギルドへ行く

3.赤髪の話を聞く


多分正解は2番。

しかし、ギルドとわたしの間に赤髪がいるんだよね。そしてわたしは究極に足が遅い。

むぅん…


「わかりました。とりあえず話を聞きましょう」


と、宿へ促した。

赤髪はホッとした様子で、後ろからついてくる。


って言うかこの人誰!

わたしの知っている白雪姫と、どんどんかけ離れていく気しかしないよ。

この分じゃ、ドワーフの代わりに誰が出てくるのか…。





宿の食堂はがらんとしている。

ここでは周りに筒抜けになってしまう。

あまりわたしのことを知られたくないんだけど、仕方ない、部屋に行くしかない。


宿のおかみも、下働きの子もそこにはいず、わたし達はそのまま部屋へ上がった。




部屋へ入り、一脚しかない椅子をすすめる。

わたしはベッドは腰掛けた。


「なにもお出しできずにごめんなさいね」

「どうかお気にせず」


赤髪の彼女はそれだけ言うと


「わたしは、スノウホワイト、あなたはおそらく雪白と聞いていると思いますが、あの子の義理妹のレッドローズといいます。スノウホワイトもわたしも、現国王の娘です」


と、頭を下げた。

あ、やっぱり王女さまでしたね、雪白さん。

そして思わずわたしもお辞儀をしてしまう。

お辞儀にはお辞儀を。

現世の習慣っておそろしい。

っか、義理妹?

どこから出てきたよ?

完全に別物なのかなぁ、今回も。


「わたしも名乗るべき?」

「いえ、それは強制いたしません。今回お声をかけさせていただいたのは、スノウホワイトを止めて欲しかったからなのです」



レッドローズの話によると、雪白の本当の母親は雪白の幼少時に亡くなられたそうだ。原因は不明らしいけど、噂だけは色々あるらしい。なぜなら、前妻が亡くなった直後に後妻を娶った…しかも雪白と同い年の娘を持つ未亡人…からである。


雪白とレッドローズは、他に年回りの近い子がいないせいか、本当の双子の姉妹のように仲睦まじかったと言う。


雪白は少ししか言葉を交わしていないが、それでも芯の強い子だと言う印象をうけた。

対してレッドローズはどこか立ち回りのうまさが滲み出ている。

生きていく上で、お互いそれが身についたのかもしれない。


父王はそんな二人を分け隔てなく可愛がったが、レッドローズの母親の態度は、雪白とレッドローズにどうしても差がでてしまっていたらしい。


レッドローズを可愛がって、ではない。

むしろ、雪白を可愛がっていたようなのだ。

雪白が本当の母を想って時折影で涙していたことを不憫に思ったことが発端のようで、それを埋めてあげるのが自分の役割だと強く思い込んだ結果であった。


演技でないとしたら、かなり母性の強い女性のようである。


もちろん、レッドローズのことも充分に可愛がり、慈しんでいる。


聡明な雪白が、レッドローズの気持ちを考えないわけがなく、現国王の跡取りにも興味もないため、雪白は自分がいなくなれば事は丸く収まると考えたらしい。


レッドローズはちゃっかりさんの性格ゆえ、なれるんなら現国王から王位を継いでもいいわね、くらいには思っているとか。


でもそれは、雪白がいてのこと。

雪白がいなくなってまで、王位につきたいとは思っていないし、そんな大変なことが一人でできるとも思ってもいないと言う。


なので、雪白の家出を止めて欲しいのだそうだ。


止めて欲しいって言われてもねぇ…

引き受けちゃったし、失敗したら罰金待ってるし、そんなに持ってないし。


「どうか、どうかお願いします」


レッドローズの懇願に、考えるふりをする。

罰金払ってくれるならいいかな?と考えが傾いたが、ふと


この話、全部ホント?


と頭をよぎった。

まだ雪白としっかり話してないんだよね。

ということは、とりあえず保留か。


「あなたの話はわかりました。ですが、わたしがスノウホワイトさんの依頼を受けたかどうかを明らかにすることはできません。

あなたの願いを聞き入れることもできないことになります。

基本的にギルドの依頼は、第三者への開示が認められていないのです。

そのことを前提としてお話ししますと、まずあなたがしなければならないのは、ギルドへの申請です。


スノウホワイトさんの依頼がどうなっているのか、あなたの身分を証し、手順を踏んで第三者…今はレッドローズさんですね…への開示許可、どんな依頼で誰に頼んだのか、をもらってきてください。

わたしがスノウホワイトさんの案件に無関係だという事実になるかもしれません」


「…わかりました。ではそうさせていただきます。本日はお手数おかけしました」


レッドローズはあからさまにがっかりしながら立ち上がり、ドアのところで会釈をして去っていった。


ゴネられなくてよかった。

育ちの良さかな。



それにしても、どうしたものかね。


雪白と話もしたいけど、レッドローズにはバレないようにした方が良さそう。

仮にその話が本当ならバレてもいいのかもしれないけど、嘘だったらレッドローズの本当の目的がわかるまで雪白には言わない方が良さそうだよね。原作の『白雪姫』を知っちゃってると。


ま、ギルド通せといったから、あっちで何か調べてくれるでしょ。

開示申請が通ることも滅多にないんだけどね。

ただ王族だからなぁ…それでも、手を打たないよりマシか。

もし齟齬があれば、誰かしら接触してくるだろうし。


楽観的とよく言われるけど、これは仕方ないよね?



気を取り直して本日2度目のお買い物へ。


っていうか、口外法度に今の当たらないよね?

わたしからは肯定も否定もしてないよね?

ちょっとだけ不安になりながらも、外に出たのでした。

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