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ヒロインだけどヒロインじゃない

初めての投稿です。

元ネタのアイディアをくれたSさん、どうもありがとうございます。

「うぅ…なんか首イタイ…」


じゃない!

ヤバ!

またやらかした感満載なんだけど。


わたしはハッと身を起こし…

やっぱり…

まただよ…

仕方ない、今回の依頼をみてこなきゃ。




いつの頃からか、ふいっと寝落ちると異世界に跳ぶようになっていたのね。

毎回じゃないんだけど。


大抵、跳んだ先がハローワークみたいな職業斡旋やクエスト依頼所で、そこにある依頼をこなすと帰れるの。


どんな依頼でもいいわけじゃなくて、多分わたしにしか見えないんじゃないかと思うんだけど、帰るフラグが立つクエストはほんのり光ってみえるから、それをクリアすればいいだけなんだけど…


これがどこかでみたようなものばかり!


「意地悪な猿が母を殺しました。敵討ちを手伝って下さい。 依頼主:子カニ」


「危機感のない娘の、おつかいのサポート。当日のみ。娘は赤いフードつきマントを着ます。

依頼主:M・ブラシェット」


「大至急‼︎2日以内‼︎鬼の本名が知りたいので助けてください‼︎ 依頼主:橋をかけたい大工」


などなど。


わりと楽に終わることがほとんどだけど、なぜだか知っている結末にならないことが多く、一人振り回されるわたし。


子カニだって猿との全面戦争になっちゃうし、赤マント(というかパーカー)女子のサポートは、色っぽい美女の護衛だったし、大工に至っては鬼が村全員から騙されて気の毒だったし…。




で、今回跳んだ先もやっぱり異世界ハロワ。

通称ギルド。

他にもそんなとこあるでしょうに、なぜだかいつも同じ場所。


ここはヒトがメインみたいだけど、エルフとかドワーフとか獣人とか、異世界なんだなと実感するよ。


これは寝落ちの夢?

いやいやいやいや、違うんだな。

普通、夢って整合性ないけど、これはしっかり辻褄が合ってるし、結末までちゃんとしてる。

そこに至る道のりは別として。


そりゃ、ファンタジー好きで色々読み漁っている事実はありますけど、だから余計に夢じゃないと思うんですよ。


更に、フラグ回収してこっちに戻ってきた時、寝落ち直後の時間に目がさめることからも、夢なんかじゃないと確信してるわけ。


で、そんなこんなでわたしはそんな場所の片隅に置かれた、待合スペースのようなところの椅子に座っていた。

これもわりといつも通り。

室内はほどほどに空いていて、片隅の椅子に座るわたしに注意するものなんていない。

ちょっと見回して、軽く伸びをして、まずは掲示板みてこなきゃ。



ふーん、今回はこれか。


「相談に乗ってくれる人。口が堅い女性のみ。詳細は窓口にて。 依頼主:雪白」


口、堅いかなぁ?

とりあえず『秘密ね』と言われたことは完全に守ってきてるから大丈夫だと思うけど、信じてもらえるかなあ?


とりあえず窓口行ってみよかな。

依頼用紙を外して窓口へ行く。


「すみませーん」

「今いきまーす」


係の人が来た。

ここの窓口さんはエルフが請け負っている。

見た目?と思っちゃうんだけど、その性質なんだって。

合理的で公平なんだとか。


「この依頼なんですけど」

「あっ」


んん?

なんだ?

目が泳いでる。

もしかしてダメなやつ?

たまに混じっているんだよね、張り出してみたのものの、受けられない依頼ってのが。


「あのぅ、もしかしてこれ、ダメ案件ですか?」

「あっ、いえいえ違うんです!ちゃんと探している案件です!ただね、依頼主がちょっと個性的なので…」

「個性的?」

「ええ、個性的。これって便利な言葉ですよね〜」


係の人の目が語っている。

これで察してください、と。

うん、察しはした。

けど、受けなきゃ帰れないんだよ。

だから受けるしか無い。


「便利ですよね〜。で、どんな内容なんです?」

「あのう」


係の人が言い澱みながらももごもご言う。


「本気で受けるんですかこれ。」


うんうん、わかるよ、受けて欲しくないんだよね、こことしても面倒な案件だから時間切れ狙ってるんだよね。


「受けますよ?気が変わることもないですから、教えてもらえません?」


目の前のエルフの窓口係は、ため息ついてわたしを見てから


「仕方ありませんね。ここではなんですから、奥へ行きましょう」


と言った。


奥とな?

奥に行く人見たことあるけど、やっぱりオープンにできないときに行くんだ。


窓口係には申し訳ないけど(しかし本気でそんなことは思ってもないが)、ちょっとだけワクワクしながら後についていった。



窓口のある部屋を出て、廊下を右に左に歩いていく。

無言でしばらく行くと、あるドアの前で立ち止まり、鍵を開けて部屋に入った。


「ちょっとお待ちくださいね。今連絡してきますから。」

「連絡?」

「えぇ、この案件は依頼主が受け手を決めるんだそうです。なので、呼びに行ってきます。」


こともなげにそういうが、そんなすぐ来られるとこにいるってこと?


窓口エルフは、事務処理していたうさ耳獣人にお茶をお願いして出て行ってしまった。


うさ耳獣人はわたしにお茶を出すと、いなくなってしまった。


シンプルな部屋の、これまたシンプルな応接セットにぽつーんとひとり…フラグ付きじゃなかったら、こんな案件うけないよ‼︎


それにしても。

わたしは常々、こんな召喚まがいないことをする奴は誰だと考えている。


依頼を出すのは自由だし、その依頼を誰が受けるのかも不確定要素なのはわかりきったこと。

その、不確定要素に【わたし】という因子をいれることで、何かが確定されてしまうはずなのだ。




そう、わたしは何者かに利用されている。




…のではないかというのが、最近思いついたこと。


特定の依頼書に何かを付与させ、異世界人のわたしを召喚する。

それが何者かにとってメリットでなければ、こんな手の込んだことするわけない、という推理。


別にねいいのよ。

ホント困っている人がいるんだから、わたしで解決になるんならいくらでもお手伝いします。


でもね?

それすらも誰かに利用されてるとしたら?

それはおもしろくないでしょう。

だから、わたしは少しずつ少しずつ情報を集めることにしようと思ったのだった。


しばらくすると、ノックが聞こえ、窓口エルフと一緒に女の人が入ってきた。


「すみません、お待たせいたしましたね」

そう言って紹介してくれた。


「この方が今回の依頼主の雪白さまです」

「こんにちは。雪白です。」

「こんにちは。翡翠です。」


しばらく無言の時が流れる。


「あなたなら大丈夫でしょう。今回の依頼、翡翠さんんにお願いします」


わたしをじっと見つめていた雪白はそう言った。


「ありがとうございます。」

わたしはホッとしてそう答えた。


そのタイミングで、先程のうさ耳獣人がお茶を持って入ってきた。

もちろん、わたしのはお取り替えで。


「よかったです。それじゃ、契約に入りたいと思います。雪白さまから説明なさいますか?」

「いえ、あなたが説明してください。必要なことがあれば補足します」

「かしこまりました」


窓口エルフはそう言って書類を広げた。







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