続:シスエン~妹怨~【A】
好きになった女の子が『妹』になる。誕生日を迎えるごとに一人、新たな妹が俺の前に姿を見せる。これはホラー? いや、最高過ぎる贈り物、いや贈り妹ではないか! 過去の誰かは付き合っていた妹に恋愛感情を抱いてしまい、彼女として勝手に認定し嫌がりもしない彼女に甘いキスをしていた。
そいつは意識し始めると行動を起こしてしまう悪い癖があった。だがそれも全て過去の出来事。過去と言っても、それはいつのことで、どこの誰なのかさえ分からない。俺自身の奇妙な運命は、ホラー的な要素から始まる。
「お姉さんじゃダメなの? 確かキミって、シス……」
「シスコン? ノンノン! 俺には姉弟なんていませんけど? 別に姉が悪いとか言っていません。ただ、興味が薄いだけです。それが何か?」
「ちな、私は姉の方だけど、今すぐ蹴っていいか? ってかよ、お前もあいつと同じ運命をご希望か? あ?」
「なんすか? 脅しっすか? 姐さん」
「ミオさんと呼べや、コラ! あいつより可愛げが無さすぎんぞ」
「元ヤンですか? フ、古いですね。一体今はおくいつ……」
「蹴るぞ?」
「もう蹴られました。いや、姐さんじゃないすか。そんな白衣来て迫力ある姐さんは他にいませんよ?」
足を挫いた俺は手っ取り早く、近くの整形外科に駆けこんだ。そこにいたのが白衣を着て、煙草をプカプカとさせていた姐さんだった。彼女の名前は西川美青。名前負けしている姐さんだ。
ただ、どことなく表情には影を落とす時があって、その時だけは綺麗なお姉さんに見える。恐らく気のせい。伊達に歳を食っていないということだろう。
「おい! 今、蹴りを入れて欲しいって思っただろ?」
「なんすか、そのマゾい思考。ないっす」
「あー可愛くない。お前、早く帰れよ。俺は、じゃなくてあたしは、あいつを探しに行きたいんだ」
「行方不明の弟さんでしたっけ? いや、それはなんて言えばいいのか」
「本当の弟じゃねえよ……だけど、あたしはあいつが好きなんだ。どこかできっと今も泣いているに違いないんだ。あたしが助けてやるって散々、ほざいていたのにな。ちくしょう……会いたい、会いたいぜ。ケント……」
どうやら相当思い入れがあるようだ。こういう時、恋愛経験が乏しすぎる俺は、どう言葉をかけていいのか分からずに右往左往するだけだ。
「ってことで、包帯と湿布、あざーす!」
「もう来んな! でも、マジで気を付けろ。特に妹には気を付けろよ」
「妹! 最高じゃないですか! 少なくとも年増の姐よりは――」
「逝ね、コラ!!」
さぁて、まずは真面目に高校に通いますかね。まずは真面目に真面目に――だな。