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鍛錬じゃなければきれい(後編)

1、水着のお披露目


 私を始め早めに着替え終わったリースやラジールさん、アメジスさんが男性陣と合流する。うわ、みんなラジールさんとアメジスさんの方見てるよ……。

 アメジスさんは健康的な肌色、目は紫で先端が少しだけつり上がっていて、口元は相変わらず自信に満ちた笑みを浮かべている。ネイビーの髪をほぼショートヘアーに、一部の長い部分を結んでポニーテール状に垂らしている。ショート部分は顎のあたり、長い部分は腰まで長さがあり、首のあたりの結び目にはウサギの顔の形をしたヘアピンがある。

 アメジスさんの水着は色は赤だが大事な部分こそ隠れているものの布面積が小さく、大きな胸が下からも横からも零れている状態だった。おいライティス、ナニをするつもりだ。

 あれ、でも一人だけ見向きもしない男がいる。

 よく確認してみると、それはディアーだった。ラジールさんやアメジスさんを見るでもなく私たちナイチチ組を見てるわけでもない。かといって男に興味があるようにも見えない。気になるので声をかけることにした。

「ディアーさん、どうしたんですか?」

「ん、いやなに、鍛錬と同じ風景のはずなのに随分と雰囲気が違うと思って、な」

「可愛い女の子たちが可愛い水着着てるんだからちょっとは見てあげたらあ」

 ちょっと意地悪な感じで接する。が、

「は、俺の好みに合う奴はこの領にはいねえからな。あいつらみてえに浮かれたり

 しねえよ」

 どうやら好みの子以外には反応しないらしい。変わった男だ。


 他の女性陣も合流してきた。その度に男性陣(ディアーを除く)が歓声を上げていた。私とリースはそれを冷ややかな目で眺めていた。

「みんな揃ったな。遠くに行きすぎないように注意してくれ」

 ブリングが注意を言い終えると、みんな思い思いに楽しみ始めた。




2、水かけ合戦


 私は海に浸かりながら景色を堪能していた。いつも鍛錬で通っていたが、このような形で見るとディアーが言っていたように見える風景が違う。

 しかし、静寂は長くは続かない。

「きゃっ」

 突然横から水をかけられた。

「えへへへ」

 どうやら犯人はエディアのようだ。

 エディアことエディア-レイチェルは今は黄色のフリルがたくさんついたワンピース型の水着を着ている。

「よくもやったわねえ」

「うわっ」

 私はすかさずエディアに水をかけ返す。

「なになに、水かけ合戦かな? 私も参加しちゃうよ」

「おっと、俺も忘れてもらっちゃ困るぜ」

 騒ぎ(と言うほどではないが)を聞きつけて彩とクルセイドがやってくる。

 クルセイド-ジェスター。健康的な肌色、目は藍色でほんのりつり目。やんちゃな彼は歯を見せた笑みが似合うようにいつもそうしている。髪はギザギザ頭で色は黒。髪は毎朝セットしているらしい。今は迷彩柄の短パン水着を穿いている。

「よっしゃ、ハウトを集中狙いしようぜ!」

「いいね! 乗った!」

「それそれそれそれー!」

 3人から大量の水をかけられる。ちょ、これ洒落にならんて!

「ちょっと、待って待って」

「フハハハハ、待たんぞ待たんぞ」

「まだまだかけるよー」

「待って、て言ってるでしょうが!」

 私は我慢の限界に達し気を放ち3人を牽制する。

「うわ」「おっと」「あぶなっ」

「まったく……。これで少しはおとなしく――」

「コラアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

 そこに怒声が響き渡る。リースが私たちに怒鳴っているようだ。

「あんたたちもう少し普通の範囲で遊んでよ! なんで波打ち際から離れてるのに波で

 砂の城を壊されなきゃいけないのよ!?」

 見ると、確かにそこには砂の城だったなにかの残骸があった。

「ごめん、ちょっと軽率だった」

「わりいわりい」

「「ごめんね」」

 みんなでリースに謝る。

「分かればいいのよ。さてと、また作り直すわよ」

 リースが再び砂の城を作りに戻っていった。

「……あまりはしゃぎすぎない範囲で、再開しましょう」

「そうね」

 私たちはリースたちに迷惑をかけない範囲で水かけを再開した。




3、真・水かけ合戦


 私たちが水かけをしていると、横から水しぶきが上がった。

 どうやらフェイたちの水がこちらまできているようだ。

「ちょっとフェイ、こっちまでかかってるわよ」

 私は抗議の声を上げる。

「だったらお前らがどいたらどうだ?」

「むっ」

 確かに私たちが離れれば問題は解決するが、それはなんか負けな気がする。

「どしたのハウト?」

「フェイが邪魔だからどけって」

 彩が質問したので私は答えた。

「おいこら、悪意に満ちすぎた言い方するな」

 フェイが反論する。

「これは宣戦布告だね!」

「お、ならチーム戦だな!」

 エディアとクルセイドが完全に悪ノリしてやがる。

「チーム戦、受けて立とう」

「負けないぜ!」

 なんか相手陣営も積極的なんだけど!?

 ちなみに今答えた二人はアクアとメバスター。

 アクアは肌は白に近い水色、目はこげ茶色でジト目風味。口はちょっぴりムスッとしていて、耳は人間より5cmほどとがっている。ポニーテールで前髪はオールバック、首のあたりで留めていて長さは胸の上あたりまであり、色は藍色。体つきは痩せているが最低限は鍛えているようだ。

 一方のメバスターはほんのり褐色が入った肌色、目は藍色で切れ長、口からはわずかだが牙が見える。耳はアクア同様人間より5cmほどとがっていてちょっと悪人面。茶髪のギザギザ頭で長さは首と肩の間くらいある。セットしなくてもこの髪型らしい。身長はやや低いがかなりの筋肉質だ。

「よーし、チーム戦始めるとするか! うりゃ、先制攻撃!」

 クルセイドが宣誓とともに攻撃をする。

「だらぁ、一気にいくぜえ」

 メバスターもやる気満々だ。

 こうしてしばらく水のかけ合いをしていたが……。

「ふっ、ならこれならどうだ!」

 アクアが大技と称して高波を発生させる。

「わーーーー!!! ちょっと待った待った」

「待てと言われて待つ奴がいますかな?」

「そうじゃなくてーーーー!!! ああああああーーーー」

 ハウト陣営の人たちがみんな波にのまれる中、ハウトは真っ先にリースの方を見た。

 が、時すでに遅し。砂の城だと思われる場所は高い残骸があり、リースを筆頭に砂の城組がずぶ濡れになっている。

 リースは体を震わせながらこっちに向かってきた。

「ゴルアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」

 あまりの剣幕にみな動きを止める。

「なんでえ、波打ち際からあ、離れているのにい、波でえ、砂の城をお、壊されなきゃあ、

 いけないのよ!!!!!!」

「いや、ちょっと熱くなっただけで――」

 おいフェイ! 火に油を注ぐな!

「全員正座しなさい!!!!!」

「「「「「「「「はいぃ!」」」」」」」」

 この後リースによる説教は1時間に及んだと言う。

 今日得た教訓。年下だがリースを本気で怒らすのはやめよう。



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