鍛錬じゃなければきれい(前編)
唐突に放り込んだ水着回です。
1、それは夕方、突然に
「みんな、今日は見てもらいたいものがある」
7月のとある日、夕食後にライティスさんとブリングさんがみんなを呼び止めた。なんでも渡したいものがあるらしい。
後片付けをしているレンとリンカ以外の人が何事かとのぞきに来る。
「ふふふ、よく見るがいい!」
ライティスさんが自慢げに開いた風呂敷の中にはいろいろな種類の小さな布があった。
「え、水着?」
その布の正体を知っているのか、エディアがライティスさんに尋ねる。
エディアは健康的な肌色、茶色の瞳でよく見る形、口は今は疑問符を浮かべているかのように閉じられている。茶髪のポニーテールで結び目は頭頂部と耳の間くらいで長さは肩のあたりまである。黄色の長袖に黄色の七分丈のズボンと黄色が好きなのか服は黄一色だ。緊急時でもないのに何故か剣を腰からさげている。
ちなみにエディアや彼女と仲の良い人たちにはさん付けを禁止されている。
「その通り! 揃えるのに苦労したんだぜ」
その水着をみんなに配っていくライティスさん。
「サイズはあってるはずだから安心して着てくれ」
「な!?」
「ちょっと! いつサイズ測ったのよ!?」
ライティスさんの発言に女性陣が批難の声を上げる。
「と、言うわけでだ。明日はみんなで海水浴にいくぞ」
ブリングさんがライティスさんをかばうように言う。
「……一応聞いておくが、鍛錬は休みになるんだよな?」
ディアーが私の思ってる疑問を口にする。
「もちろん」
「はいよ。急な思いつきは予定狂うからできれば事前に連絡入れてくれよな」
「驚いたな。ディアーが予定なんぞを気にするなんて。あんな自分勝手だったのに」
「んだとコラァ! いつまでも子ども扱いすんじゃねえぞライティス!」
「そういうところがまだまだガキだなあ、くっくっ」
「おう表でろや、ぶっ潰してやる!」
「おお、怖い怖い。ハウトもこんなんになるなよ」
「急に私にふらないで?!」
「ハウトは俺の優秀な教え子だからな、間違っても人を煽って楽しむ人にはならんだろう」
ライティスさんとディアーは昔なじみのようで、ライティスさんがディアーを子ども扱いしてはディアーがキレるというのをよくしている。
「レン、リンカ。お前らは留守番でいいか?」
「んー、通りで私たちの分の水着がない訳ね。いいわよ。その代わり、どこかで家族で
海水浴に行かせてくださいね?」
「分かった」
ブリングさんがリンカと話しをつける。
こうして私たちは海水浴に行くことになった。
2、いつも見てるいつもと違う風景
海水浴の場所は鍛錬でいつも使ってる浜辺だった。のだがその場所には昨日なかった謎の大きな板が置かれている。
「女性陣はその板の向こうで着替えてくれ」
「は?」
「更衣室も用意できないの?」
ここでもライティスさんは非難囂々だ。
しかし当然と言えば当然である。この板きれ一枚隔てただけで私たちに着替えろと?
「あの、ライティス、さん。俺らが近くにいないようにすればなんとかなるんじゃない
でしょうか? 例えば、50mぐらい離れるとか」
「フェイ君グッジョブ!」
「それなら我慢してあげるわ」
フェイの提案に女性陣が賛同の声を上げる。
「絶対覗くんじゃねえぞ!」
レインさんがそう告げると、女性陣は板の向こうへと歩いて行った。
離れたところで男性たちは着替えを終えた模様。
私たち女性陣はちょっぴり騒動になっていた。
「これ、露出高いよね?」
そう尋ねるのは服部彩さん。自称忍者。健康的な肌色に目は赤色でややつり目。口は普段は笑顔を見せることが多いが今はへの字。黒髪をサイドポニーにしていて結び目は頭の天辺と左耳の間くらい。長さは首のあたりまである。普段は藍色の忍び装束(露出度低い)を着ているが、今はそれを脱いで白ベースにエメラルドグリーンの水玉模様の入った紐ビキニを着用している。
「私のも、こう、大事な部分が心許ない」
彩に答えるように言ったのはラジール-エリアさん。やや白い肌色、碧眼で切れ長。今は戸惑いの表情が見て取れる。鼻が他の人より少し高い。髪はロングストレートの金髪で長さは腰のあたりまである。そんな彼女は空色のハイレグで胸中央部に大きなスリットがあるこれはこれで露出が高い水着を着ている。どこか恥ずかしそうだ。
「それに引き換え私のは随分露出少ないですね~」
そう口にしたリースは、以前外の世界の学校と言うところで見たスクール水着そのものだった。ご丁寧に胸のあたりに『5-3 りーす』と書かれているワッペンが縫い付けられている。おいライティス、なに考えてんだ。
他の女性陣も全体的に露出が多い水着が多かった。
私も例外ではなく、緑と青のボーダー柄の三角紐ビキニだった。普段から露出が多めの私だが、そんな私でさえちょっと抵抗を覚える布面積の少なさだった。おいライティス、なんでこんなにぴったしの水着を用意できてんだ。
……まあいいか。
とりあえずあまり男性陣を待たせる訳にもいかないし、私はそろそろ出るかな。
うー、やっぱり少し恥ずかしいよ……。