初めての依頼(後編)
1、焦燥感
あれから鍛錬を重ね、実戦も何度も経験した。
だが、私たちの任務はもちろん、部隊全体の任務も一度として成功しなかった。
「ちきしょう、なんだって俺らがこんな目に……」
「ぼやいても仕方がない」
「こんなんだったら……について行けば良かった」
「おい、それは言うな!」
現場の空気も日に日に憔悴し悪くなっていくのが分かる。
そんなある日、事件は起きる。
2、殺戮
隊長がこれが最後の戦いだ、と皆に告げた。
しかし、この戦いでも勝つことは出来なかった。
すると、
「援軍だ、援軍が来たぞ!!」
「良かった、これでまだ戦える!」
どうやら援軍が来たらしい。
ん、待てよ。
確か隊長はここが閉ざされた島だから援軍は来ない、といったようなことを言ってなかっただろうか?
なのに援軍……。なにか嫌な予感がする。
その予感は的中した。
「ぐわっ!」
その援軍は、あろうことか味方のはずの私たちの部隊の人を殺したのだ!
「やめ……げふっ」
「た、助け……がっ」
次々に殺されていく部隊の人たち。
その凶刃が私たちにも迫る!
「っ!」
私は目を瞑ることしか出来なかった。
あれ、私、なんともない?
目を開くと、私の目の前でさっきまで戦っていた敵が、いや、元敵が私たちを守るように援軍という名の新たな敵と対峙しているではないか!
「あ、ありがとう、ございます」
「無事で良かった! 早く安全なところへ!」
「は、はい」
私とフェイは後方の彼女の味方が集まるところへと移動した。
3、私に出来ること
部隊はほぼ壊滅した。隊長と副隊長、それと私とフェイだけが生き残った。
隊長はひどく落ち込んでいた。仲間が殺されていったというのに、自分だけおめおめと生きているなんて、と。
副隊長は重傷だったため、島の医療施設に預けられているらしい。
隊長は相手のリーダーの女性に私たちを保護するように話をしていたようだ。
だが、私は、
「最後まで見届けたいから、一緒に戦列に加えて欲しいです」
という思いをぶつけた。
リーダーの女性は仲間と話し合い、私たちの同行を認めてくれた。
「ありがとうございます!」
私はお礼を言い、彼女らについて行った。
4、数々の出来事、そして……
私たち、というよりはリーダーの女性に起きた苦悩、その仲間たちの想いに触れ、絆の力の強さを知った私とフェイ。
数々の苦難があったがリーダーの女性はこの島の平穏を勝ち取った。
すると、時空管理局ラスティア支部長のディバインがやってくる。
「ハウト、フェイ。おつかれさま、任務は完了だ」
「え、あ、はい」
「この時空は安全であることが確認された。任務完了に伴い二人の帰還を命じる」
「分かりました」
私たちは仲間たちに別れを告げ、ラスティアへと帰還した。
5、前とは変わった自分
「おかえり、無事任務を達成したようだな」
ブリングは私たちが帰って来るなりそう言った。
「はい、とても……とても良い経験になりました」
「俺も、今回の依頼を受けて良かったと思ってます」
「そうか、それは良かった」
今回の依頼を受けて、大きく変わったことがある。
今までは漠然と強くなりたいと思っていた私だったが、今は違う。
私を助けてくれたみんなのために強くなり、その力を奮おう、と。
フェイもなにか得るものがあったようだ。
その顔は出る前に私を小馬鹿にしていた表情とは違い、一人前の男の顔だった。
こうして、私たちの初めての依頼は終わった。
外の世界はあまり詳しく書けない事情があるので、いろんなところをぼやかしてます。
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