初めての依頼(前編)
1、依頼は突然に
いつもの鍛錬を終えた私たち。
「お、ちょうど良かった。ハウト、フェイ、ディアーに話がある」
呼び止めたのは領主のブリングだった。
「なんだ、話って?」
「明日、外の世界の依頼でハウトとフェイに行ってもらうからしばらく鍛錬出来なくなる
というのを伝えておこうと思ってね」
「「「は?」」」
見事に私たちは声を揃えて驚いた。
外の世界というのは、私たちの住む世界『ラスティア』の外、つまり時空間を越えた先の世界だ。例えば、本の中の世界は普通なら架空だが、時空を越えた先にはその本の中の世界が実在していたりする。そのような世界を外の世界と呼び、外の世界の依頼というのは時空管理局がその外の世界について何かを依頼したいときにくるものだ。
つまり、ブリングは私とフェイに明日から外の世界に行ってこい、と言うのだ。
「お、おう、分かった。まあ、アレだ。名誉なことだから誇りに思え、な?」
「いや、でも、ディアーさん」
「大体なんで俺がこいつと組まなきゃいけないんだ?」
「むっ」
私がディアーさんに反論しようとしたところ、フェイがなんか気に食わないことを言ってきた。あんたと組むのだって練習だけで十分だっつの!
「お前ら実力が近いんだからちょうどいいじゃねえか。後、さん付けはやめてくれ、
背筋がぞっとする」
「まあ、そうですけど……」
ディアーさん改めディアーが言うことはもっともだ。なのだが、
「おい、ハウト。俺の足を引っ張るんじゃないぞ」
こんなことを言われて素直にはいそうですと言えそうにない。
「そっちこそ、私の足を引っ張らないでよね」
「なんだと?」
「なによ?」
「カッカッカッ、仲がよろしいこって」
「ディアーさ……ディアー、変なこと言わないでください」
「まあ、どっちにしろ断れねえんだから二人で協力してくしかねえな。頑張りな」
そう言うと、ディアーは部屋へと帰っていった。
外の世界の依頼か。正直、ちゃんとできるか不安だ……。
翌日、ライティスとともにアングリアの時空管理局を訪れた私とフェイ。
ライティスは普通の肌、細すぎず太すぎずの黒い目、眉毛が太いのが特徴。金髪のショートヘアは首が隠れないくらいの長さ。白のワイシャツに黒の着古した胸が大きく空いているスーツに黒のスーツズボン、白の靴下に黒の革靴を履いている。
時空管理局から、今回の任務は干渉が確認された世界が危険か判断するために私とフェイが派遣されるとのこと。危険かどうかの判断は局側がやってくれるそうで私たちはその世界で普通に過ごせば良いだけだそうだ。
説明を聞き、ついに私たちは外の世界へと旅立った。
2、船上、襲撃、嵐、そして……
「ん……」
私とフェイは気がつくと部屋の中にいた。
「ここは?」
「揺れを考えると、船の上か何かじゃないか?」
フェイがそう答える。
「それにしては、なんだか騒がしくない?」
そう、さっきから誰かが叫ぶ声がひっきりなしに聞こえてくるのだ。
船の上だとしたら、何故そんなに騒がしいのだろう?
「迷った時は情報収集だな」
「そうね」
私たちは二人で情報集めをした。すると、どうやら海賊がこの船を襲っていることが分かった。また、誰かが海賊と戦っているため甲板に出ない方が良いことも。
「とりあえず、部屋で待機が良さそうだな」
「そうね」
私たちの意見は一致し、部屋で待機することに。
すると、時化がやってきたのか、ひどい揺れが発生した。フェイもこのままではまずいと思ったのか、船室から出た。
私たちの記憶はここで途切れている。
次に目を覚ました時は、大勢の人に囲まれていた。
3、まさかの部隊所属!?
彼らはとある部隊の人たちのようだ。
「君たち一般人を巻き込んでしまい申し訳ない」
隊長と思われる人から謝罪を受けた。
「いえ、助けてくれてありがとうございます」
私は素直にお礼を述べ、辺りを見回す。
ここは、どこかの島、なのだろうか? 大部分は森林で覆われている。
「なあ、俺たち、これからどうすればいいんだ?」
フェイは当然の疑問を私にぶつけてきた。
「さあ。とりあえずこの人たちがなにをしているのか確認しよう」
「そうだな」
方針を確認し合うと、私は隊長と思われる人に質問した。
「あの」
「なんだ?」
「なにか私たちでも出来ることはないですか?」
「君たちは一般人だろう。探索などには危険が伴う。だからここでゆっくり過ごすと
良いだろう。まあ、こんなところでゆっくり出来るかは分からないが」
「なにもしないのは心苦しいです。なにか手伝わせてください!」
「俺からもお願いします」
二人で頭を下げる。
「しかしなあ……」
「「お願いします!」」
「……分かった。今は少しでも人手が欲しいからな。雑用になるがそれで良いか?」
「「はい! ありがとうございます!」」
私たちはこうして部隊に雑用として所属することになった。
4、初めての実戦
あれから私たちは雑用をこなしながら鍛錬に明け暮れる日を過ごした。
そんなある日。
「今日はお前たちにも来てもらう」
「分かりました」
初めて部隊と一緒の行動だ。緊張するし不安もある。だが、それ以上に喜びと高揚感があった。
そこには私たちと相対する敵がいた。
私たちはその中でもがたいの良い男の相手をすることになった。
「ここは通さないよ!」
「ほう、お前ら見ないツラだな。だが、俺たちも止まる訳にゃあいかねえんだよ!」
彼の拳打が飛んでくる。私はそれを槍で、フェイは剣で受け止めるが、あまりの威力に吹っ飛ばされる。
「!?」
「なんでえ、まだひよっこじゃねえか。俺の相手をするのは10年早え」
「くっ」
私たちの最初の任務は失敗に終わった。足止めどころか、たった数打受けただけで相手の侵攻を許してしまった。
一方本陣の方でも動きがあった。敵のリーダーと思われる人が包囲網を突破していた。
それに合わせて隊長の声が聞こえた。
「総員、撤退!」
私たちは悔しさに歯を食いしばりながら撤退した。
帰り着いた後、私たちは二人で話し合った。
「完全に実力不足だったね」
「ああ。自分をこんなに情けない奴だと思ったのは初めてだ」
「私も」
「今後についてだが――」
「これからは鍛錬をもっときつくしよう」
「そうだな。少しでもみんなの役に立たないとな」
「それもあるけど、私自身もっと強くなりたい」
「だな」
その日を境に私たちは鍛錬により一層磨きをかけたのだった。




