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ガンデルフィーニ事変(後編)

1、衝撃の報告


 5月5日。

 ウォル領にいるはずの彩がフェイス領を訪れた。

 私はなにがあったか聞くと、ブリングや他の人にも伝えたいと言ったので、緊急招集をかけて会議を開くことになった。

「みんな、集まったな。彩。報告を頼む」

「はい。ウォル領は敵の襲撃を受けて、ラジール、エリエルが死亡、プライズが

 意識不明の重体だ。更にヴォイドが先走り死亡。後を追いかけた私とエディア、

 クルセイドの内、逃がすためにクルセイドが犠牲になった。アメジスはプライドの

 様子を見ながらウォル領の警備に当たっている」

 これには多くのフェイス領のメンバーが動揺した。私もその一人だ。

 ラジール、ヴォイドと言えばアメジスに及ばないにしても相当の手練れだったはずだ。

 その二人を倒すほどの相手が今回の戦いの相手にいることに恐れを抱く。

 彩は続けてこう告げた。

「ヴォイドは地底魔城前で一対多に持ち込まれて負けた。ラジールも噂によれば人質を

 取られたらしい。だから、攻め込むなら各個撃破されないように複数人で挑んだ方が

 良い」

「ふむ」

 ブリングは作戦を練っているようだ。

 それにラジール、ヴォイドが撃破された理由が分かったのは収穫だった。一対一で負けたのと違い、なにかしらの不利な状況によっての敗北ならこちらにも打つ手はある。

「……この事件をどうにか出来るのはフェイス領だけだと思う。アングリアの連中は

 自領を攻め込む者には容赦しないが、それ以外に寛容過ぎる。今回の件でも動かない

 みたいだ。頼む、この世界を救ってくれ!」

 彩が必死な形相で私たちに頼む。

 ブリングは今の話を聞き、練っていた作戦を発表する。

「明朝、彼らの拠点である地底魔城に乗り込む! メンバーは俺、ハウト、フェイ、

 エンジの4人。卯月には万が一に備えて領の防衛を頼む」

「ディアーは?」

 卯月は実力者であり師でもあるディアーについて聞いた。

 そっか、卯月はあの場にいなかったからブリングとディアーが対立しているのを知らないのか。

「卯月と一緒に防衛に当たる。それでいいよな、ブリング?」

「……勝手にしろ」

「??」

 卯月は不思議そうな顔をして二人のやりとりを聞いていた。

「以上、解散!」

 ブリングの号令が響く。

 私は明日に備えて早めに寝ることにした。




2、出陣


 5月6日。

 私、ブリング、フェイ、エンジの4人が地底魔城前の広場に到着する。

 相手も総力戦の構えでガンデルフィーニ、ドルムンシュタイン、レクセック、アベンシス、シグルト、チェルシーの6人が迎え撃った。

「誰かと思えば役立たずのハウトか」

「シグルト! あんただけは、許さない!」

 私はシグルトとにらみ合った。

「ふん。お前のせいで他の3人が死ぬんだ。哀れなものだな」

「このっ!」

「やめろハウト!」

 私は怒りのあまりフェイの制止も聞かずに先走ってシグルトに飛びかかった。

 そこにチェルシーが絡繰り人形で動きを妨害、私は身動きを封じられた。

「ぬん!」

 シグルトが私の首を狙ってラリアットを放つ。身動きを封じられた私はそれを直撃してしまう。

「がふっ!」

 幸い、と言うべきか魔力による強化を首に固めたため非常に痛い程度で済んだ。

「ハウト、各個撃破された話を忘れたか?」

 ブリングが叱責する。

「ごめん。でも今ので冷静になった」

 フェイはブリングになにやら耳打ちしている。

「よし、それでいこう」

 ブリングはなにを思ったのか突出してレクセックの方に向かっていった。

「はっ! バカも休み休み行いな」

 フォローに入るアベンシス。

 と、突然アベンシスの背後にフェイが現れる。フェイの必殺技、瞬間移動術であるクイックの内気配を消して行うハイド、そこから流れるように放つ雷撃を伴う袈裟斬り、雷速斬! この攻撃でアベンシスは左腕を切り落とされた。

 この隙を逃さなかったのはエンジ。ブリングの攻撃を回避しているレクセックをドルムンシュタインの方に吹き飛ばし、その勢いでアベンシスの方へ向かう。

 そしてエンジはアベンシスを真っ二つに斬った。

 ブリングはそれを見るなりガンデルフィーニをレクセック、ドルムンシュタインのいる方へ吹き飛ばし、シグルトとチェルシーを威嚇していた私に合流する。

 エンジも私の方へやってきてチェルシーを囲もうとした。

 しかし、チェルシーはもう一体絡繰り人形を繰り出し包囲網を突破。

 フェイはそれを見て一度距離を取った。

 シグルトはチェルシーの援護もありガンデルフィーニたちと合流を果たす。

 仕切り直しはブリングはガンデルフィーニへ、私はシグルトに、フェイはチェルシーに、エンジはレクセックに向かった。

 私はエンジと合流する。シグルトも追いかける。

 エンジ、魔力で数メートルの長さのオーラの刃を作り、それを横薙ぎ一閃。

 シグルトとレクセックはジャンプと同時にエンジを狙う。

 私の狙いは、同じくジャンプで攻撃を回避したドルムンシュタイン。

 彼が地面に足を付ける前に脳天から串刺しにした。

 エンジは二人からの攻撃を喰らったものの大きなダメージにはならなかった。

「よし、二人目!」

 私はブリングの方を見た。

 ブリングはガンデルフィーニの猛攻をものともせず逆に相手に傷を負わせた。

 相手が全員引いたのを見てこちらも全員引く。

 相手はなにやら耳打ちをしていた。すると、チェルシーとシグルトが戦線離脱した。

 私はブリングの様子を探った。

 ……どうやら見逃すようだ。

 ブリング、エンジはガンデルフィーニに、私とフェイはレクセックに向かった。

「よう、あんたら。俺たちの負けだ」

 レクセックは降参するように手を挙げた。

「だけどよ、悪あがきはさせてもらうぜ!」

 レクセックが突進する。私とフェイが斬撃を入れるも防御を捨てて全身全霊を込めてフェイの顎を打ち抜いた。

「フェイ!」

 フェイは吹っ飛んだ先で動かなくなった。私は死んでないことを祈りつつレクセックにとどめをさした。

 私はブリングたちに合流し、拮抗していたバランスが崩れついにガンデルフィーニを倒す。

 私はそれを確認するとすぐにフェイの元へ走っていった。

 ……良かった。ただ気絶してるだけだ。

 その間にエンジは倒した4人の首を刎ね、事変の終結の証拠にすると言った。

 ここに4月末から始まった事変が終息を迎えたのだった。




3、終息へ


 5月7日。

 ブリングはアングリアでガンデルフィーニ一行を倒したことを宣言した。

 噂は瞬く間に広がり、各地で喜びの声が上がった。

 私とフェイはリースの治癒のおかげで問題なく動けるようになった。

 エンジもだらけているが実際体調はもう万全だろう。

 初の大仕事を無事にこなした私たちは束の間の休息を楽しむのだった。



本当は続きがまだまだあるのですが、諸事情によりここで終わらせます。詳しくはお知らせをお読みください。

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