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ガンデルフィーニ事変(中編)

1、友の死


 5月1日。

 襲撃を警戒していたイールから伝言が入る。

 セントビアの兵隊長ルエン、ナスティア領議会長のシェーゼと名乗る二人がやってきたことを。

 ディアーが応対に向かう。

「俺はディアー-フレッド。早速だが要件を聞こう」

「私はルエン-ラスティア。先日救援に来て頂いたアクア殿についてだ」

「僕はシェーゼ-エンドル。同じく救援に来て頂いたメバスター殿についてだ」

「……二人になにかあったのか?」

 ディアーが不安げに尋ねる。

 やってきた二人は互いを見合わせ、ルエンが話し出した。

「アクア殿は我が軍の壊滅を防ぎ、防衛において多大な貢献をした。しかし、敵の術に

 嵌まり名誉の戦死を遂げた」

「!!」

「メバスター殿も同様、我が領地の侵犯を防ぎ多大な貢献をした。しかし、敵の増援に

 より戦力が瓦解し命を落とした。名誉の戦死だと思っている」

「……」

 ディアーは思わず空を見上げた。

 二人はアクア、メバスターの亡骸を持ってきてディアーの前に差し出した。

「なんと言えば良いのか……。守ってもらっていたのに彼らを守ることができなかった。

 本当に申し訳ない」

 ルエンがディアーに謝る。

「いえ……。ここまで連れてきてくれてありがとう……ございます」

「では、以上で私たちの任務を終わります。フェイス領に多大なる感謝を!」

 ルエンに続きシェーゼも会釈をし、去って行った。

 彼らが見えなくなった頃。

 ディアーは押し殺した感情を表に出した。

「アクア……。メバスター……。なんで、死んじまったんだよ……。これで、五人衆で

 生きてるのは俺とスキアだけじゃねえか……」

 悔し涙を流すディアー。

 そこに現れたのは、報告内容を聞きたいブリングだった。

「ディアー、なにがあった?」

「アクアとメバスターが、名誉の戦死を遂げた……」

「ほう。それは良かったじゃないか。最後に名誉を残すだなんて」

「……んだと? 人が死んだことのどこが良いんだよ!? こいつらともう二度と話す

 こともできないんだぞ!!」

「領のために全てを捧げそれをやり遂げたのだから良いことだろう」

「てめえ!!!!!!」

「ディアー!」

 私は様子を見に行った時にディアーがブリングを殴ろうとしていたので思わず叫んだ。

「!!」

 ディアーもすんでのところで手を止める。

「ちっ!」

 舌打ちをするディアー。そして、こう続けた。

「ブリング。てめえには愛想が尽きた。ハウトやフェイたちのためにこの領に残るが、

 てめえの指示は今後一切聞かねえ。出てけと言うなら教え子は全員連れて行くからな」

 ブリングとの決別を口にした。

 正確には決別とはちょっと違うのかもしれないが……。

「好きにしろ」

 ブリングも冷たく言い放つ。

 私は正直、ディアーさんを支持している。

 人が死んでいるのを喜んだブリングの感覚が分からなかった。




2、その人ら、行く宛なくて


 5月2日。

 フェイス領に来訪者がやってきた。

 ディアーはその姿を見て驚きを隠せなかった。

「スキア!」

 ディアーにとってかつて戦場をともに駆け抜けた友であり師匠でもあるスキアだ。

「ブリングに取り次いでほしい」

 スキアは要件だけを手短に言った。

 ディアーは昨日の件もあって顔をしかめたが、素直に従った。

「ブリング」

「なんだ?」

「てめえに客だ」

「そうか」

 ブリングが表に出る。

 私はディアーの様子が気になったので一緒についてきた。


「スキア!?」

「久しぶりだな、ブリング」

 ブリングは警戒を最大限にして対峙する。

「なんの用だ?」

「率直に言う。俺の後ろに控えている女性4人を引き取ってほしい」

 見ると、メイド服を来た3人と見慣れない衣装を着た女性が1人いた。

「断る」

 ブリングは即座に断ったが、これにディアーが反発する。

「良いじゃないか、仲間にすれば」

「貴様に決定権はない」

「あんだとこらぁ!?」

「ディアー、また乗せられてる」

「……ちっ」

 ディアーが舌打ちする。

 すると、スキアが突然土下座をした。

「頼む! 俺では彼女たちを守ることができないんだ! こんなこと頼むのは、ブリング。

 お前しかいないんだ!」

 スキアは必死に懇願した。

 一体彼になにがあったのかは私には分からない。

 でも……。

「ブリングさん、引き取ってあげましょう。きっと、彼女たちも私と同じで行き場が

 ないんだと思うんです」

「……」

 スキアはなおも頭を下げる。

「……分かったよ。あのスキアがここまでしたんだからな」

「恩に着る」

 スキアは体を上げ、4人の女性に向かって言葉を発する。

「お前たちの新しく住む場所はここだ」

 女性の一人、青髪を腰まで届かせている人が当然の疑問を口にする。

「スキア様はご一緒ではないので?」

「俺はここにいるには罪を重ねすぎた」

「左様で」

「なら、深くは追求しないよ。またいつか会える日まで」

 メイド服の中で黄色の髪の背の小さい子がそう言った。

「ありがとう」

 スキアは彼女たちの思いを聞き満足そうにお礼を言うと、どこかへ去って行った。


 スキアが見えなくなった頃、赤髪のメイド服の女の子が、

「炊事は私たちに任せるっす。みんな得意っす」

 と言ったので、ブリングは彼女たちに炊事場を任せるのだった。



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