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少し変わった鍛錬風景

リースがいなくなった代わりに今まで門番で目立たなかったイールが鍛錬に参加します。だからといってこれから活躍する頻度が増えるかどうかで言えば微妙ですが……。

1、走り込み


 リースが元気を取り戻してから初の鍛錬。

 イールが加わって初の鍛錬でもある。

「今日はイール、お前が先頭を走れ」

「はい」

 ディアーからの指示に頷くイール。

 イールは健康的な肌色、目は深緑のつり目でやや細長い。口は少し不機嫌気味。耳は人間と比べて2cmほどとがっているが一見すると気が付かない。

 ほんのり白みがかった赤色の髪を両耳と頭の天辺の間で縛っている。ピッグテール。一度髪の毛を下ろしているところを見たことがあるが、その時は肩にかかるくらいだった。

 身長は私たちより高く、引き締まった筋肉が美しい。スポーツマンにいそうなスタイルが良い筋肉美を持つ。だがマッチョというわけではない。

 胸は小ぶりだが膨らみはある。AカップとBカップの中間ぐらいだろうか。

 服装は上下紺色の拳法着。靴は黒のスリッポン。髪を縛っているゴムはヒマワリの花をあしらった品。

「イール、大丈夫?」

 ガーラがいきなり先頭を任されたイールの身を案じる。

「ん」

 それを短い返事で大丈夫と返すイール。

 そして浜辺までの走り込みが始まった。


 イールはかなりハイペースだった。

 私やフェイは以前鍛えていたおかげもありついて行くことが出来たが、他のメンバーは置いてけぼりを食らっていた。

「飛ばしすぎてバテるなよ?」

 ディアーがイールに注意したのも過去の話、ペースを下げるどころか更に上げているような気さえする。

 ディアーは他のメンバーに付き従うためにあえて後ろ組のペースに合わせているようだ。

「イール、ちょっと早すぎない?」

 私は我慢できずにイールに尋ねる。

「これくらい普通」

「普通だったら他の奴が置いてけぼりにならんぞ?」

 フェイもたまらず返す。

「……待った方が良い?」

「んー、ディアーのことだから先にたどり着いた方が楽だと思う」

「ん」

 短く返事をしたイールは更にペースを上げた。




2、反復走


「イール、お前体力すごいな。普段から鍛えてたのか?」

 ディアーが合流するなりイールを褒める。

「ん」

 この、ん、てのはイールの言葉数の少なさを表しているのだろうか、彼女はよく使う。

「じゃあ次は反復走だ。まずはイール。お前が走れ」

「はい」

 そう返事をして反復走を始める。


 10往復ぐらいしたところで、全く息切れしていないのを見てディアーが動いた。

「もう少し速くしてみろ」

 それを聞いて私たちの全力疾走には及ばないがかなりの速さで反復走を行うイール。

 これにはみんな驚きだ。

 そして最も驚いたのが、そのまま50往復終わらせディアーから終了を告げられると、速さを徐々に抑えながら更に1往復した。その間息を切らすこともなく。

「イール。最後なんでもう一周走ったんだ?」

「……その方が楽」

「へえ、そういうもんなんかい。かといって他の奴に取り入れると文句が出そうだな……。 しかし、さっきの走り込みといいすごい体力だな。驚いたぞ」

「ん」

 この反復走でもイールの体力の高さを感じた鍛錬メンバーだった。




3、素振り、乱取り


「イール、得意武器はなんだ?」

 みんなの反復走が終わり素振りに入る時にディアーが聞いた。

「……拳」

「徒手空拳か。武器の素振りをするんだが、なにか良い案はないか?」

「……それなら」

 そう言うと、イールはなにかの型に沿うような動きで拳打を繰り出した。

「これを繰り返すというのは?」

「ああ、それが良さそうだな。よし、素振り始め!」


 素振りが終わり、最後の乱取りの時間になる。

 イールはガーラと組むことになった。

 私たちは気の扱いの鍛錬に集中していたから後でディアーに聞いた話しか知らないが、乱取りは終始イールがガーラをおしていたそうな。

 その実力を見ていたディアーはとても感心したらしい。




4、弱点


「なあイール。そんだけ基礎が出来上がってるなら気の鍛錬を始められるんじゃないか?」

 ディアーはやや嬉しそうにイールに尋ねる。

 しかし、返ってきた言葉は意外な言葉だった。

「それは難しい」

「ん? なぜだ?」

「あたし、マナの総量がすごく低いし、扱うのも下手。気の鍛錬したらすぐ倒れちゃう」

 なんと、あれだけ基礎が出来上がっているのに、気の鍛錬が苦手だったのだ!

「あっはっはっは! そうか! まあ誰にでも得手不得手はあらぁな。ならイール。

 お前は徹底的に基礎を鍛え抜くんだ。それがいつかお前を助けることになる」

 ディアーは愉快そうに笑い、イールにそうアドバイスをした。

「ん」

 イールは短く頷くと、少し恥ずかしそうに目を伏せたのだった。



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