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悔恨(後編)

今回、ハウトの過去が明らかになります。

1、ハウトの過去


 私が物心つく頃には、すでに両親は妹贔屓で私は満足に食事もさせてもらえなかった。

 父はことあるごとに「失敗作だ!」と怒鳴りつけてきた。

 ある日、両親は私をスラム街に連れてきた。

 仕事で用があると嘘をついて。

 私が両親を見つけて帰ろうとした時、二人は私についてきたら殺すと言った。

 わけが分からなくて、ついて行こうとしたら父が私を気絶するくらいの強さで殴った。 その日、私は両親に捨てられた。

 目が覚めて両親がいないことで私は泣き叫んだ。

 そんな時だった。

 スラムにいつも食料を持ってきてる傭兵が一人いた。

 その人の名前はアレッシア。

 アレッシアは私が泣き叫んでるのを見て、必死に慰めてくれた。

 私はすがりついた。

 その時の心の支えはアレッシアしかいなかったから……。


 スラムではアレッシアが食料を持ってきてくれた。

 ただ、それだけだと足りないので子どもたちで近くの畑からこっそり食料を奪うこともあった。

 当然畑の持ち主には怒られるが、こっちも生きるために必死だった。

 スラムのみんなとは悪友だったがなんだかんだで仲良くやっていた。

 そんな環境で私は少し大きくなった。


 ある日、ナスティア自警団がスラム街にやってきた。

 そして、持っている剣で私たちを襲い始めた。

 みんな散り散りに逃げ惑った。

 私は袋小路に追い詰められてしまった。

 自警団の連中が私を仕留めようとしたその時。

 私は力を暴走させた。


 私が次に目が覚めた時、そこにはスラムで仲良くした人、襲いかかってきた自警団の連中が分別なく凍り付いてる姿だった。

 私は驚いた。戸惑った。そして、どうしたら良いか分からずまた泣き叫んだ。

 だって、付き合いが浅いとは言え仲良くしてた人を殺してしまったんだよ。

 頭の中はぐちゃぐちゃになってた。

 遅れてやってきたアレッシアは私を不憫に思ったのか、私を連れて海を渡った。

 これが、一回目の後悔。


 アレッシアとは鍛錬の毎日だった。

 戦闘技術から料理、簡単な武具の作り方など様々な事を学んだ。

 私にとって最も平穏だったと言える時間だった。


 ある日、セントビアの兵士と思われる一団がやってきた。

 私怨はないが命令だ、と剣を私たちに向けた。

 アレッシアは私を庇って負傷した。

 私はなにかしなくちゃいけないと思った。

 だから必死に叫んだ。

 そしたら、また力が暴走した。


 気が付くと、辺り一面氷漬けの世界。

 そして、私を守ってくれたアレッシアも、氷漬けになっていた。

 愕然とした。

 私はよりにもよってなぜ恩人であるアレッシアを……。

 私は、生きていてはいけないと思った。

 だから海に身を投じようとしたんだ。



 私は何度も涙を流して話を中断しながらもそこまで語り終えた。

「もしかして、その後助けてもらった後にこっちにやってきた、とか?」

「うん。だからあの頃は何もかもが色あせていたの」

「……ハウトも、辛いことがあったんだね」

「うん……」

「……ありがとう、話してくれて。とりあえず、ハウトも部屋に戻って落ち着こう」

「うん」

 リースの様子を見ようとしたけど、今の私は思い出したくない過去に囚われていてとても正常に判断できるとは思えなかったので、素直にリースの言葉に従った。




2、完全にとはいかないまでも


 翌日。

 私は昨日のことを引きずることなく目覚め、大広間に行く。

 すると、

「リース!?」

リースが、部屋の外に出ているではないか!

 どうやらディアーとなにか話をしているらしいので耳を傾ける。

「そうか。これ以上強くなる気はない、と」

「はい。私の目的だった復讐は果たしました。最悪の結果になってしまったけど……。

 これからは治癒士として研鑽を積もうと思います」

「しかし、5人だと少し面倒になりそうだな。お前と組んでたガーラの相手がいなくなる」

「それならイールをメンバーに加えてみてはどうですか?」

「イールか。実力的にはちょうど良い感じか。ちょっと話を振ってみるか」

 ディアーが門の方に向かっていった。

 リースは私に気が付くとこちらに近づいてきた。

「おはよう、ハウト」

「おはよう。良かった。ついに部屋から出られるようになったんだね」

「まだ、本調子とは言えないけどね。でもハウトの話を聞いて、いつまでもうじうじして

 いられないな、と思ったの」

 少しはにかみながらそう言うリース。

「そっか。それなら話をして良かったかな」

 リースが元気になって本当に嬉しかった。

 これなら後は時間が解決してくれるだろう。




3、最後の墓参り


「レイス、リースが元気を取り戻したよ」

 私は日課にしていた墓参りでリースのことを報告していた。

「私の過去が役に立って、なにが役に立つか分からないね。リース、これからは前を

 向いて進んでいく、て決めたみたい」

 リースのこともあり、私はある決意をしていた。

「レイス、これから私も前を向いて歩いて行こうと思う。だから、後ろめたい墓参りは

 これでおしまい。そこから私を見守ってくれると嬉しいな」

 そう。墓参りをこれで最後にして未来を見据えて行動しよう、と。

「さてと、じゃあ、お姉ちゃん、ちょっと頑張ってくるね!」



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