ハウトの恋心(前編)
1、始めはからかいから
「はっ!」
「ふっ!」
今日も私はいつも通りフェイと鍛錬を行う。
それが終わって帰り道をみんなで歩いていた時だった。
「ねえハウトー。あんたフェイと付き合ってるの?」
「そうそう私もそう思ってたのよね。どうなのよ?」
「ふえ!?」
エンジと卯月が突然そのようなことを言ってきたのだ。
「付き合ってるわけないでしょ!」
「必死に否定するところがなお怪しいー」
「だね」
「もう、違うって言ってるでしょ!」
まったく、なんてことを言うんだ。フェイのことなんかなんとも思ってないし!
「やれやれ、女ってのはそういう話が好きなのか?」
フェイが呆れた様子でそう言った。
「言っとくけど、私は好きじゃないからね!」
「はいはい、わかってますよ」
「ぐぬぬ」
まったく、どいつもこいつも好き勝手言いやがって。
そこでふと会話に加わってないガーラさんとリースの方を見た。
ガーラさんは苦笑いを浮かべてるだけだったが、リースがもの凄い鬼のような形相でこっちを睨んでいる。怖っ!
「リ、リース?」
「はーい、なんですかー?」
「もしかして、怒ってる?」
「別にー、この前振られたのに仲良くされて怒ってるわけじゃないですー」
あー、そう思って怒ってるんだな、とみんな思っただろう。
と、これまで静観していたディアーが笑う。
「色恋沙汰は健康な証拠さ。まああれだ、刃傷沙汰に発展するのはカンベンな」
「私もそこまではしませんよー」
リースが答える。
やれやれ、今日はとんだ災難だった。私とフェイが付き合ってるなんて、そんなわけないじゃない。彼とは鍛錬のパートナーであるだけなんだから。でも明日も一緒に組んだらまたなにか言われるかもしれない。明日はエンジか卯月のどちらかと鍛錬しようかな。
2、確実に意識してる
「卯月、今日は一緒に組みましょう」
私は今日の鍛錬をいつものフェイとではなく卯月と組むことにした。
「いいの? 愛しのフェイ君と組まなくて」
「誰が愛しのフェイ君だ!? 良いのよ、たまには気分転換したかったし」
「そう、ならいいわ」
と言うわけで、卯月と組んだは良いものの。
「おいハウト、今の踏み込み甘いぞ」
「おいハウト、よそ見をするな、大きな隙になる」
「おいハウト……」
このようにフェイはちゃんと鍛錬出来てるか気になって非常に精細を欠いた内容になってしまった。もう、私はフェイのことなんか……なんか……。
3、恋の相談
鍛錬が終わってからずっと頭の中がモヤモヤする。
フェイのことが気になって仕方がない。
なぜ、と言われても自分でもよく分からない。ただただ、フェイのことが気になる。
「ハウト、今日の練習は随分ミスが多かったぞ。やはりフェイと組まないと勝手が
違うか?」
「あ……すみません」
ディアーの指摘はもっともだった。どうやら私はフェイとじゃないと鍛錬をするのもままならないらしい。
だからこそ、確認したいことがある。
「……あの!」
「ん、どうした?」
「後で相談に乗ってもらってもいいですか?」
「ああ、いいぜ」
「ありがとうございます」
とりあえず相談の予約はできた。後は話して解決してくれればいいけど。
夕食後、ディアーが私を外の広場に連れていった。
「んで、相談ってなんだ?」
「えーと、その……」
「もしかして今日のこと気にしてんのか?」
「え、あ、はい」
「俺としてはいろんな奴と組める方がメリットが大きいと思ってるが、相性ってのも
あるからあんま気にすんな」
「はい、あ、えと、そうじゃなくて……」
「ん? 違うのか?」
もう、煮え切らない返事ばかりしないで、ちゃんと言わなきゃ!
「私、フェイのこと、す……す……好き、かもしれないです」
「ぶふっ!?」
ディアーが盛大に吹き出す。
「おま、それ、マジか?」
「いやその本当かどうかは分からないんです、ただ彼のことが気になって練習に身が
入らなかったり彼のことを考えると頭がモヤモヤしたりするだけで」
「あー、なかなか重症だなそりゃ。ただ、先に一つ言っておく。俺は間違いなくその
質問に対するちゃんとした答えは出せねえ。俺自身恋愛とかからっきしだからな」
「そう、ですか」
「リンカあたりならちゃんと相談に乗ってくれると思うぞ。なにせ結婚してんだからな」
「なるほど」
「すまんな、ちゃんと相談に乗ってやれなくて」
「いえ、ありがとうございます。早速リンカさんに聞いてみます」
私はそう言うとリンカの元へ向かうのだった。
実はこのからかいから始まった恋、実体験です。作者はその恋は実りませんでしたが、果たしてハウトは実るのか!? 後編をお楽しみください!




