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リースの恋心

1、一緒に行こう!


「おーいハウトー」

 フェイが私を呼んでいる。どうやらリースも一緒のようだ。

「どうしたの? 私、これから買い出しだけど」

「ハウト、私たちもついて行ってもいい?」

 リースが私に聞く。

「いいの?」

「うん、いいよ」

「俺も構わんぞ」

「助かる。荷物が多そうで持ってくれる人探そうか悩んでたんだ」

「じゃあ、早速行きましょ!」

 リースが急かすように言う。

「あ、ちょっと待って。一応ブリングに報告しようと思ってる」

「そうだな、その方が心配する人が減るだろう」

「じゃあ、ちょっと行ってくるね」

 私はブリングに二人が一緒に行くことを伝えに彼のところへ行った。




2、手をつなごう!


 買い出しの場所は、アングリアの市場だ。

 アングリア領。今は時空管理局が領全体の管理をしている。元は職人や商人たちがギルドのような形で開いた領と言われていて、ラスティア全土にいろいろな物を販売している。また、職人の長、つまり領主やその側近がとんでもない実力者らしく、金さえあれば最高の治安が手に入るとも言われている。時空管理局がやってきてさらに盤石になったとか。 私たちはその市場で必要な物を揃えるためうろついていた。

 すると、

「フェーイ! エヘヘヘヘ」

リースがフェイの腕を掴んで自分の腕を絡めた。いわゆる腕組み状態だ。

「お、おいおい、リース。人前だぞ」

「いーの」

 その様子を見てた私はなぜかリースに対して軽い嫌悪感を抱いた。

 私はすぐにその嫌悪感を振り払い、

「まったく、リースは」

と呆れてみせた。




3、荷物多くない?


 一通り買い物を終えると、フェイに大量の荷物、私とリースも人並み以上に荷物を抱える羽目になった。おいブリング、これ一人で行かせる量じゃないだろ!? フェイとリースがいなかったらどうなっていたか……。

「ちぇっ、これじゃ腕組めないじゃないの」

 リースはフェイとスキンシップを取れず不満げだ。

「なんか、鞄一つでこの荷物全部入っちゃうような素敵グッズできないかな?」

 私が何気なく言った言葉に反応を示したのは商人の一人だった。

「そ、それだ! それを開発すれば間違いなく大ヒットするぞ! 早速クレさんの

 ところに相談しよう!」

 商人は興奮した様子で店じまいの準備をしだした。

「ハウト、もしかしたらこの状態がいつか改善されるかもな」

「だったらいいわね」

 後に拡張鞄と名付けられた、魔力で空間拡張された大容量の鞄が発売されるが、それはまた別の話。




4、帰り道


 アングリア領内。私はちょっと気になったことをリースに聞いてみる。

「ねえリース」

「なに?」

「リースってさ、フェイのこと、好きなの?」

 途端にリースの顔が真っ赤に染まる。

 ああ、これは言われなくてもほぼ確定ですな。

 そして、リースはフェイの方を向いた。

「フェイ。あの……ね……。私、フェイのことが……」

 そこまで言ったところで訪れる沈黙。

 そして、

「フェイのことが、好きです! 大好きです!」

 おお、言い切った!

 リースを心で褒め称えながらフェイの方を見る。

 すると、フェイは今までみせたことがない切なそうな表情を浮かべていた。

「リース……。少し、昔話をしようか」

 フェイはそう言い、自分の過去を語り出した。




5、フェイの過去


 俺には、昔、母と妹がいたんだ。父は妹が生まれてすぐに事故で亡くなったらしい。

 あれは、確か8歳頃だったろうか。俺たちの住む村に突如として魔物の群れがやってきたんだ。母は俺と妹を庇って命を落とし、妹は泣き叫ぶ俺を守るようにして亡くなった。俺は魔物に嘲笑われながら無様に生かされた。

 情けなかったよ。だって、本来家族を守らなきゃいけない俺が母や妹に守られて、なのに自分は泣くことしかできなくて。だから、強くならなくちゃと幼いながら傭兵を始めたんだ。

 大人たちも遊び半分で俺に稽古を教えてくれた。そのおかげでブリングが俺に目をつけてくれたみたいで、今フェイス領にいるんだ。

 リースの気持ちは嬉しい。だけど、俺にとってリースは、亡くなった妹のように思ってるんだ。だから、リースの気持ちに応えることはできない。




6、過去を知り……


「そう……なんだ……」

 リースはうつむき、なんとかそれだけ絞り出した。

 涙が出るのを必死に堪えるように。

 私はフェイがなぜ強くなろうとしてたのかを知り、協力したり助け合いたいと思った。

「……帰ろうか」

 フェイがそう切り出す。

「そうね」

 こうして、リースの初めての告白は淡く散ったのだった。




EX、リースの気持ち


 フェイの過去の話と私への返事を聞いてから、みんなの前ではずっと泣かずにいた。

 泣いたら、フェイや一緒にいたハウトにも迷惑をかけてしまうから。

 部屋に帰った私は、再びフェイの言葉を思い出していた。

「俺にとってリースは、亡くなった妹のように思ってる、か」

 大切な家族の一員になれたのは良いことだ。でも、それ以上にはなれない。

 私は、彼の妹以上の存在になれない。

 そう考えると、胸が苦しくて。

 痛くて。

 切なくて。

 自然と涙が溢れてくる。

 結局その日は満足に寝ることもできずにずっと泣き続けた。



今回の話、フェイ君はリースを妹のように思っている、とありますが、正直なところフェイ君が年下はストライクゾーンから完全に外れているのが原因です。でもそれを言うと可哀想かなと思ったフェイ君なりの心遣いだったりします。フェイ君はストライクゾーンが狭く、年上も3歳ぐらい離れてるとストライクゾーンから外れてしまいます。あれ、将来あの子と結婚するからこいついつ妥協したんだ?

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