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虹彩異色の碧剣士  作者: 松本 ぽこ
驚愕と怒涛の王都編
9/13

8 何も出来なかった自分を捨てて、大切な人を守ると決めたから

「何が……起こって……」


本棚に突っ込んだ僕は頭が混乱していた。

アシモの言葉と共に吹き飛ばされていた。

衝撃で傍らに魔法の本を落とす。


「おい!お前らぁこの図書館にいるヤツ全員を拘束しろぉ!」


アシモの一声で闇に紛れていた団員達が一斉に飛び出す。


「やっぱり俺の言う通りじゃねぇか!」

「あんたがフラグ立てたんじゃないの?!」

「そーだ!」

「あのっ今はそんな状況じゃ…」


咲希の説得は見る影もなく、あっさり散った。


「「「「鎖は敵の自由を奪い、締め付ける、一種の拷問なり」」」」


団員達が詠唱を唱える。


「「「「拘束(バインド)」」」」


雄仁を除く、図書館にいた全員は拘束によってその場に伏してしまった。


「雄仁君……」

「やぁあんたも偽物神の使徒だろぉ?」

「そ、それは……」


団員の一人の男が咲希の髪を強引に掴み、殴る。

咲希は右頬を青紫に染める

痛みを少しでも軽減させようと、奥歯を力強く噛む。

男は咲希を地に叩きつけると足で顔を地面に押し付ける。


「偽モンよぉ、仲間が苦しもがいて死ぬ瞬間をここで見てろよぉ」


そう言われた咲希は雄仁を見た。


「ゆう……じくん」


咲希の視界に写ったのはアシモが倒れている雄仁に歩み寄る姿だった。


「おい偽モン、こんくらいで死ぬなよ?」


アシモが一言呟くと右蹴りを倒れ込んでいた僕に振り回した。

腹部を強打され、図書館の端まで吹き飛ばされる。


「あがァ」


血反吐をぶちまけて、眼下が赤く染まるのを確認しながら前方を見やると


「何処に……へぶっ!」


消えたアシモが上から右手を振り下ろし顔面に殴ってきた。

頬が青紫色に膨らむ。

唇が切れて血が垂れる。

この光景を見た咲希は思わず、雄仁君!と叫んだが、男に背中を強く踏まれ、絶叫を上げる。

すると、拘束された一人の男が口走る。


「そろそろ始まるぞ……恐怖の骨折りタイムが……」

「骨折り!まさかさっき誰かが言ってた……」


そうアシモは相手が骨を折られ苦しみ悶える姿を見るのが至福の時なのだ。


「ぐぅあ、がハッ」


僕は痛みに悲鳴を上げることも出来ず、腹部に手を添えている。


「もうへばっちまったかぁ!」


眼下の僕の腹部に蹴りを猛烈に叩き込む。

声にならない声が出て、裂けた皮から血がたれ流れる。

アシモは時に唾を僕の顔面に吐いて蹴った。


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い


僕は意識が飛びそうだった。

いっそのこと飛べばいいのに。

だが、その度にアイスピックで足を刺され、突き刺さる痛みが意識を戻す。


「さぁて痛いのはこれからだぞぉ」

「うっグフぅ」

「鎖は敵の自由を奪い、締め付ける、一種の拷問なり。拘束(バインド)!」

「あ、あがァ」


本棚に大の字で拘束させるアシモは不敵な笑みを浮かべ断言する。


「さァァて!骨折りぃぃぃたぁ〜いむ!」

「雄仁君!!」

「黙れ偽モン!」

「アアァ」


咲希の悲鳴を耳に感じて、僕はふとアシモの顔を見やる。

アシモはゴミを見るような目で僕を見下ろしていた。


「今からお前に意識覚醒の魔法薬を飲ませる。これはな、普通は眠気覚ましに使うやつだが、今使っちゃう」


強引に魔法薬を飲ませられ口から液体が零れる。

アシモの狙いは僕の苦しみ悶える姿だ。

骨を折られる際に絶大な痛みを伴う為、すぐに意識が飛ぶ。

それを防ぐための魔法薬なのだ。

僕は魔法薬を飲まされたせいで、意識を飛ばすことが出来なくなり、今から絶大な痛みを味わいながら耐え忍ぶ時間になる。

アシモは手を僕の右手の人差し指の第二関節に触れると……逆方向に折った。


「ああああああ!!」

「スタァート!」


痛みが脳に届いて、目が上を向きそうになる。

悲痛な必死な形相になっている僕はさぞかし醜く、醜態を晒している事だろう。

咲希は今どうしているのだろうか。


「中指」

バギィ

「ああああああ!!」

「薬指」

ぼぉギィ

「あがぁはァ!!」

「小指、親指ぃ」

ベキボキ

「んがァぁぁぁ!!」


右手の指はだらんと垂れ下がり、心臓が激しく脈打つ。

脳に多量の刺激が送り込まれ、地獄の時間を味わう。

目は朧気となり、口からは涎が垂れている。

あまりの痛みにストレスとなって返ってきて、何本か白髪になっている部分がある。

拘束は、苦しみ悶え、身を動かす度にきつく縛り上げる。

僕は悟る。


ーー僕に死ぬ以外の道は残されていないーー


そう思った時、目から光が走った気がした。


「どうしたよぉ?辛いかぁ辛いよぉなぁァうんんん!!いいぞぉその表情!!!さいこぉぉぉうぬーーふぅぅ」


苦しみ悶えた姿を見た時のアシモは変態の域を超えている。

アシモは、すかさず左手の指に手を伸ばし、関節に触れる。

また折られるのかと思ったが


「不意打ちぃぃ」


折られたのは右足の膝だった。

正確に言うと、砕け折られた、だ。

いかにも手で左指を折ろうとしていたアシモだったが、まさかの不意打ちで左蹴りを右膝に与え、砕けたのだ。


「ああああ!」


この状況下で正常な判断は出来ずに、段々と痛覚さえも失いつつある。

アシモがこの後も骨を折り続けていたが、その度に反応が見られなくなり、懐から新たに魔法薬を取り出す。


「痛覚回復薬!飲ませちゃうよん」


狂気に満ちた形相で薬を飲ませたアシモ。

すると、今までの痛みが倍となって僕を襲った。


「ああああああああああ!!」


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い


絶叫を上げる度に目が閃光を走るように光り出す。

それにアシモは気づいていない。


「いいぞぉその調子だァァ!」


再度苦しみ悶える姿を見られるアシモは雄叫びを上げていた。

その目の前で僕は


「もう弱い自分は嫌だ」


と、目を光らせた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



霧峰 雄仁。十六歳。高校一年生。

幼少期から虹彩異色症を患い、片方の目が違うオッドアイだった。

そんな僕に災難が振り落ちてきた。

そう、家族の死。

母親は過労で他界し、父親も事故死で他界した。

なので僕は親戚の家に預けられた。

しかし、そこでオッドアイの目をした僕を見て叔母さんがこう言った。


「気持ち悪い目ねぇ」


僕はその凍てつくような視線を今でも覚えている。

そんな僕だから、幼稚園、小学校、中学校共に友達はゼロ。

クラスメイトはいつも僕の目をディスった。


「何それ、気持ち悪い」

「中二病かよぉ」


僕は表では苦笑いで流していたが、裏ではどす黒い殺意を宿し、悪口を言う連中に密かに向けていた。

そんな感じで入学した高校でなんと友達が出来た。

西条 光樹。僕の唯一の親友。

光樹は僕の目をカッコイイと言って、俺もオッドアイになりてぇとか言っていた。

今までオッドアイのせいで酷い扱いを受けてきた僕にとってその一言は救済にも等しい一言だった。

他にもクラスメイトの野多目 咲希やその親友の成岡 七瀬も光樹と同じくオッドアイを悪く言わず、素敵な目だねと、言ってくれた。

亡くなったお母さんとお父さんに言われた以来だ。

オッドアイを蔑むような酷い悪口を叩かずに、褒めたりその目を受け入れてくれたり、普通に接してくれたりしてくれたのは。

いつしか光樹達と過ごす時間が増え、たとえ、悪口を誰かに言われたとしても以前のような、どす黒い殺意を向けることは無くなった。

僕はその時、無理やり信じ込んでいた。


悪口を言う奴らを憎まず、反撃しない僕自身を

“善人だ”と。

そうして無理やり殺意に満ちた僕を心の中に閉まった。

僕が笑えるようになったのは皆のお陰なんだよ。

光樹、野多目さん、成岡さん。


僕はとてもとても嬉しかったんだーーーーーーーーーー



ーーだけど、僕は初めて人生で殺意を向けられたよ。

目の前に人を弄んで楽しみ狂気じみた形相で殺そうとする男。

僕は長い時間殺意を向けられ、憔悴仕切った。


僕は心の奥底に閉じ込めたもう一人の僕と自問自答する。


「何で僕は殺意を向けられるんだ?」

「それは僕が弱いから。弱いと舐められるし、いたぶられるし、傷つくのはいつも弱い自分なんだよ」

「僕は殺意を向ける方じゃ無かったの?」

「僕は殺意を向けても行動を示さなかった。それは弱い故に何も出来なかったからだ。違うかい?」

「そうかもしれない。なら教えてくれよ。どうしたら僕は強くなれる?」

「そうだね……」

「僕が強ければ、相手が舐めた態度も出過ぎた真似も殺意を向けることすらも、出来るわけが無いと思うんだ」

「僕が強くなると言っても肉体的に強くなるには、それなりの鍛錬がいるからね。でも精神的に強くなるなら手はあるよ」

「ほんと?!」

「うん。一つの方法があるんだけどね。」

「聞かせてくれよ」

「それは“弱い自分を捨てる”事さ」

「弱い自分を捨てる……?」

「厳密に言うと過去の自分を捨て、新しい自分で生きていく。これを僕はやるんだ」

「新しい自分……」

「過去の弱かった自分を捨て、これから強くなる自分を作っていけばいい。どんなに殺意を向けられても屈せず、逆に殺意を向けてやったりするんだ。良心は忘れずにね。」

「うん」

「それに強くなるのは相手を見返す為に強くなるんじゃない。大切な人を守る為に強くなるんだ」

「大切な人を……守る」

「そう、僕に普通に接してくれた皆や異世界で出会った人。そして世界。僕には守りたいものが沢山あるだろ?」

「うん……ある…沢山!」

だからこれからの僕は大切な人を守る為に強くなっていく僕なんだ。」

「分かったよ、もう一人の僕。僕は決めた」

「そうだ」


「「大切な人を守るとーー」」


殺意を向ける事しか出来ずに、何も出来なかった弱い自分を捨て、新しい自分となって生きていく。

相手が屈強なら僕だって屈強になってやる。

精神的に肉体的に僕は強くなるんだ。

僕はただ守りたいだけなんだ。それを守るために強くなる。強くなって初めて僕は守る事が叶う。


オッドアイの両目に閃光が走る。


「僕は救うと決めたじゃないか」


この世界を。


「大切な人を守りたい」


咲希や離れ離れになった光樹と七瀬、そしてレレにワグナー王を。


「あの時の時間を取り戻したい」


僕が笑顔でまた笑えるような、あの一時をもう一度。




僕は目の前にいるアシモに伝える。


「僕は死なない。なぜなら大切な人達を守りたいから」

「何抜かしてやがるんだ?」

「だから、お前みたいな悪人は消す。全てを守り抜く為に!」



オッドアイの両目が光ると同時に拘束が解け、僕は思いっきり振りかぶった右腕で右ストレートをアシモの顔面にぶちかました。



次回は雄仁の戦闘シーンですよ!

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