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虹彩異色の碧剣士  作者: 松本 ぽこ
驚愕と怒涛の王都編
3/13

2 神の使徒

外へ出た僕と咲希は、目の当たりにした異世界の光景に驚愕し、思わず声を漏らす。

中世ヨーロッパ風の家屋が横にズラーッと並んでいて、その町並みを見て、フランスにいるみたいに錯覚するが、ここは異世界だ。


「やっぱりここって…異世界なんだね」

「うん。一度来てみたいって思っていたけど、まさかホントに来れるとはね!」

「なんか嬉しそう……?」


僕はアニメ好きだ。オタクとまでは言わないが暇さえあればアニメを見ていた。

咲希はこのことを知らない。

そんな僕がよく見てたのは異世界ファンタジーアニメだ。

いつの日か自分もチート能力で異世界を救いたい!とか思っていた時期もあったなと少し恥ずかしい気持ちになる。

異世界に本当に来れた事で自分にはチート能力が宿ったんじゃないか?!と少し期待しておく。

そんなことを思っていると一人の男が話しかけてきた。


「アンタ達……空から降ってきたが大丈夫か?」


何を言ってるんだこの人は、と当然ながら思う。

急に話しかけられたと思ったら空から降ってきたとか抜かしてくる。

僕は男の話をスルーして異世界人と話をした!誰にも体験出来ないようなことをしたんだ!…などとガッツポーズを決める。

咲希がジト目で見ているのを知らずに。

すると一人の男が


「ま、まさか神の使いじゃないのか!」


と、抜かしてきた。それに続くように


「そ、それは有り得る!何せ空から降ってきたんだもんな!」

「男性の方の使徒は目がオッドアイだぞ!珍しいぞ!」

「神様が魔人と魔獣を殲滅する為に地上に送ったのがこの二人なのだよ、きっと!」

「「「崇めなければ!『神の使徒』を!」」」


と、最後には男達の息ぴったりな言動に驚きつつも、崇拝までされて戸惑う僕と咲希。

要するに、男達は僕達が魔人と魔獣から世界を救ってくれる神の使徒と勘違いしているようだ。

魔人と魔獣……何だかやばそうなのでスルーしとく。

異世界でもオッドアイは珍しい様だ。

つくづく自分が孤独なのだと感じる。

それにしても空から降ってきた……か。

僕は家内に出来た天井の穴と床の穴を思い出し、合点がいく。

要するに、召喚後に何故か異世界の上空にいて、そのままあの家に落下したという事なのだろう。

その時に出来た穴なのだと改めて思う。

上空から落ちたのに平気な面で立ってられるのは、魔法の残粒子が擦り傷程度で済むように起動したという事だろうか?と勝手に解釈した。


「あの、すみませんけど僕達、神の使徒ではありませんよ?」

「右に同じくです。」


僕と咲希はそう言い放ち、男達は困惑した顔つきでこちらを見た。


「そ、それは有り得ない!空からやって来て神の使徒ではないと言うならなんだと申すか!」

「日本人ですけど……」

「に、にほ、ニホンジンって何?」


知らなくて当然だ。

僕達の住む世界は彼らにとって異世界なのだ。

男はずっとニホンジンって何?と問いかけて来るが、面倒なので無視する。


「つまり、神の使徒ではないと?」

「そういう事です。」


一人の男がそう言うがやはり認めたくないのだろう、男達全員で、なわけないだろうに〜神の使徒様も冗談キツイですよ〜と完全に聞く耳を持たない。

僕はあれ?まだ勘違いしてるの?と唖然とする。

まあ、無理もない。

空から普通、人が降ってくるはずがないのだ。

神の使徒として崇めるのも頷けるかもしれない。

これでやっと魔人と魔獣に怯える生活もなくなるんだァ!と男達が思ったのも束の間、神の使徒がえ?違いますよ?ニホンジンですよ?と言うもんだから、そりゃ男達は冗談として受け流すだろう。


「しょうがない……」

「雄仁君どうするの?この人達絶対認めようとしないよ?」

「ならこっちが認めるしかないな」


男達は悪い人達ではないと思った。


「そうです。僕が神の使徒です!世界を魔人と魔獣から救うべく、やって来たのです!」

「ゆ、雄仁君!?」

「「「やはり、そうだったのですね!!!」」」


僕は決意したーーー

この世界では神の使徒として、世界を救うとーーー

その場しのぎの決断だったとしても、いつかはそういう自分になりたいと、そう思ったーーー


すると、男達を掻き分けて、ある一人の男が目の前にやって来た。


「お取り込み中、失礼致します。神の使徒様。私はラーセ王国第四十代王『ワグナー・アルティナ』に仕えさせて頂いております、近衛騎士のアルトと申します。どうかお見知りおきを。」


アルトと名乗った騎士は僕の前で左膝を地に付けて敬礼する。

ほのかに光る銀髪は前髪をキッチリと揃えてあり、清潔に保たれている。目の中は全てを見透かすような透明な色の目をしていた。

服装は黄色いラインの入った白コートにズボンだ。

近衛騎士は確か王直属の騎士だった気がする。

それにアルトは『ラーセ王国』と言ったことから、今僕達がいる国の名はラーセ王国と言うのだろう。

それに王直属の近衛騎士が僕達を神の使徒と言ったことから、ラーセ王国全域に神の使徒の事が行き届いてるのでは?と思った。

いずれはこの国に留まらず、世界に広まるだろうと予感する。


どうやらアルトは王の命令でここへ来たらしい。


「神の使徒様、ワグナー王が宮殿でお待ちです。話があるそうなので、宮殿までご同行願います。」


つまりは、王が神の使徒である僕達と話したいらしい。

咲希は、宮殿かぁ、凄い所なんだろうなぁ、見てみたいなぁと目を輝かせて凄く行きたそうにしていた。

元々僕も宮殿には行くつもりだった。

宮殿に行けば何かが待っていそうな気がしたからだ。

国民の前で世界を救うと言ったからには少しでもその言葉に貢献出来るように出来ることからやろうと決めた。


アルトは専用の馬車を呼び寄せ、荷台に乗り込むと、僕と咲希もエスコートしながら乗せた。

そのまま荷台から降り、馬に股をかけるアルトは


「いざ、宮殿へ!」


と一言言い放ち、鞭をしならせて馬に当てると馬はヒヒーンと鳴き、走り始めた。


その光景を荷台で見つめていた僕は、後ろで咲希に見つめられていた。


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