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EXTRA MISSION:神秘古代跡嶺を探索せよ!⑤

 ネオンの歌が進むにつれて、周囲が俄かに騒がしくなっていった。零弥が気配を手繰ってみると周囲には生き物ではない何かの気配がいくつも見える。

 前回ネオンが月晶竜の巣で歌った『精霊の子守唄』には、心を落ち着かせ、かつマナの活性化を促す効果があった。このように、神捧歌は神事としての意義以外に、魔法使いが歌うことによって特別な力が発揮する場合がある。

 そして、今回の『微睡みし大地の夢枕』には、眠っているものに活力を与えると共に、精霊や妖精などを引き寄せる力がある。

 零弥が感じた気配というのは、ネオンの歌を聴くために集まった精霊やそれ未満の者達によるもの。そして、それにはどうやら魔物も例外にはならなかったようで、魔物も集まっているようであった。

 キャンプの周りには、精霊達が輪を作るように集まるため、擬似的な結界ができている。さらに言えば、イリシアの灯した【陰陽炎】の相乗効果で弱い魔物は近づくことすらままならない。

 しかし、あくまで「弱い魔物」が近づくことが出来ないということ。逆に言えば、強い魔物は近づくことが出来てしまう。

 そして、気配の中に、一つだけ遠くにあるが大きな力が近づいてきていることに気づいた零弥は、おもむろに立ち上がった。


「伶和、ネオン、二人はここに。クロム、行くぞ。」

「行くってどこに…?」

「それはわからんが、まぁ、二人でならなんとかなるだろ。」

「やれやれまた荒事かよ。」

「待って、二人だけでは行かせられない。相手が何かもわからないんでしょう?

 それに、その魔物が動き出したのは私の歌の所為よ。私も行くわ。」

「お兄ちゃん、私も行くよ。」

「だめだ。二人にはここを守ってもらう。ネオンの歌のお陰で、ここは結界のようなものができている。イリスさんの炎があるとは言え、もしネオンがここを離れたら今寝ているみんなが襲われかねない。そして結界の起点であるネオンを守るのは伶和だ。」


 零弥の言葉は簡潔かつ強制力があった。伶和もネオンも返す言葉なく押し黙るもまだ何か言いたげであった。

 零弥は小さくため息をつくと、二つのモノを喚び出した。それは彼が作った魂属性魔法【精霊喚起】によって呼び出される、風の精霊シルフィンと、土の精霊ノーンである。


「ここに何かあったらノーンを通じて分かるし、こっちからの連絡はシルフィンに頼む。急がないと。地中で何か動いてる。」


 零弥の顔に焦りが浮かぶ。思ったより深刻な事態と悟った二人はこれ以上我儘は言えないと覚悟を決めた顔で頷いた。


「レミ、準備はいいぜ。」

「よし、行こう!」


 零弥とクロムは走り出す。進みながらクロムは零弥に尋ねる。道中の魔物は零弥の【地鋼棘】によって鎧袖一触で追い払われている。


「ところで、実際どこにそいつはいるんだ?」

「ノーンはこの山の中は自然の洞窟と人工的な地下遺跡で空洞だらけだと言っていた。そして今回の気配は自然の洞窟からだ。」

「それで、そこに行く方法は?」

「ここから調べる。」


 それはネオン達が水を汲んでいた滝である。滝は以前変わらずその割れ目から水を吐き出し続けていた。

 零弥は水を一掬い取ると、【精霊喚起】で水の精霊ウィンディを喚ぶ。


「ウィンディ、この水から何か感じるか?」

《とても濃いマナです。おそらく龍脈と繋がっているかと。それと、ほんの僅かにですが、血と淀んだ魔力が感じ取れます。》

「おそらくそれが探してる奴だな。俺の力を分け与える。この水脈を遡って目標を探してくれ。ノーンを通して俺に伝わる。」

《わかりました。》


 ウィンディに【魔視《magiascope》】の魔法を付与すると、彼女は勢いよく滝に飛び込み、流れを遡り割れ目の向こうへと消えた。

 零弥の感じている気配は未だに地中、おそらく水脈の中を動き回っている。ただし、そこに法則性は見えない。流れに乗って勢いよく進んだかと思えば、時折戻ったりするのだ。

 ウィンディに捜索を頼んでから幾ばくか経過した頃、ノーンから連絡が入る。ノーンのテレパシーは微弱なもので本来なら人間には聞こえないのであるが、零弥が直々にチャンネルを繋ぐことで零弥の魔力を通して念話が通るようになっている。


《ウィンディが目標を見つけたよ。》

《よし、どこから行ける?》

《うん…一番近いのは、井戸…かな?》

《井戸?もしかして、月狐族の集落か?》

《ううん、違うよ。人工物って感じじゃ無い。》

《わかった、とにかく案内を。》


 ノーンの案内によると、滝のある崖の上。そこから少し進んだところに目標への近道になる井戸があると言う。

 たどり着いたその場所の正体、それは今は枯れた間欠泉の跡であった。


「こんなでかい間欠泉がなんで枯れたんだ?」

「恐らく、下の滝が出来て水がそっちに逃げたからだろう。」


 下を覗き込むも、もはや深い深い闇としか言えなかった。


「でさ、まさかと思うが…」

「あぁ、そのまさかだ。」


 零弥はAcciaioAnimaを纏うと、躊躇うことなくその穴へと飛び込んでいった。


「うーわ、良くやるなぁ。さて、俺はどうやって降りようか…っと?」


 穴の中から鉄の棒が伸びて、穴の淵に鉤爪を引っ掛ける。間違いなく零弥の手によるものだ。これに捕まって降りてこいと言うことだろう。


「やれやれ、やっぱアイツにゃ敵わねえよ。」


 クロムは頭を掻きながらも、鉄の棒に捕まり、スルスルと穴を下っていくのであった。



 地の底に降り立ったクロムは周囲の環境を見渡す。視界は零弥の【思炎】によって確保されていた。

 そこはかつて間欠泉の水が溜まっていた場所だったのだろう。広い空間が出来上がっていて、空間は彼らのいる陸側と水流の流れる川側に二分されていた。地層のズレが起こっていることから、ここが断層であり、間欠泉は断層ができたことによ水脈の流れが変わり枯れたのだと予想できた。

 零弥の掌の上にはウィンディが佇んでいる。曰く、相手は水流に乗ってここに向かっている。ここから滝を突き破るか、この間欠泉を使って外に出るかするつもりだろうとのことだ。


「そうか、なら、ここが決戦場だな。」

「あぁ、ここなら狭すぎず広すぎない。足場も充分だな。」

「クロム、ここは奇跡的に通気がいいから今は問題ないが、それでも酸素不足の懸念はある。少しでも息苦しさを感じたらすぐに逃げるぞ。」

「でもそうしたら…」

「その時は外で決着をつける。多少地形に被害はあるが、それ以上の被害は出させないさ。」


 そうしているうちに、上流の方から、咆哮が聞こえてきた。乾いたような、空気の抜けるような声。


「ウィンディ、あとどれくらいで来る?」

《この速度ですと、30秒程度でしょうか。》

「そうか…。クロム、闇属性で水を偏らせることはできるか?」

「これだけ速い流れだと大したことはできないぞ?」

「少しでいい、水流を陸側に向けてほしい。」

「まぁ、できるだけやってみるが保証はしないぜ。」


 クロムは闇属性の球をいくつか作り出して水流に投げ込んだ。本来ならカーブに沿って外側に偏るべき流れが、闇属性の球の持つ引力によって引っ張られ、僅かにだが陸側に寄った。

 その間に零弥はナイフを地面に突き立て、詠唱すると、下流の方に地中の金属を抽出して作り出した網を張る。これにより水流は更に本来の流れから逸れてきていた。


「よし、クロム、合図をしたら水流の外側に魔法を打ち込んでくれ。」

「おう。」

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