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はじめての異世界人⑤

 リンは水盆の淵に手を当てる。すると水盆から、可視光とは違う不可思議な輝きが放たれ、水盆には、光を放ちながら沸騰する水の玉があった。


「私の魔力の属性は火・光・闇。だから、水が沸騰し、光を放った。そして闇属性の特性“集中”によって、水は中央に集まり球上になったんだな。」

「…『特性』?」

「あぁ、そういえば昨日はそこまで話してなかったか。

 特性というのはな、魔力によって起こされる、目に見える性質ではない、概念的な要素だ。例えば火属性の場合、炎が起きるという外見上の性質に合わせて、その魔力によって周りの物質が“滅却”されるという概念が存在する。

 一部の学説では、“滅却”された物質の持っていたエネルギーによって発火現象が起きているのでは無いかという『帰納的現象論』を提唱する者もいる。まぁ、あくまで仮説のようなものだから、一般的には一つの魔力が二つの性質を持っているという『平行性説』の方がが信じられている。」


 リンは長い箸を取ると、水球に箸を突っ込む。水球は割れることもなく、その形を維持したまま、沸騰していた。

 リンがその水球に手をかざすと、水を包んでいた光がリンの手に吸い込まれ、『ただの水』が水盆に落ちた。


「ずいぶんと話が逸れてしまったな。

 やり方はいま見たとおりだ、この水盆に手を触れずに魔力を浸透させてやるだけだ。さぁ、どっちからやる?」


 零弥と伶和はアイコンタクトで逡巡した結果、伶和がまず前に出た。

 伶和は目を瞑って手をぶらりと下げたまま掌だけ水盆にむける。伶和から柔らかな虹色の光が前方に広がり、水盆を包み込む。

 水が渦を巻き始めた。そして少しずつ光を発しながら沸騰を始める。そしてバチバチと音を立てながら電気をまとい始めた。渦は加速を続ける。しかしどうゆうわけか、遠心力で中央に水の穴が出来るはずが、むしろ水盆と水の間に隙間ができ、水そのものは中央に集まっていた。

 驚きを隠そうともしないリンは箸でその水に触れると、箸は少しだけ水を押したが、押し戻される。


「なんてことだ…まさか7属性全てを持ってるなんて。」

「珍しいんですか?」

「珍しいも何も、普通の魔法使いの使える属性は1つか2つ、4つでも多すぎるぐらいだ。それに基本7属性が全て使えた魔法使いはレナを除けば史上でも1人しかいない。

 多くの魔法を術式として体系化した世界最高の魔法使い、大賢者様だけだ。」


 リンの伶和を見る目は、期待と恐れのないまぜになったものだった。

 期待とは、2人目の大賢者の誕生に対して、そしてその兄である零弥にも同程度の才気があると思っているのだろう。

 そして恐れの正体は、零弥には簡単に想像がついた。強すぎる力、大きすぎる力はまるで引力を持つかのように争いやトラブルを引き寄せる。それが本人の意思によらずとも。

 しかしそれは伶和に罪はない。例えそれで伶和に責任が降りかかるようなら、たとえどれほど無理であろうとも、自分がその責を負うことも厭わない、零弥はそうゆう人間だった。


「リンさん、次やっていいですか?」

「ん?あぁ、そうだな。レナのことで驚いてしまったよ。とりあえず水を取り替えよう。」


 リンは器の中身を捨てる。捨てるといっても、魔力の残留している水を適当に流すわけにはいかないので、バケツに入れて暫く放っておくのだが、水を捨てた後、リンはある違和感を感じた。

 まず水盆が軽くなっていることに気づいた。金で出来たこの器はそれなりに重い。だから軽くなればわかる。そして器の縁をつまむと、底の方が薄くなっていることが分かった。そして、捨てた水の中に、金箔が浮いているのを見てリンは戦慄を覚えた。

 本来金は安定性が高く王水以外には溶けない、また魔力の影響をほとんど受けない物質として、対魔法具や魔法計測器などにはよく用いられる素材である。その金が溶けた。考えられるのは2つ。レナの魔力によって影響を受けた水が金を溶かしたか、金がレナの魔力に影響されて溶けたか。どちらにしても、レナの魔力は基本7属性だけではない。何かがある。

 リンはそれをレナに伝えるべきか一瞬迷った。だがすぐに、その思考を止めた。とりあえずまだ伝えなくても問題ない。ただでさえ7属性の魔力を使えるように教えることがあるのにこれ以上増やしても面倒なだけだと、リンは自分に言い聞かせた。

 そして振り返ると何事もなかったかのように机に水盆を戻し、水を注いだ。


「さぁ、レミ、お前の番だ、やってみろ。」


 零弥は水盆の前に立つと、水盆に手をかざす。魔力を水盆に注ぐように流す。

 魔力を流しながら零弥は考えていた。伶和の魔力と自分の魔力、いくら魔法能力に個人差はあると言っても、互いの魔力は似てなさすぎる、と。

 零弥は昨日リンに教わった魔力についての知識に疑問を覚えていた。


「魔力とは、人が魔法を使うために使用するエネルギーだ。それは目に見えないエネルギーで、物的性質は確認されていないが、意識的に凝縮した_高圧なとも言う_魔力の場合、魔法能力が高く魔法的感受性の育っている人には見えることがある。

 しかし、一貫して見ただけではその属性まではわからない。だから、自分の魔力適性や特性はきちんとした測定法で測る必要がある。」


 魔力は見ただけではその属性や特性はわからない。これはおそらくその違いがわからないという意味のはずだ。

 だが、零弥はそれを信じられなかった。そうでなければ、自分の頭がおかしいのではないのかという疑惑に支配されてしまいそうだったからだ。

 先程から零弥には、リンの放っていた明るいのに暗さを感じる月の光のような魔力や伶和から溢れる七色の魔力が綺麗なグラデーショントーンを描く魔力を、色として認識していた。そしてそれが測定結果と照らし合わせるとそれが魔力の属性によって変わっていることが分かった。

 これが誰にでもそう見えているなら簡単な話、その分類法を考えればいいだけだ。しかし、昨日の話からすると、それはない。だとしたら考えられるのは、これは零弥の特有の感覚で魔力の違いが視覚的にわかるか、もしくは零弥の頭がおかしくなってそう見えてるだけか。

 そして本題に入る。零弥は自分の身体から出てくる魔力の色を見る。その色は、銀色と薄青紫。伶和の持つどの魔力の色とも一致しない。

 ちなみに伶和の魔力の色は七色といったが正確には赤・青・緑・黄色・茶色・白・黒、おそらく順番に火・水・風・雷・土・光・闇なのだろう。ついでに言えばリンは赤・白・黒が混ざり合わないように一緒になって流れているような感じだった。

 銀色の魔力、属性イメージと色に関連性があればアレなのだろう。が、問題は紫。一体これは何の色なのか。零弥は不安に駆られる。最も、それを調べるための魔力測定なのだから、考えるよりも生むが易し。とっととやろうと零弥は思い直し、放出する魔力量を増やした。

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