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青春パレード②

「おーい学級長、板どこに置いとけば良い?」

「うーん、とりあえず教壇の前に置いといて。」

「学級長、工具類とりあえず5セット借りられた!」

「ありがとう!」

「学級長~…」


 テスト終了後その翌日から、学級長の呼びかけに集まったクラスメイト達(学級長、零弥達含め18名+レーネ)は半日授業の放課後はこぞって慌ただしそうに夏祭りに向けて準備していた。

 飲食は高等部以上の限定であるため却下。それ以外で学級長が提案したのは「迷路」か「展示」であった。そして多数決の結果迷路を作ることにしたのである。


「学級長、迷路の設計図作ったよ。単純な奴だけど、教室はそれなりに広さがあるし、スタンプラリー形式にすれば楽しめると思うよ。」


 零弥が担当したのは迷路の設計。1日目でそれが決まってから、零弥はクロムと共にほぼ徹夜で構想を練った。

 難し過ぎても簡単すぎても面白くならないのが迷路作りの難しさ。

 そこで零弥は、迷路を突破するだけであればそれなりに簡単に、そこにスタンプラリーの要素を組み込んで、スタンプラリーを完成させれば景品を手に入れられるというものにする事にした。

 設計図を読む学級長がふんふんと頷きながら目を動かす。難易度を確認した上で、零弥の提案を検討しているのだろう。


「うん…うん!いいんじゃないかな!それなら大きくしたり、複雑にしなくても面白くなりそう!」

「それと、景品はそれなりに豪華にしたいってクロムが。豪華な景品でなきゃ客が釣れないだろうし。」

「でも、豪華な景品だと数がそんなに用意できないよ。」

「そこは大丈夫。簡単にはクリアできないように俺とクロムで考えた秘策があるから。とりあえずはこの設計図通りに迷路を組み立ててほしいんだ。あと、1つ追加で用意してほしいものも。」

「…わかった。じゃあ私達はこの設計図に沿って迷路を作るね。その秘策って奴、楽しみにしてるよ。

おーい、みんなー!レミ君が設計図作ってくれたから確認しよう!」


 さて、ここから先はクラスメイト達みんなで壁となる立板を作っていく。迷路を作るので、かなりの数が必要となる。また、目印を作らないように全部同じ形に作る必要があるので、準備期間のほとんどの時間と人員は、この壁作りに注力する。また、直接参加するとは言わなかったクラスメイト達も、時間のある時は手伝ってくれるとのことだ。

 設計図を見ながら必要な資材の量を相談するクラスメイト達を見ながら、零弥は肩に風を感じて振り返ると、風の精霊のシルフィンが来ていた。


「材料は揃いそうかい?」

《うーん、クロムがまだ裏の店を探してるけど、ご主人の言うような金具はこの街じゃなかなか見つからないなぁ…》

「ふむ…仕方ないな。わかった、金具は俺が作る。本当はきちんとしたところで作られた物の方が安心して使えるが仕方ない。

 金具以外のものはあるんだよな。そしたら、釘を少し多めに買って戻ってきてほしいと伝えてくれ。」

《わかった!まかせろご主人!》


 シルフィンに言伝を任せ、零弥は夏祭りの準備に勤しんでいるであろう伶和の元へと足を向けた。



「・・・」


 零弥が宙に浮かぶ何かと話をした後、どこかへと歩いていく姿を少し離れたところで見ていた者がいる。彼は手元のメモ帳にペンを走らせた。そこに書かれているのは零弥のことであった。


『どんな細かいことでもいい。やつの弱点を探ってこい。』


 そう指示した彼の友人、スカンジルマは今、下手に感情を逆なですべきではない。収穫が無くとも、形だけでも従っているべきだと、零弥の行動を観察し、こうしてメモに残していた。

 零弥が向かう先についていこう。そう考え足を出したその時、


「あ、アクちんじゃん。何、勉強?テストはもう終わったでしょ?」


 急に呼び止められ、思わず身体をビクつかせてしまった。


「あ…フラン、君か。君こそ、どうしてここに?」

「僕?僕はレーネちゃんに会いに来たんだよぉ。」


 声をかけてきたのはフラン=エレク。かつて、スカンジルマが仲間に引き入れようとし、断られたものの、なぜか偶に会うといちいち自分に話しかけてくる物好きである。


「そういえば、この間のレミっちとの件でだいぶ搾られたと思うけど、アレとはまだ付き合ってるの?」

「…まぁ、うん。そりゃ、友達だし。」

「ふーん…。」


 フランは直接言わないが、アクィラがスカンジルマに付き合っていることによく思っていないことは当人も分かっていた。

 確かに、スカンジルマの性格があまり良いものではないのいうのはアクィラも知っている。正直、力で築き上げたスカンジルマのグループが周りに煙たがられていたのは承知の上だった。


「…ところで、レーネって?そんな女子うちにいたっけ?」

「あれ?知らないの?レミっちやネオンちゃんと一緒にいる女の子。」

「…あぁ、あの子が。レーネって言うんだ。」

「同じクラスにいたんだから知ってても良いのに。」

「元々友達いないし、あの件以来周りとの距離が開いちゃって。それに、本音はあんまりあいつらに関わりたくない。」

「そ、そっか…。レーネちゃんは本当可愛い子なんだよぉ~。もうボカァ一目惚れしちゃってね。でも、レミっちが駄目って。それでこの前決闘して、それでも負けちゃってさあ。」

「…なんで、そのレーネって子はレミと一緒にいるんだ?親でもないのに。」

「いや、なんか親代わり?みたいなものらしいよ。あの子、レミっちとネオンちゃんが拾ってきた子らしいし。実際、レーネちゃんもあの2人に懐いてるし、あの2人もレーネちゃんを可愛がってるよね。」

「・・・(使えるかな?)」


 アクィラはメモに今フランから聞いた情報を書き留めた。そして教室を覗くと成る程、忙しそうに作業を進めるクラスメイトの中を歩くネオンの後ろについて行くように、紫色の髪をツインテールにした幼女がいた。並んでいるせいか、先程のフランの話のせいか、何処となくネオンに似ている気がしてきた。


「ね、可愛いでしょ?」

「…うん、そうだね。まぁ、子供だし。」

「それじゃ、僕はレーネちゃんのとこに行ってくるから。じゃーね。」


 フランはそう告げると、教室に入っていき、レーネに話しかけに行った。

 アクィラは教室を後にし、スカンジルマの部屋に向かう。心の奥で少し違和感を覚えたが無視した。


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