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閑話休題って便利です。

どうやら俺を召喚したらしい人間達は、そこいらの奴と違って好奇心旺盛だ。俺が意思疎通できる存在だと理解してからはペチャクチャと話しかけてきやがる。

あーはいはいと受け流していると、さっき魔術書の紙の切れ端を食べた少女がにじり寄ってきた。


「んー、さっきはお腹空いててつい食べちゃいました。すいません。怒ってますよね~…」


そりゃあもうプンプンだっつうの。

布に皺をつくって怒りを表現すれば、少女は制服の裾をキュッと握り締めて、「すいませッ…」と喋りやがった。あ、かわいい。


「えと、あなたの名前、なんて言いますか?」


落ち込んで舌ったらずなところにハートをズキュンとしてやられた。ゴホンと間を置いて、辺りを確認しながら、念の為本名では無い別の方の名前を口にしようとすると、強面の男が俺を睨みつけた。人間界では珍しい黒と青の中間色に赤が混じった瞳。一種悪魔のそれとも見て取れる……まさか。

ハッとした表情で少女の目をじっくり観察する。男と同様、黒と青の中間色に、今度は黄色が混じる異様な色彩。

悪魔と契約した人間か。俺は舌打ちした。悪魔は魔界では人間の高級なワインと同じ存在の魂を得る為、人間界を出入りする収集家共がいる。地獄の貴族などと仰々しい異称のついた位で調子に乗りやがって。芽生えかけた苛立ちをそっと抑え、少女達に詳細を聞く前にまず現状を完璧に理解しなくては作戦の立てようがないと自分に言い聞かせ、比較的明るい抑揚のある声で返した。


「太郎、という…」


こいつら、特にあの強面の男の前では偽名を騙ったところで無駄な足掻きだろう、そう思い、素直に本名を名乗った。

すると少女はにこりと天使の様に微笑んだ。


「そうですか…私は佐藤です~」

「サトウ…?」


この文字の配列は「名字」のそれだろうが…やはり召喚された悪魔…まあ元だが…に迂闊に名乗らない心得を持っているのか、厄介だ。

強面の男は険しかった顔を幾ばくか綻ばせ、組んだ腕を体の両端につけ、ペコリと無愛想だが最低限の礼儀をわきまえた自己紹介をした。


「俺は…大友。先輩って佐藤からは呼ばれている、よろしく」


こっちも対策は万全のようだ。殺害するのはとりあえず諦めて、この状況の説明を求める。するとオオトモは頭をポリポリと掻いて、バツが悪そうに話し出した。


「最近噂になっていた魔法円を試したんだ。全身黄緑の女が出てくる魔術で…だから」

「先輩の趣味ってホント意味不明ですね」


呆れて目を細めるサトウ。

まあ大体状況は理解した。その魔術を試したら黄緑女ではなく俺が出てきたという訳か。俺と魔法円の距離が近かったからか?

とにかく、俺は一番気になっていた話題にチェンジした。関係ない話題は閑話休題だ。だらだらやっていると支離滅裂になる。


「……で、サトウとオオトモは、悪魔と契約しているのか?隠しても、無駄だぞ。瞳に証がある。…ああ、安心してくれ、危害を加えるつもりも無いし加えられないよ。俺は」


どちらも驚愕で目を見開く予想通りのリアクション。

俺は返答を気長に待つつもりだったが、元と言えど悪魔にその場限りの嘘は通じないと悟ったのか、ご丁寧にも悪魔本体を召喚した。

その悪魔に俺は唖然とした。サトウの肩に座るオウムのオレンジに光り輝く羽根は、「不死鳥」のそれだった。

そして更にオオトモが手の平に乗せたライオン頭で鎧を着た小さなぬいぐるみから発せられる邪気と神々しさは、あの有名で高名な柱のひとつ、腐食と回復の「サブナック」のものだった。

遅くなってしゃーせんしたー。

進んでないねー。

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