一章 すべては過去から (六)
「スコップはどうするんだ?」
「それだったら、陸上部の幅跳びをする砂場にある」
「勝手に取ってきていいのか?」
「いいだろ」
峰浜は戸惑わず言った。雲石は多少の罪悪感を持つ。
二人はスコップを手に持ち、運動場の真ん中に行き、穴を掘り始めた。
「腰が痛い」
峰浜がいきなり腰を押さえた。
穴は十五センチメートルぐらいしか掘れていない。
「掘り始めてから、そんなに時間経ってないぞ」
「竹を運ぶのに、力を使いすぎた」
「それだったら、竹を埋めないで帰るか?」
「それだけはできない! ここまで来てやめるなんて、神が天罰を下す!」
「運動場の真ん中に竹を埋めようとするほうが、よっぽど天罰が下るだろう」
「ここまで努力して、天罰が下るなんてありえない!」
「それだったら、努力した罪人には、天罰は下らないのか?」
「それは、話が違う」
「同じようなものだと思うが」
「それより、早く穴を掘ろう!」
峰浜が話をそらした時、雲石は少しだけ言い合いで勝てたと感じる。いつもなら、峰浜の勢いに負けてしまうからだ。しかし、後々考えてみると、天罰とはこんなことで下るのだろうかとも感じる。
「気合いだ!」
「だるい」
「気合いだ!」
「だるい」
掘り始めて三十分が経つ頃、峰浜は腰の痛いみがなくなったかのように元気になり、雲石はかなり疲れていた。
「こんなもんでよくないか?」
「まだまだ!」
二人は一メートル手前くらいの穴を掘っていた。
「もう腕が動かないのだが」
「気合いだ!」
こんな事を言っていると、二人の前に人影が現れた。
「あれは、誰だ?」
「先生はいないはずだが……」
「それだったら、本当に誰だ?」
このとき、時間は九時を回っていた。
人影はどんどん近付いてくる。
「どうする?」
「どうする?」
二人が悩んでいる間に、人影ははっきりと見えるようになる。二人の前に現れたのは、一人の少女だった。その少女については、二人とも何も知らない。




