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一章 すべては過去から (二)

 峰浜と雲石が中学二年生の頃のことだ。二人は川鳴公民館にいた。川鳴は二人が住んでいる地名である。


「そろそろ七夕だ」


「そうだな、もうそんな時期になるか」


 峰浜が何気なく言った言葉に、雲石はいつものようにのんびりと答えた。


「そこでだ! 面白いことを思いついた」


「そうか、俺は参加しないぞ」


 雲石は、峰浜がどうせ馬鹿なことをするのだろうと思っていた。


「なんでそんなことを言うんだ、話だけでも聞いてくれ」


「そうだな、話だけなら聞こう」


 このセリフの後、峰浜は目を輝かして話を始めた。


「七月六日の夜、運動場の真ん中に竹を立てようと思う!」


「竹なんて、どうやって立てるんだ?」


「大きな穴を掘って、竹の根本を埋めて、立てる」


 聞いてあきれるような話に、質問をしてしまった雲石は、己に哀しみを持つ。


「俺は無理だ、他を当たってくれ」


 逃げるように言うと、峰浜は泣きそうな顔になる。


「そんな、俺にはお前しかいないんだ。頼む、一緒にやってくれ」


「泣くように言っても、無駄だぞ」


「そこを何とか」


 こんな感じで、峰浜がずっと頼んでいると、雲石も覚悟を決めた。


「仕方ない、手伝ってやるよ」


「おお、やってくれるか、持つものは友だな」


「俺はお前を、友として認めたくない」


「ははは、冗談を」


 雲石はこの時、いつものように絶望に浸っていた。





 七月六日の昼、二人は川鳴公民館にいた。


「今日はがんばろう!」


「あの、昼なんだが、夜じゃなかったのか?」


 雲石は、あくびをしながら聞いた。


「竹を立てるのは夜だが、それまでにしないといけないことがたくさんあるだろ」


「夜は手伝うと言ったが、昼は手伝うと言ってないぞ」


 峰浜は、少し黙った。そして何かを考え始める。三分間の格闘の末、結論は出た。


「ここまで来たら、関係ないだろ」


「俺は家が近いから、すぐに帰れるのだが」


 これを聞いた峰浜は、悲しい顔になった。


「そんなことを言わないで、頼む」


「まあ、いいけど」


 雲石は結局、付き合うことになってしまった。いつものことである。


「今から、竹を切りに行こう!」


「のこぎりはないし、どこの竹を切りに行くんだ?」


「そうだな、どこがいいかな?」


「決めてないのか?」


「うん」


 あっさりと答えた峰浜に、雲石は呆れる。


「そうだ! じいちゃんの家に行けば」


「正気か? お前のじいちゃん家って、三つの峠を越えないといけないんだろ」


「うん」


 これまた、あっさりと答える。そして、雲石の顔が曇る。


「お前は陸上部だからいいかもしれんが、俺には無理だ」


「気合いがあれば、なんとかなるだろ」


「気合いでどうにかなるって問題じゃないだろ」


「なんとかなる!」


 雲石のしゃべりには、いつもより勢いがあった。


「まあ竹を切ったとしよう。どうやって持って帰るつもりだ」


「担いで走る」


「お前は自転車を使わないのか?」


「そうだが、お前は走らないのか?」


「俺は行くとしても、自転車だぞ」


「そうか、それじゃ俺が一人で竹を持って帰る。それだった来てくれるか?」


「まあ、それだったらいいけど」


 雲石は、峰浜でも竹を持って走ることはしないだろうと思い、許可を出した。


「おお、ありがとう。では早速じいちゃんの家に行こう!」


「正気か!」


「当り前だ! 友達のせっかくの好意を受けないわけがないだろ」


 雲石は体から魂が抜けそうだった。二人は一回家に帰り、再び川鳴公民館に集まった。


「お前、走るんじゃなかったのか?」


 雲石は、峰浜が自転車に乗っていることに疑問を持った。それに、峰浜はあっさりと答える。


「帰りは走りだが、行きぐらいは自転車を使わないと」


「そうか」


「では、出発!」


 一人だけ気合いが入っている中、二人は峰浜のおじいさんの家に向かって走りだした。


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