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第七話 自己紹介

最近少し不調気味です。

少し大きめの少し値段が高めの宿屋。そこの大部屋にオレ達はいた。七人部屋らしく、ベッドは全部で七つ。かつ、かなり広々としている離れなのでクリスがいる今はありがたい。


このことをフィラに話したら、フィラは今でも呆然とクリスを見ている。まあ、王女が冒険者の真似事をしているとは思っていないだろう。


そのクリスは部屋に入った瞬間に荷物を置いてベッドにダイブしていた。それをちょうど入ってきたフィーナがクスクス笑う。


「クリスティナ、はしゃぎすぎ」


「久しぶりのベッドです。それに、ふかふかしすぎないこの感触は最高ですから」


フィラがオレのわき腹を肘でつついてくる。


「王女がいるのにこんな部屋でいいの?」


まあ、普通はそうだろうな。


「仕方ないだろ。手持ちの金を考えてこれが精一杯だ。王都に戻るまで後200エルトしかないし」


「十分じゃない」


まあ、200エルトもあれば王都までの道のりはかなり豪華にいける。馬車を使ってもお釣りがくる。でも、世の中は理不尽だ。何が起きるかわからない。


特に、オレは弱いから。


「病気になったり怪我をしたらどうするんだ? 世の中は理不尽だ。オレ達が思っているほど甘くない。だから」


「だからお金が必要?」


フィラの言葉にオレは言葉を止めた。図星だったからだ。あの時、もっと早くお金を集めていればと思えて仕方がない。


オレは目を伏せる。それにフィラは小さく溜息をついた。


「あんたね、世界が全て理不尽だと思わないでよ。私だってお金があるんだからクエストの間ぐらいは出してあげるわよ」


「フィラさん、そこは僕にも同意を取ってよ」


「いいじゃない。あんたは私の奴隷なんだから」


フィラはそう言うが、実際にフィラとリークの関係はそうだった。双子であり主人と奴隷。簡単に言うなら、オレが出来なかったことをフィラは成し遂げた。


オレはそれが羨ましい。


「まあ、いいわ。まさか、あんたとこんなところで再開するとは思わなかったし、とりあえず、自己紹介しない? 私は王女様ともう一人は初めて会うから」


「そうですね。私はクリスティナ・アピニオン。アピニオン王家第三王女です。今は冒険者ですので気軽にクリスティナとでも読んでください」


「質問ー!」


フィラが手を挙げた多分、質問したい内容はあれだろうな。


「どうしてレイはクリスって呼ぶの? クリスは男の人の名前のはずよ」


「なんとなく」


オレは即答でこたえた。最初、クリスがオレに命じたことが、


「自分を王女だと思わないでください。できれば、あなたと同じ冒険者として見て欲しいです」


だったので、オレはクリスティナのことをクリスと呼ぶようにしたのだ。そう呼べば顔を見ない限りクリスティナ・アピニオンともわからない。


それがいつの間にか定着しただけのこと。


「なんとなくって、相変わらずみたいね」


「どうして相変わらずなんですか?」


「冒険者養成学校の頃と変わらないのよ。あっ、私はフィラ・ファンブール。こっちがリーク・ファンブール。レイとは同期の生徒だったの。ついでにクラスメート」


「つまり、レイが弱いのを知っているのですね」


その言葉にフィラとリークの二人は頷いた。僕の弱さは養成学校時代からかなり有名だったしね。とくに、戦闘訓練じゃ真っ先にやられるか隅に隠れているかのどちらか。完全に使えないし。


これでも戦闘が出来ないから他の技能を頑張って鍛えてたんだけどね。


「まあ、レイは戦闘には弱くても知識に関してはすごかったから。レイって基本図書室に籠もっていたのよ。そこで色々な植物についての知識とか動物についての知識を勉強したみたいで実地試験じゃ右に出る者はいなかったわ」


フィラのその言葉にクリスとフィーナの二人は信じられないような目でオレを見てきていた。その意味はわかるけどそれはかなり失礼じゃないですかね?


オレは小さくため息をつく。


「戦闘はできなくても、それ以外が出来なければ冒険者としてやっていけない。知識と行動力があれば冒険者としていけるからね」


「そうそう。レイはロッククライミングが本当に得意なんだから。確か、実地訓練で魔法を使わずに山登りをさせられた時、ロッククライミングで最速記録を樹立していたわよね」


懐かしい話だ。魔法禁止だから生徒からブーイングの嵐だったけど、オレは得意なロッククライミングで一直線に山頂を目指し、ベストタイムを20分ほど更新したんだった。最初に上がってきたガイウスの顔と言えば今でも笑える。


他にも実地試験じゃいろいろ記録を樹立していたな。


「レイってすごいんだ。あっ、私はフィーナ。フィーナ・ベルフォルト。少し前からレイとクリスティナと旅をしているの。冒険者ってほどじゃないけど、刀の扱いは得意かな」


「それよそれ」


フィラがフィーナに詰め寄る。


「ガイウスに使った高速移動術。あれ、どうやってやったの? ガイウスも私たちも気づかない動きだったし」


「えっ? 普通に走っただけだけど? レイが危なかったから」


その言葉にフィラが固まった。リークも固まっている。


多分、フィーナはそれが普通なのだろうが、オレ達からすればかなり特殊だとしか言いようがない。目にも止まらぬ速さなんて普通じゃ考えられないから。


フィーナは一人で次元の違う高みにいる。


「フィーナって、ドラゴンを見たことがあるって言っていたけど、ドラゴンはどんな感じ?」


オレ達の中だと、ドラゴンは見て生き残ることがかなり難しいとされている。本当に大規模な討伐隊か少数精鋭の部隊で戦うが、半分生き残ればいい方だ。


だから、オレ達は誰もドラゴンと戦ったことがない。


「えっと、ドラゴンか竜のどっち?」


「二種類?」


フィーナは頷いた。


「ドラゴンは進化の過程で生まれたもの。言うなら、あらゆる生物の頂点に立つ存在。竜は神によって生み出されたもの。竜に関しては」


フィーナがオリジンを手に取る。鞘から刀身を走らせ、虚空を薙いだ。


「神剣が無ければ話にならない。何千万もの人が攻撃しない限りには」


「あなた、何者?」


フィラがフィーナを睨みつける。その全身から警戒の色が出ていた。


理由としてはあまりにもフィーナは知りすぎている。ドラゴンと竜なんて二つがあるなんて知らないからだ。


冒険者養成学校では生物、特に危険な生物について習うが、竜なんて聞いたことがないのに。


「神剣を持ち、常人離れをした能力。そんな存在聞いたことが」


「フィラ、今はいいよ」


オレはフィラを止めた。そして、フィーナを見る。


「確かに、フィーナについて疑問があるかもしれない。でも、フィーナが話したくないなら無理に聞かなくていい。今はクエストについて考えよう」


「はぁ、そうね。フィーナ、ごめん」


「そんな。隠しているのは私なのに」


「誰だって隠したいことがあるのに聞いたからよ。話したくなったら話しなさい。聞くくらいはしてやるわ」


その言葉にオレは吹き出していた。リークも同じように吹き出す。それに応じてクリスやフィーナも笑い出した。


フィラがただ一人だけ顔を真っ赤にしている。


「ともかく、今はクエストについて話しましょ!」


そんなフィラをオレ達は暖かく見守るのだった。


ドラゴン退治のクエストはもう少し話が入ります。

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