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第四話 新たな仲間

「とりあえず、自己紹介でもしない? レイとクリスティナはお互いを知っていても私は知らないわけだし」


ココロダ山から下りてすぐ近くにあった湖の畔にオレ達はいた。


街はもうすぐなのだけど、オレが疲れたのと傷の手当てをしっかりするためにここで少し休憩することにしたのだ。


クリスティナはあからさまに嫌そうな姿勢を向けた。


「あなた一人で話しておけばいいのではないですか? 私はレイの傷を見るのに忙しいのです」


「オレは大丈夫だよ。血はもう止まっているし、クリスの治癒魔法がかなり効いているから」


「ダメです。ちょっとした油断から死ぬ時だってあるのですから」


「クリスなら大丈夫だよ」


オレはそう言うがクリスは治療を止めない。治癒魔法をかけた首筋に貼っていたテープを剥がす。


魔力素材から作られたテープで止血が主な使い道だ。


クリスはテープを剥がして治癒魔法をかけてからまた新しいテープを貼る。


「首は特に危険です。もう少し傷口が深ければレイでは助かりません」


止血魔法は治癒魔法の中でもかなり高位だがクリスなら簡単だろう。一番の問題が、オレには止血魔法が効かないというところ。


治癒魔法は魔力循環とは関係のない傷口付近のみで作用するために効くが止血魔法は体内の血の一部を凝固しやすいようにしてから集めるため、オレには作用しない。


フィーナが小さく溜息をついた。


「最悪の場合、私が止めるから大丈夫だから」


「何が大丈夫ですか? あながレイを傷つけたんですよ! なのに」


「それくらいわかっている。だから、私を知って欲しい。私の力は特殊だから」


その言葉にオレもクリスも息を呑んだ。何故なら、フィーナの言葉は本気で真剣だったからだ。


「フィーナ・ベルフォルトは言ったと思う。年齢は18歳。武器はこの子、オリジン」


フィーナが微かに刀を抜く。オリジンという名前には聞き覚えがないけど、よく手入れされている刀ということはわかる。


「別名原初の剣」


「聞いたことがありませんね。レイは?」


「オレも」


オレ達がそう言うとフィーナは少し不思議そうな顔になった。そして、首をかしげる。


「おかしいな。私の近くにいた人は全員知っていたんだけどね。まあ、いいか」


そして、フィーナはその刀を地面に突き刺した。すると、突きさした部分から地面が凍っていく。


それはあまりに不思議な光景で、魔法を使わないと不可能である光景だった。


「魔法剣ですよね?」


「まあ、そんなもの。オリジンには炎と氷、そして、簡易召喚魔法が使用可能だから」


「炎と氷。熱量変換と作用変換。かなり凶悪な魔法剣だね。冒険者養成学校の魔法剣のリストにもそこまで強力なものはなかったはずだけど」


「一番上級の魔法剣ですね。各国の宝剣とされるレベルの。もしかして、炎と氷だと、氷の方が強力ですか?」


「そう。オリジンは別名絶氷の剣。氷属性の頂点に立つ武器だから」


氷属性の頂点ということは古の古文書にあるディバインナイツと同じ存在か同等の威力ということか。それはそれでかなり気になるものだ。


ディバインナイツはディバインナイツという騎士団のトップが使っていたとされる武器で切れ味、耐久度、共に世界最高クラスだと聞いている。


それと同等の剣がフィーナの手の中にあるのか。


「ちょっとした傷から深い傷までこれ一本でどうにかなるよ。ただ、消費魔力が半端ないから出来るだけ応急処置キットを使って欲しいけど」


「そうですね。絶えず能力を発動させようとすればかなりの魔力を必要としますし。レイを傷つけた理由はわかりました。でも、それでもレイを傷つけてもいという理由にはなりませんよ」


「確かめたかったの。オリジンの力が効かない人かどうか」


そう言うとフィーナはオリジンを振った、と思う。腕の動きは全く見えなかったし、オリジンがいつの間にか鞘から抜かれて近くの木に突き刺さっている。どういう軌道を飛んだか全く分からない。


すると、オリジンが突き刺さった木が凍り始める。フィーナはオリジンを抜くが、氷の浸食は木全体を凍らす間で続いた。


「オリジンは傷つけたものを凍らせる能力を持つ。敵味方関係なく。だから、何かの手違いで傷つけた人でも大丈夫な人がいればいいなと思っていたら、見つかった。レイがそうだった」


確かにオレはオレ自身の体内に作用する魔法やオレ自身を変化させる魔法は全く効かない。養成学校の頃はそれを疎ましくも思ったけど、こういう時に役立つとは。人生って分からないものだな。


「レイとなら一緒にいても傷つけない。ずつと一緒にいることが出来る」


「フィーナさんはもしかして、過去に誰かを傷つけたことがあるのですか?」


それはオレも思っていた。もしかしたら恋人を傷つけていたのかもしれない。だから、オレみたいな人を探していたのかも。


フィーナは予想通りに頷いていた。


「私は過ちを起こした。私のせいで戦に負けた。私がいたから」


フィーナが自分の腕を握り締める。それは完全な後悔。もう、手に入れることのできない過去を思い出しているに違いない。


すると、クリスは立ちあがった。そして、フィーナに近づいてフィーナを抱きしめる。


「大丈夫です。大丈夫ですから。私達がいます。これから、三人で旅をしましょう。冒険者のように」


「いいの?」


「私は大丈夫です。レイだってきっと大丈夫です。ダメだと言うなら顔面をひっぱたいても頷かせます」


それはそれでオレが大変なことになるかも。


「だから、行きましょう。これからの旅を」


「うん。うん」


フィーナがクリスの腕の中で泣く。多分、嬉し泣きだろう。


自分の力を一番知っている自分だからこそ、誰かを傷つけることが怖かったに違いない。そして、オレを見つけた。その力が通用しないオレを。そして、クリスも受け入れてくれた。


フィーナからすれば、また仲間を手に入れたというものか。失ったはずの仲間というものを。


オレは二人の様子を見ながら穏やかに笑みを浮かべる。


「さてと、街に戻りますか。新たなクエストでも探しながら王都に戻ることにしよう」


これからの方針を勝手に決めるけど、二人は頷いてくれるだろう。


これからの旅が本当に楽しみだ。


フィーナ・ベルフォルト 18歳

身長169cm 体重??kg

武器:オリジン(刀)

ポジション:フロント

得意魔法属性:炎

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