第一章最終話 旅立ち
小さく息を吐いてオレは荷物を背中に背負った。そして、振り返る。
要塞都市グラザム。その中には新しく国王に即位したレクス国王陛下や配下の貴族達がいる。もちろん、ロバン伯爵も。
その姿は見ていないけど、もし見たなら斬りかかっていたかもしれない。
「これから、この国はどうなって行くんだろうな」
「もし、お兄様が民を虐げるなら、私は剣を抜きます」
オレの言葉に同じように、ただし、オレより遥かに少ない、荷物を背負ったクリスがオレの言葉に言葉を返してくる。
その言葉に周囲にいた慧海とギルバートが振り向いていた。さすがにこの場で言うのは不謹慎に思えたのだろう。だけど、即位式典の際にクリスはレクス国王陛下相手に同じ言葉を言っているのだ。
同じ王族だからこその責任であり、確認出来なければ国王陛下の政策を手伝うと言って。
ある意味前代未聞だけど。
「ですが、私は、私達はあくまでも国王陛下の味方です。そのことだけは覚えておいてください」
「何というか、たった数日でお前らは成長したよな。やる目的を見つけ出した、というか」
「そうだね。クリスティナみたいな領主がいれば国王はかなりやりやすいよ」
「王女から領主に格下げなのに大丈夫なのかよ」
そう。クリスは王女という立場ではなく領主という立場になることを望んだ。もちろん、その願いは聞き入れられ、前国王陛下が持っていた領地をそのまま引き継ぐことになったのだ。
ただし、要塞都市からはそこそこ遠い。
「大丈夫です。長閑な田舎だと聞いています。そう言えば、ギルバートさんは国王だと聞きましたが」
「そうだよ。アルバティア帝国第十三代国王。慧海。そろそろ僕達の話をした方がいいんじゃないかな? クリスティナやフィラ達は加わらないとしても、理解は深めていた方がいいし」
「そうだな。クリスティナ。道中にオレ達の話をするけどいいか?」
「はい。あなた達がどういう人生を歩んで来たのか聞きたいと思っていましたし」
慧海達の話か。一体、どれだけ無双な話になるのだろうか。
「あっ。レイは今、オレ達が無双している様子を思い浮かべたな」
「まあ、そうだけど」
「僕達の強さを知っていればそう思うのは無理もないけどね。じゃ、軽く話して行こうか。まずは僕の話から。僕はね、ルーンバイトという国の第一王子として生まれたんだよ」
青空の下、オレ達は歩く。オレ達の領地に向かって。
第一章完結です。そして、長期休載を行います。楽しみにしていた読者の皆さんにはご迷惑をおかけしますが、物語は星語りの時間よりも少しだけ過去に遡り、ギルバートを主人公とした物語となります。
それが完結すれば続きが始まりますが、ギルバートを主人公とした物語は前後に別れており、その間で今度は姫路と慧海を主人公とした物語が始まります。つまり、だんだん遡ります。
再開は本当にいつになるかはわかりませんが、頑張って書いていきますので応援のほどよろしくお願いします。