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第五十二話 作戦開始

要塞都市グラザム。


都市の入り口から要塞であり、その防御力は生半可なものじゃない。城壁もあまりに高すぎるため登ることすら出来ない。さらには大量の穀物庫が存在しており、最大で十万の兵を三ヶ月食べさせられるくらいあるとか。今は全くないけど。


それが王都を守る最終防衛ライン。だからこそ、要塞都市と言われる理由だった。門を開放している状態ではただの都市だが、門を閉めればあらゆる要塞よりも頑固な要塞となり果てる。


だから、いつもなら開いている門が閉まっている。どう考えても大きすぎる分厚い鉄製の城門。それを前にしてオレ達は呆然としていた。


「つかさ、人が構築出来るサイズを超えているよな」


「慧海なら可能じゃないかな?」


「馬鹿言うなって。オレは破壊が得意であって構築は不慣れだ」


「作ろうとすればいつの間にか壊しているしね」


慧海とギルバートの二人が最初から破壊を諦めているような感じがする。それに関しては同意見だった。


今回の作戦は最速かつ最短距離で目的地にまで向かわないといけない。だからこそのメンバーだけど、今回ばかりは無理じゃないかなと思ってしまう。


「さすがは要塞都市ですね。勝てる気がしません」


「奥まで私のオリジンもレイのスターゲイザーも届かないだろうし」


「そもそも、切るものじゃないわよね」


諦めムードが漂う中、不適な笑みを浮かべた朱雀がゆっくりと前に踏み出した。


今回の作戦は至極簡単だった。朱雀が門を破砕して突入。オレ、フィラ、クリスの三人は最短距離で国王陛下がいるであろう場所に向かい、他の面々はそれぞれの場所でオレ達の邪魔にならないように掃討する役目だ。


ただ、本当に破壊じゃなくて破砕出来るのだろうか。


「そうや」


朱雀が振り返る。


「慧海ってさっき吼砲使ったって言ってたな」


「まあ、不完全だったけどな」


「そりゃな。吼砲もうちは本当の使い方はまだしていないし」


そう言いながら笑みを浮かべてオレ達に背を向ける。すると、朱雀の足元に矢が突き刺さった。


「これ以上こちら側に来るなら撃たせてもらう! 即刻引け!」


声は響いてくるけど、遥か高くに存在している上からだ。というか、よく朱雀の足元を狙えたよな。オレにはありえないことにしか思えないんだが。


対する朱雀は軽く肩をすくめて歩き出す。


「確かに頑固な壁に門と上からの射撃。普通やったらかなり凶悪やな」


「撃て!」


そして、大量に放たれた。大量の矢と大量の魔法が。


国王陛下を慕っている人達って本当に多いんだ。レクス王子とは大違いなように思えるんだけど。まあ、今は関係ないか。


朱雀は空を見上げ、そして、少しだけ横にずれた。それだけで降り注いだ矢を避ける。大きく前に踏み出して振ってきた火球を避け、床に跳ぶことでハリネズミになることを防ぐ。かすることも無ければ、緊急回避することもなかった。その動きはまるで池に飛び飛びである足場に跳ぶような感じだった。


膨大な数の攻撃を避けながら朱雀は門に手を触れる。いや、拳を触れる。


「これが本当の」


そして、朱雀が拳を押し込んだような気がした瞬間、何とも形容しがたい音が鳴り響いた。


パン、という音に近い気もするけど、パサッ、という音も間違っていないような気もする。ともかく、何の音かはわからない。ただ、わかるのは朱雀が大きく後ろに下がったということ。そして、


城門全体にひびが入ったと思えば、細かに砕け、砂のように粒子となって落下したということ。


オレと両隣りにいるクリスとフィーナが口をぽかんと開けて固まっている。固まっているのはオレ達だけじゃない。敵も味方も完全に言葉を失っていた。


朱雀は安全になった地面を歩きながらオレ達の前まで戻ってくる。


「これが本物の吼砲や」


「もう、レベルが違うな」


「当たり前や。慧海は見よう見まねでやっているからな。本当の八叉流はけた違いやねんで」


「今、痛感したよ」


慧海が引きつった笑いを浮かべる。これにはさすがの慧海も想像すらしていなかったらしい。


オレは開いていた口を閉めてスターゲイザーを抜き放つ。


「行こう、みんな。陛下の下に」


オレが一歩踏み出した瞬間、相手も我に返ったのかオレ達に向かって大量の矢と魔法が飛んでくる。オレはスターゲイザーを構えて、


全てが一瞬にして払われた。


「先に行け!!」


慧海が柄だけになった剣を振りながら叫ぶ。それにオレは疑問に思いながらも頷いて走り出した。


「テオロ! 殺すなよ!」


「任せてください!」


テオロって誰だっけ? まあ、いいや。門の向こう、砂鉄の山と化した向こう側には数十人の兵がいる。その中には、近衛騎士団の真っ黒な鎧を着た人達の姿もあった。


本当の近衛騎士団との戦いになるのか。


「先に行って!」


姫路と雪羽の二人が飛び出す。姫路は黎帝を、雪羽は槍を握り締めて砂鉄の山を越えて兵の群れに跳び込んだ。『絶対守護の刃アブソリュート・ガーディアン』が煌めき、兵の何人かが空を舞う。


空を舞ったのは『絶対守護の刃アブソリュート・ガーディアン』によるものじゃないけど。


二人が作り出してくれた道をオレ達は走り抜ける。ここから本要塞までかなりの距離がある。たくさん作られたバリケードを越えて行かないといけない。


魔物用に作ったものだからかなり頑固で普通の剣だと破壊できない。でも、スターゲイザーなら簡単だ。


オレはスターゲイザーを振り抜いてバリケードを破壊する。その奥には新たなバリケードが。


「きりが無い」


「うちに任せとき!」


オレが小さく呟いた瞬間、朱雀がバリケードを飛び越え次のバリケードに向けて走り込んだ。そして、素早く回し蹴りを放った瞬間、バリケードがバリケードを吹き飛ばした。


一瞬、オレは何を言っているのだろうと思うが、事実だ。朱雀が蹴り飛ばしたバリケードがその向こうにアルバリケードごと吹き飛んだのだ。そして、バリケードの塊が本要塞の門にぶつかる。


大体500mくらい飛んだよね?


「行くで!」


朱雀がオレ達を急かすように腕を振りながら駆けだした。オレ達はその後ろを追いかけるように走り出そうとして、ガラッと屋根の瓦を踏みしめる音が鳴り響いた。


オレは空を見上げる。そこには、弓を構えた兵士の姿。狙いはオレか。


「電撃や~」


気の抜けた声と共に紫電が迸り、屋根の上にいた兵士を吹き飛ばした。ついでに屋根の瓦も溶かしているし。


「うちは予定通りに屋根の上を殲滅するで~」


「頼む」


オレは綺羅のその気の抜けた声に言葉を返す。


どう考えても魔術を使っているような声じゃなかった。それでも、あの威力ということは綺羅はどれだけの火力を持っているのだろうか。


「レイ。屋根に注意を払いながら路地裏にも注意を払え」


「わかってる。要塞都市に路地裏なんてたくさん、くっ」


路地裏から飛び出してきた何かが顔に当たる。オレはそれを走りながら掴むと、猫だった。


首を掴まれて持ち上げられた猫がにゃーと鳴いている。


「こういう奴らにも気をつけないとな」


「レイ。その猫をください!」


「私も!」


「クリスもフィーナも状況を考えてくれ! ともかく、お前はさっさと逃げるんだぞ」


オレは一瞬だけ距離を落として猫をその場に置くと、オレはそのまま走りだそうとした瞬間、目の前を槍が通り過ぎた。


フィーナがオリジンで槍を半ばから断ち、刃を翻してみね打ちで槍を突きだした兵士を昏倒させる。


「猫のおかげだな」


「今回ばかりはな」


ガイウスの言葉に言葉を返しながらオレはさらに道を駆ける。すでに前方にはバリケードが破壊されたからか兵士が集まっている。


今のところは作戦通りか。というか、ここまでバカげた作戦が作戦通りに自体に進むとは思わないんだが。まあ、慧海達のおかげだろうな。


「じゃ、うちは先に行くで」


その言葉が聞こえて朱雀の姿を視界にとらえようとした瞬間、集まっていた兵士達が空を舞っていた。いつのまにか朱雀が暴れているし。


「レイ。私はこの世界でも最強クラスだと思っていましたけど、ここにいる皆さんを見ていると世界は広いのだと感じます」


「世界が広いってレベルじゃないだろうな。ともかく、オレ達はオレ達の目的を達成しないと。今はバリケードがないから突き進めるけど、要塞の中はかなり苦労すると思うし」


「大丈夫よ。要塞の中の地図は私の頭の中に全て放りこんできたから。抜け道は任せて!」


「どこにそんな地図があったんだよ」


「えっと、企業秘密?」


「フィラさんは抜け道に詳しいから」


リーク。それだけで終わらせれる様な状況じゃないぞ。


「と、ともかく、最短ルートで私達は向かわないといけないの。そのためのルートは考えてあるから」


「なら、僕達は先に要塞内を撹乱しておくよ。行きやすいようにね」


ギルバートがばっちりとウインクを決めるとクロハと一緒に跳んだ。そして、要塞の三階から中に侵入する。


うん。完全にバカげた身体能力だよね。


「道を開けるで!」


兵士を一掃した朱雀が折り重なったバリケードの山に肘を叩きつけた。そして、要塞の扉が開く。まあ、バリケードの破片も中に入り込んでいるけど動けないほどじゃない。


オレ達はその中に入り込んだ。要塞の中にも兵士がいる、んだけど、さっきの一撃でかなりの数が吹き飛ばされていた。


「先導は任せて。みんなをちゃんと連れて行くから」


「お願いします。お父様とはレイが戦わないといけないのですから」


「クリス」


オレは国王陛下から思いを受け取った。そして、クリスも受け取った。だから、国王陛下をこの手で倒し、オレは強くならないといけないから。


「やはり、私を奪うにはお父様を倒さないといけませんよね?」


「そっいかよ! まあ、いいけど。みんな、行こう!」


フィラを先頭にオレ達は要塞の奥に入らなかった。入口隣にある門番の休息所にフィラは飛び込んだ。そして、正面の壁にあった蝋燭の台をジャンプして掴むとそのまま下に下げた。


すると、横の扉がスライドする。


「こっちよ」


そこにフィラは飛び込んだ。


その仕掛けに驚きながらもフィラが作り出した明かりを下にオレ達は階段を駆け上がる。


「凄まじい抜け道だよな。逃げるためじゃないと思うけど」


「侵入者がいた時の避難用。こんな道を知っているのは王族でも限られた人だと思う?」


「どうしてそれをフィラが知っているのかな?」


さすがにフィラがそういう職業を過去にやっていたとしてもさすがにこれはまずいとは思う。クリスもいるんだし。


「この階段を駆け上がれば四階に出るわ。ちなみに、国王陛下がいる指揮官室は目と鼻の先」


「嫌な予感がするのはオレだけか?」


「奇遇だな。俺もだ」


「僕もかな」


「私もです」


「その予感は正しいんじゃないかな?」


苦笑気味のフィーナがそう言った瞬間、フィラは目前に現れた壁に蹴りを放った。すると、壁にひびが入り砕け散る。


オレ達が飛び出したそこは確かに指揮官室の前だった。ただし、右を見ても左を見ても兵士しかいない。


「だと思ったよ!」


オレはそのまま前にあるドアのカギ穴にスターゲイザーを振り抜いた。すかさずガイウスとリークが両サイドに散って兵士を体当たりで吹き飛ばす。それを確認したオレはドアを蹴り開けた。


指揮官室の中央。そこに拝礼の杖であるスターゲイザーのレプリカを抜いた国王陛下の姿がある。


「頑張って」


フィーナの声が響き渡り、最後に入ったフィラが扉を閉じた。


オレは小さく息を吐いてスターゲイザーを構える。


「ようやく、辿りついた」


「よくぞ着たな。クリスティナ。そして、レイ・ラクナールと可愛い暗殺者さん。勝負だ」


国王陛下は気になる言葉を笑みを浮かべつつ吐いてスターゲイザーのレプリカを構えた。

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