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第四十六話 星剣VS精霊剣

スターゲイザーを振り抜く。前を塞ぐ魔物を切り裂き、魔物を乗り越えて前に向かう。体中は傷だらけ。だけど、フィナの姿はだんだん大きくなってきていた。


「どけっ!」


気合いと共にスターゲイザーを一閃する。プダズタを切り裂き、セルゲスごと両断する。その間には後ろから襲いかかってくるけど、必死にスターゲイザーを振り抜いて蹴散らしていく。


スターゲイザーが無ければ今頃倒れているだろう。だけど、体中の傷口はかなり酷い。こんな姿を見たらフィナはどう思うだろうか。


「今はフィナのことを考えている状況じゃないかな。今は」


飛びかかってくるセルゲスを切り払う。だけど、逆側から飛びかかってきたプダズタを避けきることが出来ずオレはその場に転がった。


そこに襲いかかってくる魔物達。


「スターゲイザー!」


オレの叫びと共にスターゲイザーの光が周囲を薙ぎ払った。体中の体力がごっそりと持っていかれる。だけど、オレはそれを堪えて前に進む。


「フィナ! 答えてくれ! フィナ!」


向かってくる魔物を蹴散らしながらフィナの名前を呼んだ瞬間、魔物がピタッと動きを止めた。それと同時に魔物が道を開ける。


そこには一匹の狼を従えたフィナの姿があった。


「フィナ」


「傷だらけだね。昔を思い出すな」


その言葉にオレはスターゲイザーをフィナに向けた。


「もう、魔物を動かすのは止めてくれ。オレはお前を傷つけたくない」


「うん。レイはそういう人だったよね。優しくて、戦うのが嫌いで。でも、今、魔物を引いたところで私が殺されるのは変わらない」


「それは」


「レイもわかっているんだ。いくらレイがスターゲイザーを持っても、それは絶対に変わらない。変えられない。でもね、だから投降しないわけじゃないけど」


その言葉と共にフィナはそっと隣にいる狼を撫でた。


「私は運命を受け入れたから。だから、ここにいるの」


「どういうこと?」


少しだけブレたスターゲイザーの柄を握り締める。対するフィナはそれを見てクスッと笑った。


「私はね、レイにスターゲイザーを持たせるためだけに生まれたんだよ」


「嘘だ!」


「嘘なんかじゃない。途中で私自身が売買されるとは思わなかったけど、フルエルさんに協力してもらってレイに私を殺させた。そして、レイは強くなろうとした。これが第一段階」


フィナがまるで魔女みたいな笑みを浮かべている。こんなの、オレが知るフィナじゃない。


「次に、レイがスターゲイザーを手に入れるため、私はスターゲイザーを手に入れようとした。だけど、予想外の事態が起きたよ。レイにいつの間にか王女以外の女がいた。しかも、その女の強さは常識を越えていた。その時の私の気持ちはわかる? 完璧だったんだよ。完璧なことに、レイにたくさんの、しかも、強い仲間が出来た。私は嬉しかったな。これで、スターゲイザーをレイは手に入れるって思ったよ」


「どうして、どうしてオレがスターゲイザーを持つってわかったんだ?」


それだけは聞きたかった。


スターゲイザーを持つ手が震える。もしかしたらという考え。慧海達が動いている理由はフィナが知っていることを知っているのではないかと思ってしまったから。


だから、フィナの口から別の言葉が聞こえることを期待した。ただの偶然、又は、言われたからと。


「スターゲイザーを持っているのにまだアクセス出来ていないの?」


不思議そうな声にオレはスターゲイザーを見た。だが、スターゲイザーは何も言わない。


「じゃ、教えてあげる。レイはスターゲイザーのことをどう思った?」


「どうって」


「星剣のこと。あまりに強い星剣を不思議に思わなかった?」


「確かに強いけど」


「だよね。星剣は文字通り星の剣。星の力を操れるから当たり前。私が知っているのはオリジン、ラグナロク、スターゲイザーの三本だけど、オリジンは原初の力を使う星剣。ラグナロクは過去の伝承を紡ぐことによって力を発揮する星剣。スターゲイザーは今ある、いや、未来に到来する星の光を集める星剣。この意味はわかるよね」


それはわかる。わかるけど、フィナはだから何を言いたいのだろうか。


フィナはさらに笑みを深く浮かべた。そして、ゾッとするような笑みになる。


「スターゲイザーは未来を今とする力。つまりはね、スターゲイザーの力を借りれば未来すら見ることが出来る。その未来には、レイがスターゲイザーを持つと記述されていた」


「そんな」


「星が語る未来の歴史。それが『現在詩編』。未来の様子を現在として表すスターゲイザーとそれにアクセス出来る人が使える究極の能力。未来予知みたいなものかな。フルエルさんはそれにアクセス出来る存在。だから、私が生まれた。レイを誘導するために」


「嘘だ!」


オレはスターゲイザーを握り締めてフィナに斬りかかった。フィナが笑みを浮かべた瞬間にフィナの手に剣が生まれる。


それは、狼の姿と引き換えに現れていた。


スターゲイザーとその剣がぶつかり合う。


「嘘じゃないよ。だから、私はフルエルさんと動いた。レイをここまで誘導するために。そして、この未来を確定するために!」


スターゲイザーとフィナの持つ剣が大きく弾かれ合う。オレは柄を握り締めてスターゲイザーをフィナに向けて振り抜いた。


フィナはそれを受け止めて鍔迫り合いに持ち込む。


「スターゲイザーと同等?」


オレは内心驚きつつ一歩を踏み込んだ。対するフィナは一歩後ろに下がる。


「スターゲイザーの刃は魔力の刃。だから、物質は簡単に切断される。だけど、それは魔力に対しては断ち切ることが出来ない」


フィナの顔に浮かんでいるのは笑み。確かに、スターゲイザーの刃なら簡単に切り下げるような相手はたくさんいる。魔力の刃をスターゲイザーが作ってくれるのか。


「だから、私は簡単には倒せないよ!」


そう言いながらもフィナはオレの力によってだんだん押し込まれていく。この力、もしかして。


「フィナ。まさか、魔法が」


「隙あり!」


フィナが動いた。スターゲイザーを抜けて剣をオレに向けて振ってくる。だが、その速度は見えない速度じゃない。だから、オレは右手でフィナの剣を握る手を上から押さえた。


「魔法、使えないんだね」


再び鍔迫り合いに持ち込む。フィナは少し困ったような、だけど、嬉しそうな笑みを浮かべていた。


オレはさらに踏み込んでフィナを押し込む。


「さすがにスターゲイザー相手に精霊剣だけじゃ危ないか。今までなら精霊剣の力で何でも断ち切れたんだけどな」


「どうして、魔法が使えないんだ?」


「それを話せばレイはまた過去に捕らわれる。だから、話さないよ。今は」


その瞬間、フィナの力が一気に高まった。オレはとっさに後ろに下がって振り抜かれた精霊剣を回避する。


フィナの動きは魔法が使えないからこその困惑はない。オレと同じ魔法が使えないからこその戦力を使う。


武器は星剣と精霊剣。威力はおそらく同じくらい。


「技術の差で決まるか」


オレはポツリと呟いた。呟いてスターゲイザーをしっかり握り締める。


「フィナ。この魔物達はどうやったら散るの?」


「私を倒すことが絶対条件。ううん、私を殺すことかな」


「そっか」


フィナを殺さないと魔物は止まらない。おそらく、フェンリルだって。


「だったら、オレはフィナを殺す。フィナはオレに殺されるために来たんだろ?」


オレの問いかけにフィナは優しい笑みを浮かべた。そして、口が動く。


それは音として発せられない言葉。だけど、オレにはわかった。


「わかった。スターゲイザー、力を貸してくれ」


スターゲイザーの刃が太くなる。オレは地面を蹴り、そして、フィナとの距離を詰めた。フィナもオレとの距離を詰めるように前に踏み出してくる。


星剣と精霊剣は同じ。技量も遜色はない。だったら、勝つ条件はあれしかない。


フィナが精霊剣を振ってくる。それに対してオレは前に飛び出した。そして、精霊剣の刃がオレの体に食い込んだ。


「かはっ」


口から血を吐く。だけど、生きている。いや、生かされている。オレはスターゲイザーを握り締め、精霊剣を振り抜いて目を見開いたフィナに向けて勢いよくスターゲイザーを振り下ろした。


人を斬る感触がする。あの時、最初にフィナを殺した時に感じたあの感触が。


それを感じながらオレの意識は暗転した。

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