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第二話 眠り姫

ココロダ山にある渓谷。そこは断崖絶壁で囲まれており、そこを歩くことは無理に等しい。でも、オレ達はそこを歩く。


ロッククライミングしながら。


「レイ、帰ったら怒りますからね」


「大丈夫だって。ここを通っていたら見つからないから」


「絶対に見つかりませんけどね!」


クリスが震える手で岩肌を掴み、少しだけ出ているでっぱりに足を乗せて少しずつ進んでいく。


オレは岩肌を蹴った目星をつけていた足場に乗り移った。クリスもすぐに乗り移ってくる。


「ここは」


「昔に使われていたと思う天然の道。多分、崖崩れでもあったんじゃないかな」


地図を見ていたら気付いたけど、断崖絶壁の途中から道があった。そこまでたどり着けば目的の場所まで結構早く着くことが出来る。でも、足場はかなり不安定だ。


オレはクリスの手を握って歩き出す。


「私が前に出ましょうか? もし、敵が出てきたなら」


「大丈夫だから。それに、こんなところで戦闘になったら落とした方が早いよ」


「そうですね」


こういう道幅せまい場合は剣を振り回すことは難しい。だから、こういう特はルールなしのストリートファイトみたいな感じで行けば十分だ。


それでも、危険なことには変わりないけど。


「さてと」


オレは前を見る。どうやらこの天然の道も終わりみたいだ。それに、そろそろ中央に近づいているから上っておかないと見失う可能性もある。


「ここを上るよ」


「ここを、ですか?」


クリスが見上げたのは断崖絶壁。もちろん、ロッククライミング命綱無しバージョンだ。落ちれば確実に死ぬ。オレは確実に。


そんな場所を見上げながらクリスが少し遠い目をして語りかけてくる。


「浮遊魔法を使っていいですか?」


「クリスは浮遊魔法でいいよ。オレは上るから」


そう言うとオレはすぐに岩肌に手をかけた。そして、器用に登っていく。冒険者だからということもあるけど、オレ自身がロッククライミングが大好きで昔住んでいた場所だとよく崖登りをしたからだ。


セリアとガウスは無事かな?


でっぱりを上手く掴み、体を上げてでっぱりに足を乗せる。どれくらいしたかわからないが、気づけば崖を登り切っていた。渾身の力で体を上げて周囲を見渡す。


周囲にあったのは信じられない光景だった。氷の彫像となった木々。木々だけじゃない。人もいる。服装から考えて冒険者だ。


「どうかしました? えっ?」


オレの後を追ってクリスが昇ってくる。杖の上に腰かけて。そして、目の前の光景を見て完全に固まっていた。


オレは氷の彫像に近づき、凍った木々に手を触れる。そして、眉をひそめた。


「冷たくない?」


そう言えば、寒くもない。こんなに氷が存在するなら周囲一帯がかなり寒くても違和感がないはずなのに。でも、今の気温は他の場所と全く変わらない。


触っても冷たくないということは、温度自体が動いていないということだろう。


「氷属性の魔法かな。でも、ここまで大規模に魔法を展開できるのは神剣じゃないと無理だと思うけど」


「レイ、これは、一体何なのですか?」


クリスも不思議に思っているみたいだが、怖がって氷の彫像に触らない。でも、今回はそれがいいともう。きっと、この木々は完全に罠だから。


オレは木から手を離す。そして、少々赤くなった掌を見ながら小さく息を吐いた。


どうやら、ココロダ山に入ってから誰も帰ってこないのはこれが原因らしい。魔法の術式の根源さえ分かれば十分だけど、それをどこにあるか探さないと。


「クリス、氷には絶対に触れないでね。確実に呑みこまれるから」


「もしかして、水と炎と氷の魔法合成ですか?」


「多分ね」


そんな高性能な魔法を相手が使える以上、こっちが下手に手を出せばどうなるかわからない。だから、警戒しながら行かないと。


オレは腰から剣を抜いた。安物の片手剣だ。初心者の冒険者が身につけるアイテム。ちあみに、冒険者養成学校の卒業時にもらったものをずっと使っている。


クリスが背後で杖を背中に収めたのがわかった。こういう状況で魔法を放てばむしろ気づかれる可能性があるから妥当な判断だ。


歩く。オレは周囲の木々に触れながら、微かに方向を読み取りつつ。歩く。クリスは周囲の氷に触れないようにしながら。


そして、木々が開けた。そこに広がっていたのは一面の花園。ただし、氷の彫像だ。


「うわっ、綺麗」


クリスが小さくつぶやいた。感嘆の声の意味がわかる。確かにこれは綺麗だ。綺麗だけど、これに触れたならオレ以外は凍るだろう。こういう時だけ自分の能力に感謝だ。


よく見渡してみると花園の中央に何かが突き刺さっている。細い剣の様なものだ。レイピアとは少し違うような。


「クリスは待機していて。オレが向かうから」


「はい。気を付けてください」


オレはクリスに頷いて氷の花園に足を踏み入れた。それと同時に服越しに嫌な感覚が襲う。氷の花に触れた場所が凍っているのだ。その凍った場所が冷気を伴ってオレの足に当たっている。


オレは小さく息を吐いた。そこまで冷たくはないが、長居するのは危険だろう。


氷の花をかき分けて前に進む。幻想的な光景なのだが、実際の効果を知っているならそれは全く幻想的じゃない。一体、何があるんだ。


そして、オレは中央にたどり着いた。ズボンの半分くらいは氷に浸食されているが動き回っていたら壊れるだろう。でも、それよりも大事なことが目の前にあった。目の前にあるのは一本の刀。確か、東方の騎士が使う切れ味抜群の武器だ。それが地面に突き刺さっている。そして、


地面に横たわる少女。


少し年上なのかもしれない。微かに青みがかった白い髪に可愛らしい顔。クリスと比べてもいい勝負だろう。その少女が横たわっている。


身につけている服装は甲冑。鈍い光を放つ甲冑だ。新品とは違い使いこなれた感じがする。その甲冑の上でまるで祈るように手を組んでいる。


オレはその少女に手を伸ばしていた。どうしてかわからない。でも、伸ばさなければならないような気がしたから。


少女はどうやら眠っているらしく、まるで眠り姫とも言わんばかりの状況だった。


オレの手が少女の頬に触れる。それと同時に何かが砕ける音が鳴り響いた。まるで、結界を破壊した時と同じような音が。


少女の目が開くと同時に少女が起き上がった。刀を手に取りその刀をオレに向かって振ってくる。


殺される。


そう思った時にはオレは後ろに跳んでいた。でも、手に持つ剣が刀に捉えられスパッと切断された。


地面に着地すると同時に刀が首筋に当てられる。


「あなた、何者? そうして、私の固定結界を破壊して安眠を破るの?」


クリスティナ・アピニオン 16歳

身長139cm 体重??kg

武器:杖

ポジション:センター

得意魔法属性:全部

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