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第三十四話 星語り

星語りの物語 の星語りについて最後に語っています。レイの物語というわけではないので。

煌めく星々の輝き。それが上下前後左右四方八方、いや、背後に大きな綺麗な球体の青い星があった。正確には青と緑と白の星。


青は海だろう。緑は木々で白は雲。


「これは」


オレは小さく呟いた。スターゲイザーを握った時にやってきていた世界とは少し違うような気がする。だけど、似た場所だとはわかった。


というか、ここどこ?


『やはり、驚いていますね』


その声にオレは振り返った。そこにはやはりと言うべきか、スターゲイザーが宙を漂っている。


オレは小さく溜め息をついてその場に座り込んだ。


「また、お前か」


『またとは心外ですね。あなたは『星語りの騎士』になったのですよ』


「だから、オレは全然知らないからな?」


そもそも『星語りの騎士』って何だよ。


オレの疑問に答えるようにスターゲイザーが言葉を発する。


「そもそも、オレはお前を持ってからほんの少ししか経っていないんだぞ。世界についてもわからないし、フィナについてもわからないし」


『だからこそ、あなたをこの場に呼びました。星剣『スターゲイザー』は現在視の力を持っています』


「現在視?」


『はい。現在の対象を視ることが出来る力。とは言っても、あなたでは漠然としか見えないでしょうけど』


「嫌みか? 嫌みだよな?」


明らかにオレの体の事を含めた嫌みにしか聞こえない。


スターゲイザーはふっふっと楽しそうに笑った。


『はい。前の所有者ははっきりと見ていました。星剣『スターゲイザー』の能力は三つ。今のあなたには現在視しか教えませんが今のあなたに一番必要なものではないでしょうか?』


「居場所がわかりやすいから?」


『はい』


確かに、フィナがいる場所も、クリスが捕まっている場所も現在視の力があればどうにか出来るかもしれない。いや、どうにか出来る。


だからこそ、スターゲイザーはオレにそれを教えてくれた。


「それにしても、スターゲイザーって不思議だよな。スターゲイザーを持っていると魔法が使えたし」


『正確には少し違う能力ですが、魔法には間違いはないです。ただし、あなたが私を手放している最中には使えません』


「やっぱり?」


オレは苦笑する。生身でもスターゲイザーの能力を使えたら良かったけど。


『星剣『スターゲイザー』は他の神剣とは少し違うものです。あなたはスターゲイザーの力を理解しなさい。そして、スターゲイザーを持つ意味を考えなさい。その答えが出た時、私はまたあなたの前に現れましょう』


そして、世界に光が満ちて、


オレは目を覚ましていた。見えるのは天井。ただし、やけに豪華な天井でもある。どこかで見たことがある超有名画家が書いた絵があるし。


ゆっくり起き上がりながら周囲を見渡しても、豪華すぎる部屋。ついでにキングサイズのこれまた豪華なベッド。


ベッドに立てかけられている剣と抜き身のスターゲイザーがどう考えてもミスマッチだ。


「ここ、どこ?」


布団の感触が滑らかすぎて怖いし、ベッドが気持ち悪いくらいまで体が沈み込んでいる。どう考えても高価なベッドだ。


確か、フィナがクリスを連れて行って、その後にフィラに気絶させられたんだ。つまり、ここは王宮?


オレは布団を退けてベッドから降りる。服装は冒険者御用達のジャケットとズボンだ。ただし、新品。


ベッドのそばにあった靴をはき、オレは剣を腰に差してスターゲイザーを手に取った。抜き身だから危ないんだよな。


「どうしよう」


せめて、刃が無くなればいいけど。そう思った瞬間、都合よく白銀の刃が無くなった。オレは頭を数回、ポリポリとかいてスターゲイザーを腰のベルトに挟む。


神剣って、便利だね。


ドアを開け、廊下に出る。豪華な廊下かと思いきや廊下には戦闘の爪痕が残っていた。


飛び散った血。そして、破壊された壺が何かの残骸。


オレはスターゲイザーを刃が無いまま抜いて歩き出す。ここがどこかはわからないけど、とりあえずは誰かと合流しないと。


そう思いながら廊下を歩いていると、誰かが談笑する声が聞こえてきた。オレはスターゲイザーを握り締めてそこに近づく。


「とりあえず、自己紹介だな。オレの名前は善知鳥慧海。神剣『蒼炎』の持ち主だ」


「私は白百合雪羽です。一応ですが、姫路の妹です」


「何が一応よ。あなたは私の妹じゃない」


「あっ、姉でもいいですよ」


「だから、私が姉だってば」


その声に安心してオレはドアを開けた。すると、そこには慧海、姫路、白百合雪羽以外にもフィーナとフィラの姿があった。


オレの姿を見たフィーナがゆっくり近づいてくる。


「体、大丈夫?」


「大丈夫だ。フィーナとフィラは?」


「私を心配してくれるのは嬉しいけど、フィーナに治癒してもらっているから大丈夫よ。というか、その剣、抜き身で持っているんだ」


呆れたようなフィラの声にオレはスターゲイザーを軽く掲げた。そして、白銀の刃を作り出す。


全員の顔に驚きの文字が浮かび、慧海はすぐさま笑みを浮かべた。


「なるほどね。それが、『星語りの騎士』の証、星剣『スターゲイザー』か」


「慧海はどこまで知っているんだ? この剣についてどこまで」


「まあ、語りたいのは山々なんだが、昔話を織り交ぜないといけなくなるから今は気にしないでくれ。問題は、統率個体だろうな」


フィナ。そして、フェンリル。


魔物を操っていた二人。フルエルは何らかの事情で手伝っていたのだろう。でも、本命はこの一人と一体。


「慧海達は動かないように言われているけど、どうするんだ?」


「動くわけにはいかないだろうな。それに、国王を守る兵がいなくなる」


「どういう、いや、ちょっと待って」


スターゲイザーを両手で握り締めて目を瞑る。そして、スターゲイザーの力を発動した。捜すのはクリスの場所。


洞窟の入り口。鍾乳洞。手は縛られているけど無事なクリス。


駄目だ。これじゃクリスの居場所はわからない。次はフィナの位置。


平原。魔物の大軍。フェンリルの横を歩くフィナ。煙を吹き上げる山。


「ボルチア火山の麓、ボルチア平原に魔物の大軍」


「それがスターゲイザーの力の一つか。面白いな」


慧海が笑みを浮かべながら頷いた。


「少し前に報告された話なんだがボルチア平原に魔物の大軍が現れた。近くを通りかかった近衛騎士団は逃走したらしい」


聞いて呆れてしまう。近衛騎士団と言えば王国最強の騎士団だと言われているのに。


「予定だと三日後、ここに来るそうだ。数は今までの比じゃないらしいな」


「その点はあまり心配していないかも」


フィーナの言葉に誰もがフィーナを向いていた。慧海にいたっては信じられないとでも言うかのような目をしている。


フィーナは一瞬だけキョトンとして、そして、納得したように頷いた。


「吟遊詩人の星語り、って知ってる?」


唐突な言葉に慧海達は首を傾げる。だけど、その言葉にオレとフィラは頷いていた。


「昔話を語る吟遊詩人の言い方よね? それがどうかしたの?」


「うん。私も吟遊詩人の星語りが大好きで、その中の一節にこういうものがあるの。『全天の星が瞬き、世界は光に包まれる。残ったのは浄化された大地』」


「確か、『創世詩編第二節創世の章』よね?」


「よく覚えているよね」


ちなみにオレは覚えていない。というか、覚えられない。創世詩編は全部で十節まであってそれぞれが八つ以上の章がある。


一夜で語られるのは章一つだけだから普通に全部把握していない。一応、創世詩編は冒険者養成学校の図書室にあったけど。


「レイ、スターゲイザーの中に語りかけて」


「何を?」


「詠唱の詩を」


オレは首を傾げながらスターゲイザーを握り締める。すると、かなり長い文が勝手に頭の中に入ってきた。


というか、長すぎる。


「十分くらい詠唱があるんだけど」


「うん。それが『星剣の星語り』の一つ。星剣が所有者に話しかける星語りとは違う、星剣の力を発揮するための力。それが、星語りだよ」

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