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第二十七話 作戦開始

たくさんの視線を感じながらオレ達は歩く。先頭に『絶対守護の刃アブソリュート・ガーディアン』を黎帝の先から出した白百合姫路。そして、その後ろをオレとフィラが。最後にクリスが歩いている。


本当ならいつ襲われるか分からない状況にオレ達は緊張していた。いくら襲われないと言ってもいつ敵が襲いかかってくるかなんて分からない。


オリジンを握り締め、誰にも当たらないように鞘には収めてはいるが、注意深く周囲を見渡している。


「さすがに不気味ですね」


クリスの言葉にオレは頷いた。魔物は人を襲うもの。ただし、例外の魔物もいるが、例外以外の魔物は人を襲う。そんな存在が囲んでいるのだ。


オレはオリジンから手を離し、荒い息で周囲を見渡しているフィラの手を握った。


「レイ?」


「大丈夫。大丈夫だよ。オレ達がいるから」


「ごめん」


「謝らなくていいよ。フィラはオレ達のために警戒してくれているんだから。警戒心は持っておかないと」


「そうね。レイ、左は任せたから」


「うん。右は任せた」


フィラがゆっくりオレの手を握って放してくる。


ちょっとくらいは楽になったかな。


「いいリーダーだね」


白百合姫路が振り返りながら笑いかけてくる。白百合姫路は戦い慣れしているからか緊張感はあまりなさそうだ。


その言葉にオレは苦笑した。


「リーダーかどうかは分からないけど」


「最初はそういうものだから。いくら最強が言ってもみんなの心には響かない。最強じゃないから、みんなの心に響くことがある。例えば、クリスティナがリーダーだったらどうなる?」


「クリスは王女だから従うと思うけど」


「そうだね。王女だから従う。だけど、本当に従う人はどれだけいる? それに、仲間は従うものじゃないから。本当にみんなを引き連れて戦うなら、最強はいても、リーダーは最高の方がいいよね?」


そう語る白百合姫路の顔は本当に楽しそうだった。まるで、自分のことを語るかのように。


そう言えば、白百合姫路って最高の英雄って呼ばれていたような。


「だから、白百合姫路は」


「姫路で言いよ。白百合の名前はちょっと嫌いだから。それに、もうすぐ善知鳥になるし」


「ああ、慧海と」


「そう。雪羽と正妻争いは熾烈だけど、私は絶対に勝つんだから」


そう言いながら拳を握りしめる姫路。なんというか、緊張感が全くないような気もするけど、それがわかって彼女はやっているのだろう。


フィラもクリスも少しは緊張が解けている。


「だから、姫路は『最高の英雄』なんだ」


「そう。最初の私はただの女の子だったんだけどね。黎帝に選ばれて、殺されそうになった時、慧海に助けてもらったの。でも、慧海も私を利用しようとする一人だったんだけどね」


「あなたを『最高の英雄』にするために?」


「そういうこと。私達の国は大きな戦いに巻き込まれていて、それを裏から操る存在を慧海は最初からわかっていたの。でもね、いくら最強の力を使っても戦いは終わらなかった。むしろ、酷くなっていく一方だった。だから、慧海は決心したみたい。この黎帝を使って戦いを止めるって」


黎帝の力だがどんなものかわからない。慧海の力もどれだけの強さかわからない。でも、戦いというのは本当に終わらすことが出来ないと言うのも理解できる。


これは昔の話だが、過去に大きな戦いがあり、その戦いの英雄は黒幕を一掃した。だけど、戦いは止まらなかった。黒幕を一掃しても憎しみが戦いの連鎖を断ち切らなかったから。


だから、英雄は戦った。戦って、最後は『血まみれの英雄』となって死んだ。


「戦いを止められるなら、私はこの手を汚す覚悟だった。でも、慧海は私に言ったの。誰も殺さず、誰も傷つけず、お前は英雄になれって。『絶対守護の刃アブソリュート・ガーディアン』の力を知ってしたからの発言だと思うけど、この力は私にとっては最高の力。みんなを守るための正義の剣」


「力が無ければ世界は救えず、力があっても世界を狂わす。善知鳥慧海はそのことを理解していたのですね?」


周囲を警戒しつつクリスが姫路に尋ねる。姫路はそれに頷いた。


「力だけで世界が救えるのは間違っているよ。それはただ抑圧しているだけ。慧海にも壮絶な過去があるから。このことは慧海の口から聞いてね。私が語るのは出来ないから」


「あなた達は本当に気楽よね。まあ、話を聞いていた私が言うことじゃないかもしれないけど」


フィラが呆れたようにため息をつくのとオレ達が前を見るのは同時だった。


見えてきたのは巨大な扉。ただし、破壊された扉。所謂、王宮への入り口。


「っつ」


クリスが小さく声を漏らす。オレは小さく息を吐いて頷いた。


「行こう。今は行くしかない。クリスは」


「大丈夫です。大丈夫ですから、私は、みんなを助けないといけないんです。救わないと」


「無理はしちゃダメだから。私は、無理をして体を壊した親友を知っているし」


姫路がゆっくりクリスに語りかける。クリスはその言葉に頷いて杖を握り締めた。


王宮への入り口は完全に開いているから大丈夫だけど、この中は大丈夫だろうか。いきなりあの統率固体の少年がいたら驚くと言うレベルじゃないし。


すると、姫路がゆっくり黎帝を振り上げた。そして、その黎帝の先から出ている『絶対守護の刃アブソリュート・ガーディアン』が一気に大きくなる。そして、それを振り下ろした。


音は無く、ただ、風を斬る音だけ。そう考えると音はあるけど、ともかく、切断する時が無音だったということ。姫路は続いて『絶対守護の刃アブソリュート・ガーディアン』を振る。さらに二回ばかし振った後、小さき息を吐いて黎帝を下ろした。


「斬る場所間違えた」


「いやいやいや。間違えたってどういうこと?」


「ほら、向こうに誰かがいた場合って怖いから、入り口を壊せばいいかなって」


確かにオレも怖いと考えたけどさ、入り口の壊し方が少し、いや、かなり大雑把過ぎるような。


すると、クリスがオレの横にならんだ。


「炎の叫び128」


嫌な予感がするんですけど。


「業火の理よ、ここに集いて全てを灰燼と成す炎を作り上げよ」


「はあ。水の生命24。炎を防ぐ防壁となれ」


クリスの詠唱とフィラの詠唱が重なる。そして、炎が放たれた。一直線に渦を巻く炎は門に直撃して爆発する。


その爆発はフィラが張った水の膜によって受け止められた。


「私達がいることを忘れていない?」


「忘れていませんよ。フィラなら必ず守ってくれると信じていましたから」


「当り前よ。で、そこの二人はどうしてぽかんとしているの?」


確かにオレと姫路の二人はぽかんとしていた。というか、ぽかんとしない方がおかしいと思うのはオレだけかな? クリスは何の容赦もなく禁呪クラスの魔法を平然と放ったし。


「まあ、傍若無人な火力は今に始まったことじゃないし。門が壊れたからには先に、ちっ。行けそうにないか」


姫路の言葉にオレは前を向いた。


爆発による煙が晴れた時、そこには一体の魔物がいた。狼というべきか、それとも、ライオンというべきか。ただ一つだけ言えることは、大きさが6m級の魔物でこの姿は見たことがない。


「門番、かしら?」


フィラがナイフを構える。その魔物はオレ達を見ている。


オレは静かにオリジンを鞘から抜いた瞬間、魔物が動いた。


後ろ脚を後ろの門に叩きつける。すると、至る所でひびが入り門が崩れ落ちた。その向こうに広がるのは豪華な廊下。


魔物がゆっくり背中を向けて歩き出す。


「どういうことでしょうか?」


クリスが不思議そうに尋ねてくるが、こういうことは初めて聞いた。まるで、門だけを守ったかのような感じだ。ただし、門番ではない。


「行こう。あいつが道を開けてくれたんだ。だから、オレ達は感謝しつつもなにもしない。向こうが何もしないならオレ達も何もしない」


「そうね。レイの言ううとおりだわ。先頭は私が行く。姫路は私の後ろをお願い」


「わかった。気を付けて」


フィラが先頭を歩き始める。オレはオリジンを鞘に納めて姫路の後ろを追いかけて歩き出した。


「奇妙だと思いませんか?」


クリスが眠たそうにあくびをしているあの魔物を見ながら言ってくる。


「確かに奇妙だけど、今はそれを考えている状況じゃないと思う。もうすぐ敵陣なんだから」


「そうですね。では、後でじっくり考えましょう」


「それには賛せ」


オレの言葉が唐突に止まる。それと同時にオレの歩みも止まった。


誰かが背中にぶつかるがそんなことは気にしていはいられない。何故なら、視界の先には少し汚れたメイド服を着た少女がいるから。


その少女の姿を見て、オレは完全に止まっていた。


「フィナ?」


その少女は、あのフィナに瓜二つだったから。

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