第一話 冒険者の少年少女
主人公が登場です。後、後書きでプロフィールを書いていきます。
町の酒場は独特だ。酒場というより情報屋と言っていいのかもしれない。街の酒場には重要な情報が集まりやすいのは今では常識だ。最初の頃はそれを知らず探すのが大変だったけど。
「いらっしゃい」
だけど、ここの酒場はまだ昼に近い時間だから人がほとんどいなかった。マスターの声に軽く会釈してオレはカウンター席に座る。
「飲み物はなんにします?」
「ミルクでお願い。もうすぐ来る連れの方がお酒を頼むから」
「わかりました。それにしても、見ない顔ですね。冒険者ですか?」
「まあね。まだ初めて半年の新人だけど」
出されたミルクを口に含む。人工的に作られたミルクだけど味は悪くない。もしろ、人工ミルクの中じゃかなり高品質なものだ。
「マスター、ココロダ山の話を聞いていいかな?」
ココロダ山は今滞在している町のすぐ南の方角にある大きな山だ。二ヶ月ほど前までは大きな山賊弾が縄張りにしており、何度も王国の討伐隊が出たが何度も返り討ちにあったとされる山。
ここを要塞にすれば攻めにくい地形なのだろう。
「もしかして、あそこに行く気ですかい?」
「まあね。依頼を受けたから」
そう言ってオレは依頼の表をマスターに渡した。
これは冒険者ギルドが発行するクエスト受諾表だ。そこに書かれたクエストをしっかりこなせば報酬がもらえる。国もバックについているため上級者の冒険者は引退してからかなり裕福に暮らしているらしい。
「ココロダ山の調査。300万エルト? 確かにあの山に入ったものは未だに生きて帰った者はいませんが」
「やっぱりなんだ」
二か月前に山賊団が全滅してからあの山に入ったものは誰も帰ってきていない。冒険者も、傭兵も、軍隊も、民間人も、誰も帰ってきていない。
だから、300万エルトなのだろう。二年間ほど遊んで暮らせる大金を報酬にしている。
すると、酒場のドアが開いた。オレとマスターがそちらを振り向き、マスターの顔が固まる。
そこにいたのは波打った金髪の少女だ。背の高さは140cmほどでかなり小柄だが、その背中には160cmほどの杖が背負われており、服装は冒険者御用達のジャケットとズボン。そして、身につけている軽装甲には一つのエンブレムがある。
二本の剣を交差してその背景に翼を広げた鷹がいる。
「クリス、遅かったね」
「すみません。お父様の使いの方とお話していたので。あっ、お酒、アルコールが弱めでマスターのおススメをください」
「は、はい。かしこまりました」
「硬くならないでください。今の私は冒険者ですから」
マスターがカチコチになりながらカクテルを作ろうとする。その様子を見ながらオレは小さくため息をついた。
「クリス、それは無理だって」
「ですよね」
クリスはしょぼんと視線を下げた。オレはミルクの入ったコップを持ち上げる。
「どんな話だったの?」
「いつもの話です。元気にしているのかとか、お金は大丈夫かとか」
「いつも通りだね」
クリスの父親は親バカと誰もが言うくらいに親バカだ。でも、自分のやることを全く見失わずに親バカをやるのだからその姿勢は誰もが尊敬している。
オレだってああいう親になれたらいいけどね。
「レイは何か情報が聞けました?」
「やっぱり、噂は本当みたい。どうする? オレ一人で行こうか?」
「レイ一人で行けば行方不明者の仲間入りです。私も行きます。リスクを承知で依頼を出しましたから」
オレが受けたクエスト。その依頼を出したのはクリスだ。
ココロダ山の調査を行うと書いてあるが、正確にはクリスと一緒に調査を行うということになる。だから、大人数ではなくソロで冒険者をやっている人。なおかつ、下心なくクリスと接することが出来る人。そして、年齢の近い人物。
その全てに合致したオレがクリスと一緒に言うことになった。
「カクテルでございます」
マスターがクリスにカクテルを渡す。クリスはそれを受け取って口に含んだ。
「あっ、おいしい」
「ありがとうございます、姫様」
「本当においしいです。レイ、調査が終わったらまた来ませんか?」
マスターが呼んだ、姫様という言葉。クリスの本名はクリスティナ・アピニオン。二本の剣と背景の鷹が印象的なアピニオン王家の第三王女だ。王位継承権は大体12番目くらいだからこういうことが許されている。
オレは頷いた。
「そうだね。マスター、他にココロダ山の情報はない?」
「地図なら。それ以上のものはさすがに集まりません。帰って来た人がいないので」
そう言うとマスターは地図を渡してきた。オレはそれを受け取ってクリスと一緒に見る。
深い渓谷やら高低差の大きな場所など、一目見るだけでココロダ山がどれだけ動きにくい地形かわかる。でも、一か所だけ存在する空白の場所。
「ここはなんでしょうか?」
「多分、山賊の本拠地付近じゃないかな? 山賊が近くにいたから調べることが出来なかった。今では誰も帰らないから空白」
「確かにそう考えれば納得できますね。でも、どうやって行きます? 真正面からでは危険性が高いと思うので」
「そうだね」
オレは地図の全体を見た。一番簡単なルートは山の中にある道うを使っていけばいいけど、それ使えば行方不明になるのは確実だろう。
だったら、別のルートで行かないと。
「このルートかな」
オレが指さしたのは渓谷だった。
「このまま川をさかのぼり上流に行く。そうすれば何か分かるかもしれない」
「レイ、ここは歩けるような場所じゃないと思うんですけど」
地図上の表記だと確かに歩くような場所じゃない。でも、オレは笑った。
「オレ達は冒険者だぜ」
主人公
レイ・ラクナール 17歳
身長170cm 体重59kg
武器:片手剣
ポジション無し
得意魔法属性無し