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第二十話 王都侵入作戦

地味に神剣について語っています。

「王都からの隠し通路は実に23種類存在しています。ですが、基本的にはそのほとんどが周囲につながっている道で、とある隠し通路を除いて全てが王都だけ孤立した場合は想定していません。もちろん、王都だけが占領された場合も」


ギルバートを先頭にオレ達はクリスの案内で要塞都市から王都につながる隠し通路を通っていた。


先頭をギルバート。次に、クリス、オレ、フィラ、クロハの順でもある。


「一つだけはなにか国の大事なものを隠している場所につながっているんだね」


「はい。それは国王のみ継承されるもので、それは国王の証では無いものだと聞いています。お父様からは私には教えることはないだろうと言っていましたが」


「まあ、クリスの王位継承権を考えたら妥当だよね」


オレはそう答えながら周囲を見渡す。ちょうど人が二人ほど横並びで通れるくらいの大きさ。だから、オレ達は一列になって歩いている。


そんな隠し通路があるなら一度は行ってみたけど、それはしない方が無難かもしれない。というか、見つかったら確実に処刑になるような。


「なるほど。大体は予想出来るよ」


だけど、ギルバートは何があるかはなんとなく把握しているらしい。


「国にとって象徴となるのは基本的に神から授かったものであるのが普通だからね。おそらく、この国には魔法を越えた力を発揮できるもの、つまりは僕の持つラファルトフェザーや今はレイが持つオリジンのようなものと同じ存在か、金銀財宝のどちらか」


「確かに、あなた方の武器はかなり特殊なものですね。神剣とは一体何ですか? 私達が知るような伝承にある神剣とは少し、いえ、かなり違うものであると私は思っています。フィーナは言葉を濁していましたが、あなたなら答えてくれるだろうと思っていますので」


「そうだね。出来るだけ言いふらさないと確約してくれるなら僕は語るよ。どうだい?」


オレはその言葉に頷いた。クリスも頷いている。おそらく、フィラも頷いているだろう。


「そうだね。まずは神剣が生まれた経緯から。神剣はそもそも強大な力を持った神が神によって砕かれた時に人々に配られた力の破片が力となった姿なんだよ」


「人々に配られた力の破片? じゃあ、破片でありながらギルバートの刀やオリジンはそんな力を持っているのなら、神はどんな力を」


「先に言っておくけど、僕の神剣とフィーナのオリジンは少し産まれた経緯が違う。基本的には神剣はここまで強力じゃない。限定的な能力特化したものが基本だ。その中で一番有名なのはスターゲイザーかな」


「星を見る人?」


クリスが不思議そうに首をかしげる。確か、古代の言葉でスターゲイザーとは星を見る人と訳されたはずだ。スターゲイザーというのは別に意味を持っていて星の記憶を知る星語りに贈られる名前だとも聞いている。そんな名前がどうしてギルバートの口から。


すると、ギルバートは驚いたように振り向いていた。


「スターゲイザーを知っているのかい?」


「はい。この国を作った始祖はスターゲイザーと呼ばれていましたから」


「なるほど。いや、今はいいか。話を戻すよ。スターゲイザーという神剣はとある重い病に侵された少女が星を見たいと言う願いから生まれた神剣なんだ」


「ちょっと待った」


フィラが声を上げる。フィラが上げていなかったらおそらくオレかクリスのどちらかが上げていただろう。それほどまでに自然と言われた。


「どういうこと? あなたは力の断片と言っていたけど、それはまるで望みを曲解して生まれた神剣ということ?」


「そうだよ。神の力を配った神々はそのことに恐怖したらしい。元々は神の力を分散させることで僕達人間に影響を与える神を排除する目的だったのに、その力によって人は神に対抗する力を得てしまった。その中でもスターゲイザーは破格の能力を持っていた。それこそ、神が畏怖するほどに」


「一体、どんな力を」


フィラが息を呑む。神が畏怖するほどの能力というのは一体どのようなものだろうか。


「星の光を呼び出す能力だよ」


「どういうこと?」


フィラの言葉で弛緩していた空気が緩くなったような気がした。緊張感は張り詰めているけど。


「その言葉通りの意味だよ。光を呼び出す。そして、相手にぶつける。シンプルな能力なんだけど、そもそも、神が星に勝てるわけがないんだよ。だから、神は畏怖した。神剣というものに。そもそも、神はすでに別の神剣に畏怖していたけどね」


「それがオリジン等なのですね」


クリスの言葉にギルバートは頷いた。


「原初神剣。世界に五本しか存在していない。それを知るものは極めて少ない。そして、その全てを知る者は今ではおそらく僕一人だろう。それほどまでに神にまで畏怖された神剣なのだよ」


「ギルバート。それを知るお前はなんなんだ? まるで、神とでも言うかのような発言なんだけど」


オレの言葉にギルバートが振り返って、そして、頷いた。


「そうとも言えるね。それが僕の神剣の力だから。さて、そろそろだね」


ギルバートが鞘から黒い刀を抜く。


「この刀、ラファルトフェザーとクロハの刀、シュナイトフェザーは二つで一つ。それが一つになった時、原初神剣を除く中で二番目に強い神剣が出来上がる。だから、僕は本当ならこう名乗らないといけない存在なんだ」


ギルバートが目の前に現れた壁に対してその手に持つラファルトフェザーを振り抜いた。ラファルトフェザーは壁を砕き、その先にいた魔物の一体、大きい豚であるピグマを斬り裂いていた。


そのままギルバートが通路に跳び出し周囲を確認する。そして、小さく息を吐いて振り返った。


「『伝承の担い手』。それが僕に与えられた神証だ。さて、ここからは土地勘のある君達が」


「やはりここから君達が来たか。隙間風があるから来るとは思っていたけど」


その言葉が通路に跳び出したオレ達の耳に入った。振り向いた先にいるのは笑みを浮かべている統率固体の少年。


いきなり敵の大将と当たるとか僕達はどれだけ不運なのだろうか。


「分身だね」


ギルバートがラファルトフェザーを構えながら少年に言う。少年は軽く肩をすくめた。


「君には僕の力が知られているのだったね。なら、仕方ない。そうだよ。僕は本体じゃない。力もかなり落ちているから、君には太刀打ちできない。でも、ここに魔物を呼んだ。ここからなら君達が通ってきた道を使って侵攻出来るんじゃないかな?」


「そうですね」


クリスが笑みを浮かべながら杖を構える。そして、一瞬で魔法を放っていた。


最も初歩の初歩魔法であるマジックアロー。その威力は人の張り手ほどの力しかない。だから、案の定、少年はマジックアローを避けた。


「そんな攻撃じゃ当たらないよ」


「皆さん、走ってください!」


その言葉に真っ先に反応したのがギルバートだった。そして、オレ達も走り出す。クリスは一番最後。


「物質の記憶110! 我が求めに応じ、壁と成せ!!」


クリスが使える最大級の魔法の一つが出来上がった。周囲の壁が鳴動し、クリスと少年を塞ぐように壁を作り出す。一瞬だけ止まったクリスの体を僕は抱えて駆けだした。


今のクリスは軽装甲なので少しの間なら抱えて走ることが出来る。


「ありがとうございます」


その言葉と共にオレはクリスを下ろす。


「クリスは一体何を」


「そうですね。例えば、隠し通路が見つかった場合、又は、隠し通路から逃げてきた場合、そこから侵入されない、又は、追手から逃げるためにはどうしたらいいと思いますか?」


その言葉にオレは首をかしげた。ギルバートは先頭でクロハと一緒にラファルトフェザーとシュナイトフェザーをお互いに振って道を作り出している。


その姿は必死。いや、切羽詰まった表情だ。つまりは、


「通路を破壊する?」


「はい。マジックアローで押したスイッチはこの通路を崩落させるスイッチです」


そう、満面の表情で言われた。それと同時に背後から何かが崩れる音がだんだん近づいてくる。


「それってマジでありえないんだけど!!!」


フィラの叫びが響きわたる。それに関してはフィラに本気で賛成しよう。というか、オレ達生き残れるのか?


「階段だ!」


ギルバートがその言葉と共に横に曲がる。オレ達も続いて道を曲がって階段に突入した。


「ちなみに、階段も崩れるようになっているので」


「気楽な表情で言わないで!!」


また、フィラの言葉が響き渡る。


もしかしたら、エンシェントドラゴンと戦うよりも悲惨な状況かもしれない。だから、オレは全力で走る。生き残るために。

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