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第十七話 統率固体

プダズタの鎌を剣で受け止める。受け止めると言っても切れ味がかなり高いため鎌を簡単に切断するけど。そのままオレは地面を踏みしめて回転しながらプダズタの頭部に剣を突き刺した。


まるで豆腐を裂くような感覚で断ち切り、すかさず剣を跳ね上げる。ちょうどそこにいたユゲンの体を断ち切ってオレは後ろに下がった。


「数が多い」


一歩前に踏み出しながらオレは小さく呟く。


フィーナとギルバートの同時大技によってかなりの数を削ったもののそれでも魔物の数はかなりの数字が残っている。


突き刺す。切り払う。薙ぎ払う。断ち切る。


様々な動きを駆使して魔物を倒していくけど、休みのない怒涛の攻撃にだんだん後ろに下がってしまう。


「くっ」


プダズタの鎌をギリギリで回避した瞬間、何かが横から高速で飛びかかってきた。避ける間もなくその突撃を受けてオレの体は吹き飛ばされる。


「レイ!」


吹き飛ばされた瞬間にフィラが吹き飛ばしてきた何かをメイスで叩き割ってオレの近くまで下がる。


「大丈夫?」


「何とか。みんなは?」


「リークとガイウスは一緒に戦ってる。二人は相性がいいから」


ガイウスは一撃が極めて強力だが隙は大きい。リークは一撃が弱いが防御に関しては盾を持つため強い。上手く組み合わせたら確かに強い。


「レイは弱いから気をつけないと」


「弱いけど」


立ち上がりながらフィラの横から飛びかかったプダズタの両腕の鎌を斬り飛ばし、返す刃でプダズタの顔面を断ち切った。


「魔物相手なら戦える」


魔物の戦闘能力は成人男性で四分の一。もちろん、魔法を使っての話にはなるがオレで換算したならちょうど同じくらい。


だったら、技術で稼げばどうにかなる。


オレはぬめぬめして地面を滑る気持ち悪いアリオカの頭部に剣を突き刺した。


アリオカは槍を放ってくるので、気をつけていないとそれでやられやすい。


すかさず突き刺して剣を真上に上げてユゲンを迎撃する。地上と空のどちらも気をつけないといけないのが辛い。


魔物の大半がプダズタだから戦闘能力も普通に高いし。


「やっぱり、レイは頼りになるわね」


「そうかな?」


フィラが魔物を三体倒す間に一体くらいしか倒せないのに?


「後ろにいてれば頼りになるということよ」


「それはありがたいね」


剣を握りしめながら飛びかかってきたユゲンに向かって一閃する。ユゲンは真っ二つに断ち切られ後ろに転がって行く。


だけど、その瞬間にはプダズタが鎌を振るっていた。とっさに後ろに下がるがプダズタの鎌が僕のわき腹を浅く裂いた。


「っつ」


足に力を入れて踏み出して剣をプダズタに突き刺す。そして、抜いた。


わき腹の傷は浅いけどぱっくりいっている。戦闘出来るような傷じゃない。


「レイは後ろに下がって!」


フィラはメイスからナイフに持ち替えて怒涛の勢いで切り裂いていく。


フィラもそう言っている。だが、だからと言って下がれるような状況じゃない。


オレは痛みをこらえて前に踏み出した。


「時の針103。時を刻み込み、全てを断絶せよ」


その言葉と共に前方にいた魔物の大半が真っ二つにズレて血を吹き出した。


オレは慌てて振り返る。そこには数は少ないが近衛騎士団に囲まれたクリスの姿があった。


「レイ! 無事ですか?」


「大丈夫。何とか」


傷口を押さえながら後ろに下がる。すると、クリスはオレに駆け寄って傷口に杖を当てた。


「水の生命107。傷を癒やし、安らぎを与えよ」


傷口が一瞬で閉じる。相変わらずクリスの魔法の技術はかなり高い。高難易度の三桁番号の魔法を軽々と操るなんて。


クリスはホッとしたように息を吐いて杖を離した。


「今は戦力に限りがあります。戦ってくれますか?」


「クリスの言うままに」


オレとクリスは笑みを浮かべ合う。そして、オレは前に向かって踏み出した。


後ろに下がったフィラの代わりに前に出て剣を一閃する。この剣はただ振り回しているだけでも強い。援護が来た上に、前方の魔物が消え去った以上、後は乗り越えてくる魔物を倒しておけばいい。


その瞬間、風が舞った。いや、違う。フィーナが駆けたのだ。その手にはオリジンと氷の剣が握られている。


オリジンが横一閃され、魔物が凍りつく。凍りついたと思えば氷の剣が振られ、凍りついた魔物が氷の断片となって砕け散って吹き飛ばされた。しかも、吹き飛んだ断片は氷の凶器となって魔物の群れに突き刺さって血を散らす。


うん。クリスを上回る凶悪っぷりだ。


フィーナは小さく息を吐いてオレの隣にまで下がってきた。


「レイ、大丈夫?」


「フィーナこそ、大丈夫?」


「私は平気。相手はまだ弱いから」


その言葉と共にフィーナが振り返りながらオリジンを一閃する。ただ、それは魔物を斬るためじゃない。その一閃大量の氷の槍が出来上がっていた。そして、次の一閃がその槍を放つ。


槍は的確に魔物を貫いていた。


「やりますね。炎の叫び102。全てを貫く槍を今ここに!」


クリスも大量の氷の槍を放つ。それはフィーナが倒し損ねた魔物を全て倒した。


なんというか、この二人がいればオレなんて必要ないような気もするけど。


「クリスこそ。魔法師としては惜しい腕を持っているよ」


フィーナが地面をかける。オレもそこに追随しようとして、


『ダメ』


頭の中に声が響いた。思わず頭を押さえてその場に膝をついてしまう。


一体、今何が。


『言ったらダメ』


その言葉は女の子の声。優しく、寂しそうで、それは、要塞都市の方角から聞こえてくる。


「レイ? レイ!?」


クリスの声が耳に響く。オレは奥歯を噛み締めて立ち上がった。大丈夫だ。まだ、戦えるから。


「ダメだよ。君は、後の君の相棒の声には従わないと」


オレに向かってきていた二人の声が聞こえる。その声にオレは顔を上げた。


そこにいるのは笑みを浮かべた少年。ただ、気配があの少年に似ている。エンシェントドラゴンが化けた姿の少年に。


それよりも、いつの間にこのような場所にいるんだ?


「さもないと、ここで死ぬよ?」


その瞬間は見えていなかった。突き飛ばされたと思った瞬間に何かの突風が舞う。顔を上げたそこには宙を舞うフィーナの姿があった。フィーナがオレの前に落ちて頭から血を流す。


「フィーナ!」


オレは手を伸ばしてフィーアに駆け寄ろうとした。だけど、オレの前を少年が塞ぐ。


「ようやく見つけたよ」


少年の顔に笑みが浮かぶ。


「『星語りの騎士』」


「レイ!」


ギルバートの声にオレは後ろに下がった。そこに神速の速度を持ってギルバートが少年に突撃する。だが、少年の腕はギルバートの持つ白の刀を受け止めていた。


「シュナイトフェザーか。この世界の神剣ではなかったと記憶しているんだけどね」


「ああそうだ。僕こそ驚いているよ。どうしてお前がこの世界にいるのかも。お前は僕がこの手で倒したはずだ!!」


「おやおや。君は別の僕からの説明を忘れたのかな? 僕を倒すなんて人間には百年いや、後三年くらいは早いよ」


少年が腕に力を込める寸前でギルバートが後ろに下がる。そして、ギルバートは両手に持つ刀を一つの剣とした。


「ならば、この場でもう一度お前を倒す」


「おや? いいのかい? 僕は要塞都市を背後にして戦うよ」


その言葉にギルバートが顔をゆがめる。ギルバートの大技はどうやら背後に都市があえればそれも巻き込むらしい。


オレは剣を握り締め少年に向かって構えた。


すでにフィラとクリスの二人や近衛騎士団も少年を囲むように布陣している。


だが、そんな中でも少年は笑みを浮かべていた。


「君達は僕に抗おうというのか。まあ、いい。ギルバート。君が一番、僕が本気を出したらどうなるかわかっているんじゃないかな? それに、ここに善知鳥慧海はいない。白百合姫路もいない。たった一人で僕を食い止められるとでも」


「思っていないよ。でもね、僕は食い止めないといけない。お前を動かしていればこの地が大変なことになる。僕は王として、騎士として、お前を命に代えても倒す」


「なるほど。そういうことか。興ざめだよ」


その瞬間、その瞬間、何かの遠吠えが響き渡った。それと共に要塞都市に向かって侵攻していたはずの魔物が動きを止めて身を翻して戻りだす。それをオレ達は呆然と見ていた。


「今回は君に免じて引いてあげるよ。でも、次はこうはいかない。次に会うのは多分」


少年が笑みを浮かべる。


「人と魔物の最終戦争の時かな?」


そして、少年の姿がその場から消えた。


ギルバートは小さく舌打ちをして白黒の剣を鞘に収めた。


「逃げられた」


「ギルバート」


オレはギルバートに駆け寄る。クリスがフィーナに駆け寄っているからフィーナは大丈夫だろう。


「今の相手は」


「僕の宿敵。あいつが、魔物の統率固体だ」


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