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第十六話 魔物の進撃

「なるほど、王都が落ちたかもしれないからか」


オレ達は旅の仲間に一時だけギルバートとギルバートと一緒にいた少女であるクロハの二人と共に要塞都市に向かって走っていた。


どうやらギルバートは王都に向かっている最中でオレ達を見つけて助けてくれたらしい。


「まだ確約はしていないけど。オレ達だって王都が落ちただなんて信じられていない。今は要塞都市に向かわないと」


「要塞都市なら王都の様子が見れるんだね?」


「要塞都市から王都は見える。だから、王都がどんな状態なのかわかりやすいはずだから」


「なるほど」


ギルバートは納得したように頷いて鞘に収まっていた黒の刀を抜き放った瞬間、茂みから飛び出したプタズタが両断されていた。


先頭にいたフィラが足を止めようとするけど同じように先頭にいたクロハがフィラの手を掴んで走らす。


「ここで止まらない方がいい」


クロハも白い刀を抜き放つ。それと同時に道を塞ぐようにプタズタの群れが前を塞いだ。


「囲まれているから。白の斬撃!」


クロハが声を上げた瞬間、プタズタの頭部が空を待った。そこにクロハが飛び込んで黒のプレートアーマーでプタズタの死体を弾き飛ばしていく。


背後を振り向けばやはりプタズタの群れ。フィーナがオリジンの柄に手を置く。


「こんなところにまで魔物が」


僕は後ろを振り向きつつ剣を抜いて肩に担いだ。そうした方が走りやすい。


要塞都市が近いというのに魔物がいるということは魔物が進軍しているということだ。どうりで近衛騎士団が自称国王を守っているわけね。


「レイ、都市まで後どれくらいかな?」


「大体10分くらい」


「そんなに近くまで」


ギルバートは驚きながらも黒い刀を振る。すると、黒い刀は直線上にいたプタズタの体を握り潰すかのように捻り潰した。


どういう原理で起きているかわからないけど、あれがフィーナの持つオリジンとよく似たものであるとはわかる。


「一体一体の戦力は低くても、やはり数が多いね。こういう時に慧海がいてくれたら」


「エカイ?」


「うん。僕の旅の仲間にして親友で、戦場では一番頼りになる男。数の差がある場合は慧海一人がいてくれればかなり楽になるんだけど」


ギルバートはそう言いながら振り返る。それにオレも振り返った。


そこには長い足を使って跳躍するユゲンの姿があった。ユゲンは跳躍によって相手を踏み潰し、体液を吸う。もちろん、あんな大きさに体液を座れたら一瞬で死ぬだろう。


問題は、ユゲンがプタズタと共に行動しているところだ。


「相手は敵の敵は味方って根性だよな」


「なるほど。どうりで巨大カマキリと超巨大ノミが協力しているわけだ。興味深いね」


「興味深いじゃないからな! ユゲンは足が速い。追いつかれたら」


「フラッシュアロー!」


その瞬間、ギルバートの言葉と共にいくつもの光の矢がユゲンの大軍及びプタズタの大軍を貫いた。


魔物の群れの中で魔物の血が飛び散る。


それに群がるように様々な魔物が飛びかかっていた。もちろん、共食いなんて関係ない。


「何つう威力」


「クロハの方が威力は高いよ。僕は魔術は苦手だからね」


「魔術?」


オレが首を傾げた瞬間に近くの茂みで音が鳴った。オレはすかさず肩に担いだ剣を振り下ろそうとして、茂みから現れた何かとぶつかった。


オレはその場に倒れてしまう。


「レイ!」


フィーナの声にオレはぶつかった何かを見た。そこにいたのは女の子。ただし、背中に巨大な蒼い斧を背負った髪の短い女の子だ。


「君は」


女の子が微かに怯えて背中の斧を掴み、そして、背後に向かって一閃した。


轟音。


いや、そんなレベルじゃないかもしれない。爆発は一瞬にして森を吹き飛ばし、森の中にチラッと見えたプタズタの群れを蹴散らしていた。


「メリル、無事だったかい?」


ギルバートが女の子に駆け寄る。メリルと呼ばれた少女が頷く。


「ギルバートとクロハこそ。姫路は?」


「多分、王都。僕達はその王都が見える要塞都市に向かっているよ」


「要塞都市には行かない方がいい」


メリルがオレの体を掴むと無理やり立ち上がらせる。もの凄い力に引っ張られて立ち上がってからも体勢を崩し、フィーナに受け止められる。


もちろん、オレ達の顔は赤くなった。


「要塞都市に魔物の大軍が向かっている。量からして攻め入れば落ちるのは時間の問題」


「メリルの力でも?」


「統率個体にエンシェントドラゴンがいた。さすがに、今の私でエンシェントドラゴン五体は辛い」


その言葉にオレはフィーナの顔を見た。


エンシェントドラゴンはオレが出会った中でも最も強かった相手。そんな相手が魔物を統率しているなんて信じられない。


だけど、要塞都市にはたくさんの人がいるはずだ。そうなればたくさんの人が死ぬ。


フィーナも同じことを思ったらしく頷いてくれる。


「全く。レイ、フィーナ、あなた達は二人の世界を作らないでくれる? 置いていくわよ」


フィラが呆れたように溜め息をついて歩き出す。その後ろをリークとガイウスが続く。


どうやらオレ達の考えは完全に同じらしい。


オレはそれに苦笑しながらも歩き出した。


「待って」


だけど、ギルバートの声によってみんなの足が止まる。


「エンシェントドラゴン相手では君達は辛いよ。特にレイは無理だと思う。これから行こうとしているのはただの自殺行為」


「自殺行為でも何でも、オレ達は行くさ」


オレは振り返って笑みを浮かべながら答える。


「そうですね。要塞都市にはたくさんの人がいます。僕達も防衛に参加しないと」


「それに、私達は冒険者よ。国から守ってもらっているのに国を守らない方がおかしいわ」


「そうだな。それに俺は貴族でもある。貴族の役目は民を管理し養うこと。ならば、少しは本気を出してもいいだろう」


確かに死ぬかもしれない。自殺行為かもしれない。逃げ出したいという気持ちはある。


名声のために戦うのでも報酬のために戦うのでもない。オレ達はただ、自己満足のために戦う。


「ギルバート。確かにあなたの言うことは正しい。だけど、それが全てで世界が動くわけじゃない。王のあなたは自分の身が大切かもしれないけど、私達は守りたいから戦うの」


フィーナの言葉にギルバートは降参という風に両手を上げた。そして、小さく笑みを浮かべる。


「クロハ、シュナイトフェザーを返してもらってもいいかな?」


「はい」


クロハが白の刀を鞘ごとギルバートに渡した。ギルバートはそれを受け取って腰に身につける。


「クロハとメリルは追いかけてくる魔物をあしらいながら追いかけてくれる? 僕は彼らについて行くよ」


「エンシェントドラゴンには気をつけて」


「ありがとう、メリル」


ギルバートは歩き出す。一歩踏み出した瞬間にギルバートの気配が変わっているのがわかった。まるで、ギルバートが王である姿を体現したかのように。


思わず片膝をつきそうになる。ガイウスにいたっては片膝をついて臣下の礼を取っていた。


「僕は王であると共に一人の騎士だ。騎士は民を守るもの。だから、僕も戦うよ。行こう。要塞都市に」


「ギルバートは戦えるのか?」


オレは笑みを浮かべながら疑問を口にする。だが、答えたのはフィーナだった。


「ギルバートは強いよ。多分、私の次くらいに」


「おや、僕はかなり強い自信があるけど?」


「あなたの強さは知っているから。伝承を紡ぐ者」


フィーナの言葉にギルバートは微かに目を見開いた。そして、嬉しそうに笑みを浮かべる。


「さすがは初源の騎士。僕のことを知っているんだね」


「ええ。レイ、彼の力は大丈夫」


「何か会話が気になるけど今はいいか」


オレは頭をかいて走り出す。それと同時にみんなも走り出した。


もちろん、一番遅いオレに合わせてみんなは走ってくれる。


「そろそろ森を抜けるな」


ガイウスの言葉と共にオレ達は開けた大地に出た。前にあるのは巨大な壁によって都市自体が要塞となった要塞都市グラザム。


そのグラザムに攻め入ろうとする黒い大軍、いや、魔物の群れ。その魔物の中には確かにあのエンシェントドラゴンを彷彿とさせるような姿のドラゴンがいた。


対する要塞都市を守る軍勢は半分くらいにしか満たない。エンシェントドラゴン相手には数が不足すぎる。


「作戦はどうする?」


フィーナがオレに話しかけてくる。この状況ではフィーナとギルバート二人を頼りにしないと駄目だから、


「フィーナとギルバートは最大技をいきなり放って。それからオレ達は要塞都市を守る軍勢と合流する」


そこからが本当の戦いとなる。


すると、フィーナとギルバートがほんの一瞬で前に出た。そして、フィーナはオリジンを、ギルバートは半分が黒、半分が白の剣を握っている。


「「我が名において命じる」」


二人の声が重なった。


フィーナはオリジンの刃を地面につけ、ギルバートは剣を振り上げている。


「始まりから存在する原初の氷よ。その身をここに現し全てを砕く力を見せよ」


「伝承の狭間において存在する力。その力をこの地この時に具現せよ」


フィーナとギルバートが高らかに声を上げる。


「その名をここに、今、呼び出す!」


「全てを断ち切る断絶の刃!」


そして、フィーナが飛び上がりながら地面をえぐるようにオリジンを振り上げた。対するギルバートは剣を振り下ろす。


「オリジン!!」


「シュナイデン!!」


その瞬間、オレ達は信じられないものを見た。


オリジンに斬られた地面から氷が出現し、地面を砕きながら華を咲かせつつ突き進み魔物の群れに直撃した瞬間、それはさらに巨大な氷の華と化した。


氷の華には大量の魔物が貫かれ、そこには貫かれたエンシェントドラゴンの姿すらある。だが、エンシェントドラゴンはまだ生きていた。


対するギルバートの方は一瞬だった。


斬撃が地面を砕きながら魔物の群れを通り過ぎた瞬間、その周囲にいた魔物が捻れて潰れたのだ。もちろん、斬撃によって斬られた魔物はエンシェントドラゴンだろうが何だろうかスパッとズレている。


これにはエンシェントドラゴンすら生きていない。


フィーナとギルバートは同時に武器を鞘に収めた。


「じゃ、行こうか」


爽やかな笑みを浮かべるギルバートにオレ達は頷くことしか出来なかった。


ギルバート・F・ルーンバイト 17歳

163cm 54km

武器:シュナイトフェザー ラファルトフェザー

ポジション:フロント

得意魔術属性:光

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