8話 ガイドロボット
アレックスは、宇宙ステーション内のオールドタウンにやって来た。
今回の仕事が腑に落ちないアレックスにとって、このタウンの存在は嬉しかった。
元々、歴史や考古学が好きなので、想像力が掻き立てられるのだ。
二百年ほど前、オールドタウンはかなりにぎわっていたらしい。
当時は惑星植民地時代の後期で、その名残もある。
時代が変わり、来る人も無くなった今は、たまに来る船の乗組員が、給水中にちょっと寄るだけの場所でしかなく、閑散としている。
皆、自分の船で寝泊りするので、宿は閉まったままだ。
ほとんどの娯楽施設も閉じていて、軽く気分転換の出来る店だけがオープンしている。
一見、ゴーストタウンのようだけれど、きちんと管理されている。
まるで博物館の中に迷い込んだように思えるそのタウンは、古い本でも開いたかのような匂いがした。
「何かお捜しですか?」
アレックスは、急に、後ろから呼び止められた。
振り返ると、そこには等身大の古い人型ガイドロボットがいた。
頭から出た二本の長いアンテナが特徴で、姿は人というより二足歩行の虫に近い。
もちろん手と足は二本ずつで、六本足ではない。
「いや、ただ古い町並みを見ながら、ぶらぶらしているだけさ」
アレックスは答える。
「そうですか、では、お楽しみ下さい」
そう言って、ガイドロボットは方向を変えようとする。
「ちょっと待て!」
アレックスの呼びかけにロボットは向き直った。
「何でしょう?」
「ここの歴史についての資料は持っているのか?」
「はい、データがございます」
「では、とりあえず、街を案内してくれ。
おまえに名前はあるのか?」
「私の登録番号でしたら、人型ガイドロボットMPPY536・・・」
「もう、いい、ゾーイにする。
とにかく、時間はたっぷりあるから、知っていることは何でも教えて欲しい」
カイは、一日目で水質検査を済ませると報告書を作り、二日目は水圧制御室へ行くと言って出かけた。
彼の仕事はすでに終わっている。
とは言うものの、任務はまだ終了していない。
そのことが、彼をより無口にさせていた。
カイは水圧制御室の近くに来ると、乗っていた作業用カートのエンジンを切り、通路に降り立つ。
この付近で作業をしているロボットはいない。
静かだ。
通路は、長く遠くまでまっすぐに伸びているのだけれど、幅の広さの割に天井はさほど高くない。
圧迫感がある。
ふと、どこからか、水の滴るような音が聞こえ、こだました。
カイは振り返るが、そこには誰もいない。
さらに水のパイプは近くにはなく、良く管理されたヴェラムで水漏れもあるはずはない。
カイは前を向き歩き始める。
そして水圧制御室を通り越すと、その先の資料室にこもった。
「カイ、もう六時間も連絡していないぞ、どうかしたのか?」
ミニ・コムからのキースの声に、カイははっとする。
「ああ、すみません。
つい、時間が経つのを忘れて」
そこをランがさえぎった。
「カイ、あなた、今、どこでアクセスしているの?」
「どうした?」
キースが聞くと同時に、カイの答えも返ってきた。
「水圧制御室近くの資料室です」
ランは手元のキーボードを忙しく打ちながら言った。
「誰か他に、ここのデータベースにアクセスしているのがいるわ。
しかも、かなり深く」
「だれだ、そいつは?」
キースは、ランの見ているスクリーンを覘く。
「このチーム以外にだれもいないはずだし、ジェイクとニキは作業中だ。
他に侵入者がいるってことか?」
答えが出た。
ランが読み取る。
「・・・え~と・・・えっ? パブリック・ライブラリー!?」