7話 シャトル機
アレックスは、シャトル機の点検のため格納庫に入った。
ライトの明るさが増すにつれ、広い格納庫の中にある二機のシャトル機が新品の輝きを強めていく。
そしてもう一機、作りかけなのか解体中なのか分からない状態のシャトル機があった。
そこでは、数体のロボットが忙しく働いている。
アレックスは、一機目に近づくと機体の側壁に手をかけた。
「最新式の小型シャトル機か~、まあ、それもいいけど。
できれば、博物館にありそうなアンティーック・シャトル機の残骸だけでも残ってて欲しかったね・・・
三機目も最新式のようだし、他の部品はどこにいったんだろ」
そして辺りを見回す。
二機と半分のシャトル機、そしてロボットが働いている辺り以外には何もなく、がらんとしている。
「以前は、たくさんのシャトル機や何やらがあったんだろうな。
ま、人もいなけりゃ、あるだけ無駄ってもんさ」
アレックスは、一台目の中へ入り、操縦席に座ると点検を始める。
そして、突然、眉を潜めた。
「おい、キース!」
アレックスは、ミニ・コムでキースを呼んだ。
「このシャトル機は二機とも潜水用じゃない!
それなのに、自動操縦の航路はウォーター・プラネットにだけ設定されている。
これじゃあ沈没するぞ!」
突然、怒鳴られたキースは、驚いた様子もなく返答する。
「ああ、それは潜水用じゃない。
発進に支障がないかだけ見てくれればいいから言ってなかったんだが、惑星には滑走路があるんだ。
そことを往復するためだけのシャトル機だから、潜水する必要はないんだ。
滑走路は給水用タンカー船のもので、それにはコネクトしているから問題ない」
「問題ないって、たとえ滑走路があるとしても、何か変じゃないか?」
「変って、なにが?」
「変だよ!
実際、降りる必要の無いあの惑星に、突然、新品のシャトル機だぜ?
あそこへ行って、隠されたお宝でも捜せって話じゃあるまいし!」
アレックスは、自分の中に渦巻いているものがあるるのだけれど、それを上手く説明できない。
そして、だんだん収拾が付かなくなっていく自分に、じれったさを感じる。
それに対し、キースの淡々とした口調は変わらない。
「アレックス、このチームは保険会社の依頼で来たのであって、依頼書に従って仕事をしているだけだ。
まあ、誰かが惑星に行くからシャトル機が準備されたのだとは思うよ。
古い滑走路の点検ってこともありえるしね。
今のところ、僕たちにその要請はないし、誰が降りるのかまでは知らないね。
実際、君の質問の答えは、ここにある依頼書には書かれてないんだ」
そのキースの口調が、さらにアレックスをイライラさせるのだが、何を言っても仕方が無いとも思わせる。
「分かったよ、これ以上聞いても無駄ってことだな。
たとえ、あんたが何か知っているとしてもだ」
「知っていることは答えているつもりだが」
「ま、そう言う事にしておこう。
おい、切るぞ。
点検は終わりだ」
「了解。」
その二人の会話を聞いていたランは、ふと、風のようなものを感じ、顔を上げる。
そこには何もない。
ランは、今までとは違う何かを感じ始めていた。
そして、
「何かが動き出しているのかもしれないわね」
と、独り言のように言った。