6話 備え
中央コントロールセンターでは、キースとランが仕事をしていた。
「OK、ここまでは問題なし、と。
ところでキース、アレックスはあなたに絡むわね。
確か同期だっけ?
あなたも、いつもより熱くなっているわよ」
キースは顔を上げると、苦笑いした。
「そんなつもりは無いんだけれど・・・」
「アレックスが苦手なら、他にもパイロットはいたのに。
どうせ、アレックスにとって今回は退屈な仕事でしかないわよ」
キースは手を止め、椅子に深々と座ると言った。
「アレックスは苦手じゃないよ、かえって新鮮だ。
ちょっとふざけた所はあるけれど、仕事はちゃんとしてくれるし機転も利く。
操縦の腕はかなりのものだし、操縦ライセンスも古い機種まで豊富に持っている。
おまけに、A-3級整備士の資格まで取ってる。
だからアレックスは、もし何かあった時、頼りになるんだ」
「何かが起こると思うの?」
「さあ、可能性でしかないけどね。
それに備えるのが僕の仕事だし」
「そう? 私には、あなたが何かを知ってるように思えるのだけれど」
「君こそ十年前の点検の時、助手としてここに来ているから何か知ってるんじゃないか?」
ランも背を伸ばし向きを変えると、ドリンクの入ったカップに手をかけながら言った。
「今の所は前と同じね。
あの時は、スケジュール通りの整備点検で終わったわ。
報告書にもあったでしょう?
まあ私は、ニキみたいに入社して間もない頃で、見るもの聞くものが珍しかったわね。
ヴェラムの大きさにも圧倒されたし。
あなたは初めてでしょ、どう? 感想は」
「そうだな・・・」
キースはランをからかうように答える。
「見るもの聞くものが珍しくて、この大きさにも圧倒されたね」
「もうっ、ずるいんだから」
二人は笑う。
ランはドリンクを飲むと、思い出したように言った。
「そう言えば、ジェイクは三回もここに来ているのよね。
彼の方が何か知ってるんじゃない?
あっ、そうだ、前のチームは、おじさんだらけだったわよ。
何よ、今回のメンバーは? ジェイクを除けば、私が最年長じゃないの。
しかも、若い独身者ばかり。
既婚者もジェイクと私だけだわ。
コーディネーターのあなたが若いからかしら?
まさか、あなた、その理由で選んでないわよね」
キースは笑うが、それには答えない。
ランは続ける。
「とにかく、十年前、何かが起こりそうで、何も起こらなかった。
そうやって、このヴェラムは、百年以上も沈黙し続けているのよ」
「・・・だな。
では今回も、順調に仕事を終えたいものだねぇ」
キースは、遠くを見るような目をしながら言った。