5話 宇宙ステーション
宇宙ステーション・ヴェラム(vellum)の外壁は、巨大な水のタンクになっていた。
その筒状の外壁は、回転しながら、恒星からの熱を利用して水を一定の温度に保ち、同時に浄化もしている。
係留施設は、小さな宇宙船も入れると、一度に四十隻も収容できるのでかなり大きい宇宙ステーションだ。
今でもたまにやって来る船は、自動システムで給水する。
ヴェラム全体は自動警備システムのシールドで守られていていた。
係留したい船は、許可を得た後、送られてきたコードを入力し、シールドを通過する。
さらに、惑星の周りを飛んでいる十八機の人口衛生が、ヴェラムに情報を送っている。
もし非常事態が起これば、筒のどの部分も切断できる。
点検や修理、部品調達まで全てロボットが行う無人の施設だ。
ロボットのタイプは人型から小さなものまで種類は豊富で、無人とはいえロボットの往来があり、あちこちで何かが動いている。
そして、そのシステム全体は、十年ごとの定期検査でチェックされていた。
ニキとジェイクは、係留施設の先にあるピアの一つに渡った。
そこから、宇宙ステーションの外壁の内側とその空間が一望できる。
点々と外壁に付いている赤茶けたライトがその大きさを強調し、巨大な丸いトンネルの中にいるようだ。
足元の通路はかなり古く磨り減っていて鈍く光っている。
古い油のような染みや臭いはない。
「古い宇宙ステーションなのに、部品も、使われているシステムも新しいものですね」
ニキが言った。
「絶えず交換されているからね。
古いけれど、内部は新しい・・・」
ジェイクはそう答えながら、何かを考えているらしく言葉を止める。
「もっと古い感じを想像していたんですよ」
ニキが言った。
「アレックスがアンティーック物かもって言ってたけれど、これじゃあアンティーックとは言えませんね。
それでも、これだけの規模の施設を維持するのに、莫大な費用が掛かるんでしょうね。
今は、給水のお客様も少ないでしょうに、採算が取れるのでしょか?」
ジェイクはニキを見た。
「若いのに、面白いことを言うね。
普通、規模の大きさやシステムに感心しても、費用の心配はしないけれどね」
「変ですか?
そうかもしれませんね・・・
私がこんな風に思ってしまうのは、父を早くに亡くし、母が苦労して私を育ててくれたせいかもしれません」
「ああ、そうだったね。
私にも、君と同じぐらいの娘がいるけれど、甘やかしてしまったかもしれないねぇ」
ジェイクは優しく笑う。
「いえ、そんなつもりは・・・生意気なことを言ってしまいました」
ニキは、ジェイクに褒められたような気がして、恥ずかしいながらも嬉しかった。
そして、初めに抱いた疑問は忘れていた。