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ウォータープラネット  作者: Naoko
48/56

48話 爆破

 爆発音と共に閃光が上がり、煙が辺りを覆う。

ジェイクは、それを、離れた所でシャトル機の中から見ていた。

煙は風によって散らされ、薄くなり、次第に視界がはっきりしてくる。

ぽっかりと開いた大きな穴が、滑走路の表面に現れる。

滑走路に激突し、それから爆発したシャトル機は、もうそこには無かった。

ジェイクはそれを見るや否や、アレックスを呼ぶ。


 「アレックス! シャトル機は粉々に砕けて穴の中に落ちていった!

スキャンしたアナラシスはプログレス中だ!」

「OK, 今、シールドがダウンしているから、こっちでもスキャンしている。

結果が出るまで、もう少し時間が掛かりそうだ。

キースたちとの連絡は?」

「まだだ。 通信機能が安定していない。

突然だったからね。

キースにも、一言だけしか警告できなかったし」


 「キースが、あんな所まで来てるなんて思ってなかったんだ。

あいつ、何を考えてたんだ? カイとランを後ろに残して。

計算間違いしちゃったじゃないか」

「そうだね・・・」

「計算をやり直す時間なんて無いし、あれ以上、先に進まれて、森から出てしまったら元も子もない。」

「事前に、コンピューターシュミレーションで確認できたら良かったんだけどね」

「そんなラクシュリーは、オレたちにはない」


「そうなんだが・・・心配だよ。

爆破解体エンジニアなんていないし、自分たちで計算するしかないからね。

しかも、あの滑走路の素材も、シールドの強度も、我々の知らないものだ。

少ない情報だけで、こんなことをしていいもんかね・・・

普通は、しないんじゃないか?」

「ジェイク! 気が抜けるようなことを言わないでくれよ!

百パーセント自信を持ってやってくれ!

疑ったりしたら怪我をする」

ジェイクはそれを聞くとため息をつく。


「君のその自信は、どこから来るのかね~。

無謀だと思うけど、君にあやかりたいもんだよ」

「とにかく、森には、出来るだけ爆風が行かないように計算はしたつもりだけどね。

問題があったら、その時は、その時で何とかするさ」


 「しかし、驚いたな、あのシャトルに接着剤のように固まる機能が付いていたなんて」

「ああ、あまり知られてないけど、調査船なんかに付いてたりするんだ。

故障したり破損や破壊された時、何かが漏れたり部品が散らばって汚染されないためのものだよ。

網のような構造になっていて、エネルギーだけは外に抜ける仕組みなんだ。

今は、乗員を保護する多目的なモノも開発中らしい。

良かったよ、ここのシャトルにも付いていて」


「惑星の水を汚染しないために取り付けられたのかな」

「だろうね~。

友人に、破壊したものを固める実験を見せてもらったことがあるんだ。

破壊の仕方で、色々な形に固まるんで面白かったよ。

だから、計算通りにいけば、瓦礫の山を作って、それを覆うように固められるはずだ」


 「それにしても、キースたちに爆風が及ばないように爆破して穴を開けるってだけでも大変なのに、

その穴の真下に、彼らが登れそうな瓦礫の山を作れるもんかね。

難し過ぎるんじゃないか?

せめて、十分に計算する時間があればね」

「ジェイク、言っただろ? そう考えたりして迷うと、失敗するよ?

とにかく、今は、これ以外に方法はないんだから、やるしかないんだ。

アプローズも時間稼ぎをしてくれるし。

そうだ、アプローズは無事に管制センターのシステムに入ったのかな?」

「ああ、それは問題ない。

爆発の前に確認した。

とにかく、シールドが穴をふさいでしまう前に、全員を助け出さなければならないからね。

瓦礫の山が上手く固まってくれれば、一安心だ」

「そうだね~・・・」

ジェイクは、突然、アレックスの声に憂いを感じた。


 「・・・まだ何かあるのか?」

「あ、今、入った情報だけど、ちょっと問題かも」

「え~っ? もう勘弁してほしいね。 いったい何なんだ?」


 「この爆発で影響されたのか、衛生のエネルギー・レベルが上がっている。

もしかしたら、思ったより早く温度が下がるかもしれない。

オービット・サテライト・システムは実験用だから、温度調整にコントロールが効かないかもしれない。

滑走路内の素材の構造を考えると、ちょっとやばいかもしれないんだ。

はっきりは分からないけどね。

温度が急激に下がれば、瓦礫が崩れ易くなる恐れがある」

「そうか、瓦礫の山は、それを覆うように固められているからね。

多少の崩れには持ちこたえられるが、内部の崩れ方によっては、全体も崩れる。

崩れる前に救出しなければならないな」


 「まあ、今更、心配しても仕方ないさ。

こっちは出来るだけのことをしたんだし、後はキースに頼るしかないな。

彼らの装備も十分じゃないけど、着ている防護スーツは高性能のものだ。

かなりの温度変化にも耐えられるし、ベルトにケーブルも入っているから、お互いを繋いで登れる」

「そうだね、防護スーツの温度調節も、設定しなおすように言っておこう。

ところで、彼らは、あんな急斜面を登れるのかね?

キースは、登山の訓練を受けているけれど・・・」


 「カイも大丈夫だ。

あいつ、とんでもない食わせ物だったよ。

フォン・ハイゼなんて、ごまんといるから、単なるハイゼ家の子孫の一人かと思ってたんだ。

ところが、その子孫でも、カイは、ディフォーレスト子爵の息子だ。

しかも、叔父は探検家のサー・ナイジェルときている。

サー・ナイジェルの二人の息子たちも、よく知られている探検家なんだ。

エンターティメント的なアウトドアスポーツ映画なんか作ってるよ。

その映画の一つにカイが出ているんだ。

カイに会った時から、どこかで見たことがあるって思ってたんだけど、まさかね~。

かなりイメージが違ってたんで、気付かなかったんだな。

カイはインテリ系を装っているし、そんなのに関わるタイプじゃないって先入観に騙されたんだ。

そこらへんが計算済みってのもやな感じだけど、オレとしたことが、と思ったよ。

まあ、本人も映画なんかに関わるつもりは無かったのかもしれないけどね。

医者だから連れて行かされたんだろうね~、年下だし。

あの映画で見る限り、カイの登山技術もかなりのものだから、問題ないと思うよ。

まあ、それでこの計画を思いついたようなもんだしね」


とアレックスが言うのを、ジェイクは呆れて聞いている。

呆れているのは、カイに対してではなく、立て続けに話すアレックスに対してだ。

よほど癪に障ったらしい。


 「ところでホイストケーブルは?」

とアレックスは言った。

「さすがに、瓦礫の山を滑走路の外までは高くできないからね」


 ジェイクは、やっと話題が変わったとほっとして答える。

「アナラシスが終了したら、準備に取り掛かる」

「ジェイクがいてくれて良かったよ。

そんな物まで作ってくれるんだから」


 その時、シャトル機のスクリーンにアナラシス終了のサインが出た。

それを見たジェイクは驚く。

爆発の影響は、キースのいた所まで及んでいたのだ。

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