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ウォータープラネット  作者: Naoko
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47話 ゆらぎ

 ホバーバイクは、森の中を縫うように走っていく。

時折、作業をしているロボットたちがいる。

彼らも忙しそうで、森を駆け抜けるこの乗り物には目も留めない。

ホバーバイクは、風のように、彼らの横を通り抜けていく。


 ニキは、ホバーバイクが傾く度に、自分たちは倒れてしまうのではないかと思った。

怖くてしかたがない。

自分の心臓の鼓動が聞こえそうだ。

とはいえ、それは怖さだけなのではない。

必死にキースにしがみついている自分の鼓動でもある。

ニキは、自分の気持ちが高まっていくのに戸惑いを覚えていた。

どうしがみついていいのか分からない。

キースを掴む手は、強く握ったり、弱まったりして定まらない。

自分の中で育っていくキースへの気持ちが、ニキを躊躇させている。

この気持ちから逃れたいと思う。

目をつぶる。

そして、フィリアのことを思った。


 フィリアは、もう眠りに付いたのだろうか。

あんな所で、一人で、寂しく眠っているのだ。

せっかく起きたのに、可愛そうなことをしてしまった。

早く迎えに行こう。

そう、今、自分がいるこの森は、フィリアへ通じているのだ。

おとぎ話の中で、この森は、時には優しく、時には冷たかった。

それでも必ず、フィリアの元へたどり着いていた。

彼女はいつも優しく微笑んで迎えていた。

それは、自分でもあった。

自分は、誰かが迎えに来てくれたのが嬉しかったのだ。

この誰もいない森の中で、一人で、ずっと待っていた。


誰を待っていたのだろう?


ふと、ニキは思う。

それは父ではなかった。

もう死んでしまっている。

待っていたのは、生きている、暖かい友人たちであり、家族だった。

そう母が話してくれた。

家族。

そうだ、このシステムは、フィリアの家族を探すためのものなのだ。

だとしたら・・・

自分たちは、彼女の家族になれるのだろうか・・・

ああ、なれたらいいな、と思う。


 ニキは、少し、可笑しいなとも思う。

それはヴェラムの整備点検で始まり、そして今は、ウォータープラネットを凍らせようとしている。

これだけのことが起こっているのに、問題の底にあるのは、単純なものでしかなかった。

フィリアという女の子を救う、それだけのことなのだ。

フィリアは、ただ幸せになりたいだけなのに。

彼女の両親は、そう願っていただけなのに・・・


 ニキは、そう思いながら、次第に、気が遠くなっていく。

この数日間に、たくさんの事があった。

そして、その緊張が緩んでいく。

怖いのに、それなのに、眠ってしまいたくなる。


 キースは、ニキの様子が可笑しいのに気がついていた。

この、世間に出たばかりの娘は、雲の上を歩いているようで頼りない。

おとなしくしていたかと思えば、突然、変なことを言ったり、行ったりする。

目が離せない。

誰かが守ってやらないといけない。

それに今も、しっかりと、自分にしがみついてくれていない。

ニキの握る手が、少しずつ緩くなっているのを感じる。

それは、ニキが、自分の手からすり抜けていくようで心もとない。

掴もうとしているのに、消えてしまいそうだ。


 突然、ジェイクからの声が入った。

「キース! 今、滑走路の一部を爆破する!

説明している暇は無い。

衝撃があるかもしれない。

気をつけてくれ!」


 キースは、とっさに片手でニキの手を握った。

「ニキ! しっかり掴まれ!」

キースの声に、ニキは、はっとする。

次の瞬間、爆風が二人を襲った。

二人の体が宙を舞う。

それはスローモーションのようで、ニキは、ゆっくりと、キースの手から離れていった。



 カイとランは、大きな音を聞き、その後に続く爆風を受けた。

ジープは、その衝撃で少しバランスを崩すが、すぐに元に戻る。

「あの音はなに!?」

ランが言った。

その質問にカイは答えず、そのまま運転を続ける。

「何があったの!?」

進めば進むほど、木が倒れ、枝が散らばっている。

「ねえ、おかしいわよ!?」

「何かが爆発した!」

カイが、いらつきながら答えた。



 投げ出されたキースは、すぐに起き上がり、ニキを捜す。

ニキは、倒れたホバーバイクの近くに倒れていた。


「ニキ!」

キースは叫びながらニキのもとへ行く。

ニキは、笑みを浮かべながらキースを見た。

キースはニキのヘルメットを外す。

ヘルメットに亀裂が入っている。


 そこへ、ランとカイの乗ったジープがやってきた。

「キース! ニキ!? 大丈夫!?」

ランが叫ぶ。

カイは急いでやってくると、ニキを医療スキャナーでチェックする。

「軽度の脳震盪を起こしています。

早くヴェラムへ戻って休ませた方がいいでしょう」

「立てるかな?」

キースが心配そうに言う。

「立てるし歩けると思いますが、バランスが悪いかもしれません。

支えて歩いてください」


 カイはマフィーをトランクから出しながら辺りを見る。

「ここからは歩いた方がいいでしょう。

森の出口も、すぐそこです」

四人は歩き始めた。

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