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ウォータープラネット  作者: Naoko
45/56

45話 シールド

 ジェイクは、上昇していくエレベーターの中で、ヴェラムにいるアレックスを呼んだ。

「アレックス! 出口が閉じようとしている! 滑走路が凍れば出られなくなる!」

「もう凍ってるよ! だけど、まだ大丈夫だ! 出口は開いている!」

アレックスが、そう答える共にドアが開いた。


 冷気が雲のように階段を下りてくる。

滑走路は、その階段の上にある。

上を見ると、青かった空は灰色に変わっていた。


 ジェイクがエレベーターから出ると、床が上昇し始める。

出口がふさがれようとしているのだ。

ジェイクは少しよろけたが、体を立て直す。

その瞬間、息を飲む。

滑走路の上、そこは一面、銀色の世界だった。


 「ジェイク! 大丈夫か!?」

アレックスの声に、はっとしたジェイクは、シャトル機へ向かいながら答える。

「エレベーターの出口が閉じてしまった! キースたちは、まだ中にいるんだ!」

そしてシャトル機の中に入り、凍った拳でスイッチをたたいてドアを閉める。

暖かい空気が通機構から噴射する。

ジェイクは操縦席に座り、エンジンを作動した。

その熱で、シャトルの周りの氷は溶ける。

解けた水は風浪を作って広がるが、すぐにまた凍っていく。

「だめだ! エレベーターのドアは開かない!」


 アレックスが言った。

「凍っているのは、まだ滑走路の上だけだ。

海水は、真水のように水面からは凍らないんだ。

とにかく、滑走路が沈まないようにしないといけない。

それに、四人がどこにいるのかも知りたい」

「それは大丈夫だ。

シャトル機と管制センターは繋いだままにしてあるから、ここからでもその位置を確認できるんだ。

それから、もう一つ問題がある」


「分かってる。 シールドだろ?

滑走路を覆い始めた。

シールドは、特殊な青い色をしていて、海の色と同化してクローキングしてしまうんだ。

センサーにもかからなくなる。

それに滑走路に付着したものごと覆ってしまうから、シャトル機も覆ってしまう。

だから、二機とも空中待機していてくれないか?」

「二機とも?」


「ああ、二機目が必要なんだ」

「何か、考えでもあるのか?」

「強行手段だけどね。

今、計算中だから、それが終わったらすぐに知らせる。

とにかく、時間がない。

シールドが覆ってしまったら、滑走路は潜水するかもしれない」

「分かった。 空中待機して待っている」



 「森の天井を爆破して穴を開けるつもり?」

アプローズが、アレックスの肩越しからスクリーンを見て言った。

邪魔されたくないアレックスは、それを無視する。

「もう、ヴェラムも私も邪魔しないわよ」

アプローズは笑いながら言った。


 「一機を爆破して、もう一機のシャトル機を中に入れて、あの人たちを回収するつもりね。

でもそれって危険じゃない?」

「それは分かってる。

シャトル機には、穴を開ける機能はないから、爆発させるしかないんだ」

「それだけじゃないわよ。

あの人たちを回収するのに時間が掛かり過ぎれば、シャトル機が外へ出られなくなる可能性もあるわ。

シャトル機は、ヴェラムと滑走路を往復するためだけのものだし、操縦士もあなたじゃないしね」


 アレックスは手を止めると、アプローズを見て言った。

「協力するつもりなのか?」

アプローズは、思惑が外れたとでもいう風にため息をつくと言った。

「フィリアが、あの人たちを外に出したいって」


 「中と連絡がとれたのか!?」

「ほんの一瞬だけどね」

「君には一瞬で十分なんだろ?」

アプローズは笑みを浮かべながら答える。

「とにかく今は、滑走路を爆破して穴を開ける方法しかないわね」

そして、立つと言った。


 「場所が問題ね。

森の天井を爆破したら連鎖反応が起こって、壊れた天井が、あの人たちの上にも落ちる恐れがあるわ。

あの人たちは大怪我をするか、死んでしまうんじゃない?

だから、柱のある方を破壊した方がいいわね」

「それはオレも考えたよ。

だけど、それじゃあ、シャトル機が入れるほどの穴は開けれないんだ。

それに、瓦礫の山が邪魔になって中にも入れない、時間も掛かるしね」


「私があそこへ戻って、シールドのスピードを遅くすることが出来るわよ」

「なんだって?」

「あなたが作った、ゲイシャなんとか?

そのプログラムを管制センターに送れば、私はそれに乗ってあそこへ戻り、シールドがその穴をふさぐのを遅らせるのよ。

もともと私は、あの古い設計図の中に隠れてヴェラムへ来たんだしね」

アレックスは言った。

「君は、いったい誰なんだ?」


「私? 私は、名前が無いって言ったでしょ?

あなたが付けてくれた名前以外はね。

ああ、アプローズって名前、青い薔薇、青いのは当たってるわ」

「青い色だったら・・・シールド?」


「そう。 私は、滑走路を守るためにあそこで生まれたのよ。

滑走路と同じで、名前は付けられなかったわ。

そのシステムを探られないようにね。

とにかく、シールドの一部の私は、百年前にヴェラムへ送られたの。

その少し前に、あそこへ侵入しようとした人たがいたからよ。

まあ、ゲートキーパーみたいな役割かしら?」


「だから滑走路を見ていたんだ」

「そうね・・・そして、あそこからフィリアを出したかった。 元気な姿でね。

とにかく、私だってそう長くは待てないわよ。

海は底の方から凍るから、滑走路は早く安全な所へ移動しなければならないしね。

底には火山や流れがあるから、全部凍るってわけでもないのよ」


 「残った最後の問題は、どうやってあの四人を瓦礫の中から引き上げるかだ」

「あなたは、もうそれは考えてたんじゃないかしら? そういうの得意なんだし。

あのシャトル機には、破壊された時のための特別な機能があるでしょ?

それを使って、とか?」

アレックスは、どの機能だ?と考える。


そして笑みを浮かべると、冗談交じりで言った。

「愛してるよ、アプローズ。 君は、最高だ」

アプローズも笑った。

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