4話 係留
宇宙ステーション・ヴェラムが近づいてきた。
ヴェラムは筒状の古いタイプで、全体がゆっくりと回転している。
ニキたちを乗せたスペースシップは、その筒の中に入っていく。
筒の芯には宇宙船が係留できるピアが伸びていて、船は中央のコントロールセンター近くまで進むと一本のピアに寄った。
低く鈍い音が響く。
船がドッキングしたのだ。
宇宙ステーションへの入り口で全員は立って打ち合わせをし、キースが指示を出していた。
「では、さっそく各々のスケジュールに従って点検を始めてくれ。
しばらくは入ってくる船もないから、仕事はしやすいはずだ。
異常が無くても、安全確認のため二~三時間おきに連絡が欲しい、休憩時でもいい」
最後にアレックスが口を開く。
「あ~、パイロットのオレとしてはヒマなので、オールドタウンの見学でもさせてもらいます」
「それはかまわないが、シャトル機の点検をしておいてくれないか」
「シャトル機って、うちの船の?」
「いや、ここのだ」
「ヴェラムのシャトル機!?
いや、あるかもしれないけれど、アンティーック物?」
それにランが答える。
「歴史好きのあなただし、古いタイプだったら乗ってみたいわよね。
でも残念でした。
新品よ。
新品も好きでしょ。
システムはコントロールセンターからチェックするから、操縦席で確認をして欲しいの」
「いいけど、無人の宇宙ステーションに新品のシャトルって、何か変だな。
この辺には、ウォータープラネットの他に行くとこなんかないし。
たとえヴェラムに事故が起こったとしても、シャトル機なんか必要じゃない。
皆、自分の船で脱出するか、持参のシャトル機を使えばいいだけだ。
まさかロボットが乗るんじゃないだろうね~」
「少なくとも君じゃないのは確かだね」
キースが答える。
「自動操縦?」
「ま、そういうことだ。
シャトルのチェックは、保険会社の依頼なんだ」
「分かったよ、やっとくさ。
で、そちらのドクターさんもヒマそうだし、後で一緒にオールドタウンでも散策しないか?」
アレックスは、ずっと黙っているカイを誘う。
「いえ、遠慮しときましょう。
僕には水質検査がありますし。
それに、君は、僕なんかといるより一人の方が楽しめると思いますよ?」
カイは、冷ややかながらも穏やかな口調でアレックスをかわした。
ニキは、カリスマ・エンジニアと言われているジェイクの助手になれたことが嬉しくて、
彼らの会話に違和感があるのには気付かなかった。