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ウォータープラネット  作者: Naoko
37/56

37話 樹洞

 ゾーイは、大きな木に向かって歩き出した。

そして木の洞の前に立ち、足元にいるマフィーを見る。

ゾーイの目にマフィーが写る。

マフィーもゾーイを見つめる。

マフィーはキースが離れた後も、そこに座ったままだった。


 そしてゾーイは、木を見上げ、鳥たちを見る。

突然、突風のような衝撃があった。

それに驚いた鳥たちは、慌ててその木から離れていく。

マフィーも驚いて、洞の入り口に隠れる。

その光景に四人は驚き、ゾーイのもとに集まった。


 「ゾーイ、どうしたんだ?」

キースの問いにゾーイは答えない。

振り向いたゾーイは凛として、今までとは様子が違う。


 「あなた方は招待されています」

ゾーイが言った。

発せられた声も違う。

「誰だ?」

キースは呆然とながら言った。

「ゾーイじゃない」


「マフィーに従ってください」

そう言って、ゾーイはマフィーを指差す。

ロボットなのに、その態度から圧力を感じる。

しかも、こちらの質問に答えるつもりはないらしい。


 「ジェイクと連絡が付かない限り、どこへも行かない」

キースの拒絶に、ゾーイはキースを見る。

「ジェイク?」

キースの質問に、初めて、ゾーイの中にいるモノは答えた。

「そうだ」

「ジェイクと連絡を取りたいのですか?」

「そうだ、彼からの情報が無い限り、僕らは動かない」

「ジェイクから情報が欲しいのですね?」

「そうだ! ジェイクだ! 何度、同じことを言わせるんだ!」

そのとたんにゾーイは緊張を解いた。


「ゾーイ! 今のは誰だ!?」

怒鳴るキースにゾーイは驚いたように答える。

「私が何かしましたか?」

ゾーイは何も覚えていないらしい。


 突然、ジェイクから連絡が入った。

「キース、聞こえるか?」

「ジェイク!?」

「やっと通じた! 

そっちは森の中央に着いたようだね。 君たちの位置は、こちらでも確認できる」

キースは、このタイミングでのジェイクからの声に驚く。


 「ジェイク、どうなってるんだ!?」

「えっ? 何かあったのか?」

「あ、いや、とにかく、連絡が付かなかったから」

「ああ、全く連絡できなかったんだ。 そしたら急に・・・

今、通じたんだな。 なんでか分からないけど」

その時、キースは思った。 自分たちは監視されている。


 「ここに、何かの入り口があるらしいんだ」

「そのようだね、少しずつではあるけれど、この施設の様子が分かってきたよ」

キースは、ジェイクとのやり取りをしながら、気持ちが落ち着いてくるのを感じる。


 「入り口は一つではないんだ。

いくつかあって、君たちが見つけたのはその内の一つだ。

ホログラムの木が消えれば、入り口も閉じて、分からなくなってしまう仕組みになっている。

ある意味、それは迷路のようで、進入を防ぐ目的があるのかもしれない。

外からは、それを操作する方法は見つからないから、もしかしたら無いのかもしれない。

中心には、この施設の心臓部があって、それがこの施設すべてをコントロールしている。

ここで得られる情報も、そこでコントロールされている可能性があるね。

こちらから情報を見つける、と言うより、突然、情報が与えられると言った方がいいかもしれない。

とにかく、その中心は、周りをすっぽり厚くかこまれていて、それはまるでコクーンの様なんだ」


 「コクーン?」

「ああ、その中は分からないし、君らがそこへ入れば連絡もまた途絶えると思う。

どうする? キース、下へ降りてみるかい?」

「そうだな・・・」

キースは考える。


 犬が道先案内人というのは変だと思っていた。

それは、ニキが聞かされていた話と一致するのだけれど、なぜ、そんなことをしなければならないんだ?

もしこれが、初めから仕組まれたものだとすれば、ヴェラムへのリスト作りからここに至るまで繋がっているのならば、その目的は何だ?

僕たちは招待されている? 何のために?


 「キース?」

ジェイクは、もう一度尋ねる。

「ああ、ジェイク。 下へ行ってみることにするよ。

皆は、どうする?」

キースは、あとの三人を見た。


彼らは何も言わない。

キースの決定に反論する理由はない。

それは、彼らもキースと同じことを考えていたからで、キースにもそのことが分かっている。


「下へ行くことが、僕らがここへ来た理由らしい」

キースはジェイクに答えた。

「分かった、キース、気をつけて。

それから、」

とジェイクは付け加える。


 「人工衛星について何か知っているか?」

「人工衛星? あの気象観測の?」

「ああ、エネルギーブロックシステムのことだ。」

「それは去年に取り付けられた試験的なもので、設置途中だということしか知らない。

作動システムにも繋がってないから、これからのものなんじゃないのかな。」

「だろうね」

「それがどうかしたのか?」

「アレックスが作動システムが無いのが不安だってね。

いや、君が知ってたんなら大丈夫だろう。

アレックスにも伝えとくよ。

とにかく、君らが下へ行っても、連絡が取れるよう探ることにする」

「分かった」

と言って、通話は切れた。


 キースは、マフィーを見る。

マフィーの目は期待と共にキラキラとひかり、立った白い耳はピンク色に染まっている。

この犬が、自分たちを危険な目に合わせるなんてとても思えない。

それでマフィーを使っているのかもしれないとも思う。

「おまえじゃなけりゃ、下へは行かないんだけどね。 責任を取ってくれよ」

キースは冗談交じりに言った。


 そして、木の洞を見る。

「下へ行ってみるか」

マフィーは、その言葉の意味が分かったのか、嬉しそうにくるくると回って吠えた。

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