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ウォータープラネット  作者: Naoko
29/56

29話 マフィー

 その白い犬は、さほど大きくはなく、毛はふさふさしているが堅そうな直毛で、耳がピンと立っている。

そして、少し離れた所に立って、こちらの様子をじっと見ている。

「ホログラムじゃない、生きている犬だ」

ジェイクが言った。


 キースが前に出ると、犬はびくっとして後すざりするが、逃げようとはしない。

キースは片膝をついて身を低くすると、手を垂らし、リラックスして犬を見ないようにする。

しばらくすると、犬はキースの横側へ回り、少しずつ近付き、キースの手の甲の匂いを嗅いでから、ちょっと舐めた。

キースはその手で、犬の顎の下辺りを優しく撫で始め、反対の手をゆっくりと犬の耳の後ろに当て、撫でる。

犬は、気持ち良さそうに首を伸ばし頭を下げ、警戒を解いていった。


 「マフィー」

キースがそう呼ぶと、犬は嬉しそうにキースを見上げる。

「お座り」

と言うと、マフィーは座った。

「いい子だ」

キースは、そう言って マフィーを抱き上げ、皆の所へ連れていく。


 「十キロぐらいの重さのオス犬だな。 年は二~三歳くらいだと思う。

首輪は付いているし、訓練もされているみたいだ。

足と腹の部分が汚れている。

森から出てきたと思うけど、体はさほど汚れていないから、森に住んでいるとは思えないな」

「じゃあ、どこから来たのかしら?」

ランはそう言って、恐る恐るマフィーを触ろうとする。

マフィーは、警戒して首をすくめた。


 「ラン、君が怖がっちゃだめだよ。 それから、頭には触らない方がいい」

「どうして?」

「君だって、知らない人が、急に自分の目の上に手をやったら驚くだろ?」

ランは少し考えると言った。

「そうね。 いやな気がするわね」

「頭は、慣れてから触るんだ」

とキースは言ってマフィーの頭を撫でた。 マフィーは嬉しそうに目を細める。

ジェイクもやってきて、マフィーの背中をガサガサと撫でる。

「キースが犬を扱えて良かったよ」


 マフィーは下に降ろされると、それぞれの人間に挨拶をしに行った。

特に、ニキの匂いを熱心に嗅ぐ。

「私、猫を飼っているから、その匂いを嗅いでいるのかしら?」

「かわいこちゃんとでも思ってるんじゃないのか?」

とジェイクは笑いながら言った。

「ジェイク、粋なことを言うじゃない。 でも変だわね。 飼い主はどこ?」

ランが言う。

「これは生身の犬よ? 百年以上も生きているなんて考えられないわ」


 そこで、ずっと考えながら黙っていたカイが、独り言のように言った。

「冷凍保存・・・」

「えっ?」

「この犬は、冷凍保存されていたのかもしれません」


 そこで、ジェイクの目は急に明るくなった。

「そうか! それだったら納得がいく。

ヴェラムで見た赤いランプは、この犬が、冷凍睡眠から目覚るのと関係があったのかもしれない。

あの後で、キースが感じた犬のホログラムも、この犬だったんじゃないのか?」

そこでキースも、その感触を思い出す。

「そうだ! こんな感じだった」

「と言うことは、ニキが言うように、この犬は道先案内人と言う訳か?」


 ジェイクは少し考えると、キースの方を向いて言う。

「君たちは行ってみるかい?」

キースもジェイクに答える。

「どうやら、そうなりそうだ」

そして、マフィーを見る。


 「マフィーが現れた以上、このまま、ここを去るわけにはいかなくなってしまったからね。

もし、マフィーが冷凍保存されていたのだとしたら、その理由を知りたい。

少なくとも、今のままでは、マフィーをここから連れ出していいのかどうかも分からない。

マフィーの性格からしても、良く可愛がられていたらしいし、こんな犬がここまで来れたってことは、森はさほど危険じゃないってことだしね。

それに、ニキは行きたいと言うし、カイも行きたいんだろう?」

「もちろん」

カイは答えた。

キースは、今度はランに聞く。


 「ラン、君はどうする?」

「行くのは当たり前でしょ? 

キース、あなたが言うように、このチームがニキを中心として組まれたのだとしたら、私にもその役割があるはずよ」

それに続いて、ジェイクは言った。


 「私は、ここに残るよ。

足を傷めているから遠くへは行けない。 君たちの足手まといにもなりたくないしね。

私は、ここで、もっと情報を得られないか試してみるよ」

ジェイクの言葉に、キースは嬉しそうに答える。


 「それは、助かる。

僕らは分からないことだらけだから、少しでも情報が欲しい」

「ゾーイは君たちが連れて行くといい。 

まだ、この先はブロックされていて通信が出来ないから、ゾーイの通信能力を増加させよう。

それを媒体にすれば、連絡し易くなるかもしれない」

そうジェイクは言いながら、ゾーイを修正する。


 マフィーは、少し離れた所で、もう待てないとでも言うように、吠えたりジャンプしながら皆を誘う。

それを見ながらキースは言った。

「では、これから出発する」

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