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ウォータープラネット  作者: Naoko
22/56

22話 柱

 キースは、滑走路上に開いた入り口の階下へ目をやった。

ドアが見える。

ドアの横にある小さなパネルは、平面で何のスイッチもない。

しかもロックされているらしく、ドアは開かない。

ジェイクは応急処置が終わると、ランと共にロックを解除する方法を探り始めた。


 「あの・・・」

後ろで、ゾーイが話しかける。

集中しているジェイクは、そのまま作業を続け、代わりに、ランが手を休めずに聞いた。

「なに? このドアを開けられるって言うの?」

「いえ、私には出来ません。」

「まだ情報処理が安定してないのね?」

「それは終わりました」

「じゃあ何よ」

「このドアのロックは、十四時間前にヴォイスコマンドに変更されました」

ランは、振り返る。

「どう言うこと?」

「ドアロックシステムは、声を要求しています。

ニキの声にだけ、このロックは解除できるようにプログラムされています」

「何ですって!?」


 キースは後ろを見ると、この事態に驚いて影のように潜んでいるニキに言った。

「ドアの前に立ってくれないか」 

ニキは、自分にロックを解除出来るとは思えず、ドアの前に立つが黙ったままだ。

それでも皆の視線を感じるので、何とかしなければと思う。

「えっと・・・何をどうすればいいのですか?」

その答えは、皆も知りたいところだ。

と、その瞬間、ドアは開いた。

「・・・だそうだ」

キースは思わず、答えにならない答えを言う。


 開いたドアの向こうは、丸い筒のような小部屋になっていた。

キースがドアの中をスキャナーで調べる。 

「エレベーターだな」

「下へ降りるのか?」

ジェイクが聞いた。

「そうしたい。

今の所、危険はなさそうだし、なぜロック解除がニキの声に変えられたのかも知りたい」

キースはそう答えると、メンバーの全員を見渡す。


 「先ず、僕とラン、そしてゾーイだけで下に降りることにしよう。 ラン、それでいいか?」

「いいわよ」

「下へ降りて問題がなかったら、エレベーターを戻すから、三人とも降りてきてくれ」

キースは、ランとゾーイと共に中へ入る。

ドアが閉まると同時に、照明はディムライトへ代わり、階下へ下り始めた。


 下へ降りるエレベーターは丸い柱の中にあり、大きな窓が付いている。

外は薄暗くてよく見えない。

今まで明るい外にいた二人の目が慣れるまで、少し時間が掛かりそうだ。

それに、たくさんの柱のようなものが視界を遮っているようでもある。

かなり下の方に、小さな灯りらしきものが点々と見え始める。


 ランは、窓の外を見ているキースの背中に向かって言った。

「あなた、ニキをここに連れて来るのにかなり苦労したでしょう?」

キースは振り返る。

「だってあなたは、ニキのヴォイスコマンドのことを、あまり驚いていないみたいだもの。

ニキが来なければ、滑走路のドアは開かなかったかもしれないわね。

こんなことになるなんて言ったら、ニキは来ないかもしれないって思ってたの?」


 キースは、窓を背にして寄りかかると言った。

「驚いてない訳じゃないよ。

実際、僕も知らなかったんだし。

ああ、でもそうだね、ニキは少し用心深いところがあるね。

だけど実際はどうか分からないよ。

初めから言えば、すんなりと来たかもしれない。

確かに、ここに来るなんて決まっていなかったから、はっきり言えなかったのはある。

会社側も可能性があるとだけしか言わなかったし。

まあ、それだけじゃないんだけどね。

とにかく、メンバーの数をぎりぎりにまで少なくして、ニキをここへ来させるようにはしたのは事実だ。

僕には彼女に強制する権限はないから、もし、いやだと言われれば、それっきりなんだ」


 「なぜニキなのか、ニキは理由を知る権利があるわよ」

キースはランを正面に見る。

「君は、その理由を知っているのか?」

その時、エレベーターは減速し、止まるとドアが開いた。


 急に、違う空気が入ってくる。 ひんやりしているが重くは無い。

大きな柱が重なるように見える。

上からのライトは無く、柱の根元に、所々に小さなランプがついているだけだ。

キースは、スキャナーで確かめながらエレベーターを出た。


 辺りは、太い柱が林のように立っていて、かなり広い。

滑走路にあたる天井は高く、青く透けている。

水面では風が吹き始めたのか、上からの光が、ゆらゆらと揺れながら降りてくる。

その光は、白い柱の林に模様を作り、下にいくほど周りの薄暗さにブレンドしていく。

青く、幻想的な空間だ。

「海の底にでもいるようね」

ランが言った。


 キースはスキャナーを閉じる。

「ヴェラムとはいくらか違っているようだ。

かすかに機械の低い音がしているだけで、ロボットは近くにはいないし、動いているものもない。

安全確認はできたから、エレベーターを上に戻そう」

ドアが閉まると、エレベーターは上にいる三人を迎えに行った。


 「とにかく、この位置を把握しよう。 ゾーイ、何かわかるか?」

ゾーイは、エレベーターの横の案内スクリーンの前に立つ。

「アクセスしてみます」

しばらくしてスクリーンが明るくなった。


 「長い間アクセスしていなかったにしては使えるみたいね。 この付近しか案内しないけれど。」

ランが感心するように言うと、キースも続ける。

「管制センターが近くにあるな・・・そこへ行こう」

その時、エレベーターのドアが開き、全員がそろった。

キースは、ちらっとニキを見る。

ニキは何も聞かず、何も言わない。 ただ黙っている。


 管制センターのドアも、ニキの声でロックは解除された。

中は広く、百六十年以上も昔のものでも、管制センターらしく整然としている。

計器も古い型なのに、ほこりはなく、ちり一つ落ちていない。

まるで時を止め、誰かが来るのを待っていたかのようだ。

ジェイクとランは、コントロールテーブルの前に座った。

「使えそうよ」

ランが言うと、ニキも手伝うため近くに座る。

キースとカイは、管制センターの内部を調べようと辺りを見て回ることにした。


 

 突然、ゾーイがはしゃぐように言う。

「私の持っているデータと一致しました! 施設全体図を映像で出せます!」

全員は、部屋の中央の空間に映し出された3D映像を見る。

平らな滑走路の下は、巨大な工場を逆さまにしたような形をしていた。

そして、端の方に緑色に点滅している小さな点がある。


 「驚いたわね。 アレックスが見つけた設計図は、やっぱりこの施設のものだったのね。

私たちは、この緑の所にいるようね。 中央はどうなっているのかしら?」

ランが調整しようとするが、それ以上はぼやけてはっきりしない。

「大雑把にしか分からないわ。

古い設計図だし、今とは違っているかもしれないから、もっと新しい情報が欲しいわね」

ジェイクも観察しながら言う。

「それにしても柱が多いな。 柱がこの階の全体を囲んでいるような感じだ。

なぜ天井がこんなに高いのだろう。 この下は工場のようだけれど、はっきりしないし」


 キースが皆を見て言う。

「先ず、初めの問題から解決しよう。

ゾーイ、この施設の故障を捜してくれ」

ゾーイは答える。

「質問の意味は不明です」

キースは言い換える。

「では、ヴェラムの信号RESS-1011を特定できるか?」

「質問の意味は不明です」

ゾーイは繰り返した。

「壊れたんじゃないの?」

ランの問いに、ゾーイは振り向くと答える。

「修理の必要はありません」

「だとさ。」

ジェイクは、やれやれとでも言う様にランを見て言った。

ゾーイは続ける。


「この施設は、故障を直す依頼をしていません。

RESS-1011も存在しません。

質問を解読できないので、別の質問をお願いします」

全員はお互いを見る。


「じゃあ、何で私たちはここにいるの?」

ランが言った。

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